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LGBT就活――20人に1人の就活生の現状 - 藥師実芳

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「カミングアウトをしない」就活体験記

《小川奈津己》

来春から中高の教諭としてはたらく。就職時にはトランスジェンダーであるとカミングアウトしないことを選択。戸籍の性である女性として勤務予定。

■教員になりたい、を叶えるための就活

小さい頃から教員になりたかったので、一般企業への就職活動はしていません。また、カミングアウトして不合格だった場合、それがセクシュアリティのせいなのか実力のせいなのかわからないので、まずは実力をためすためにカミングアウトしないで就活を開始しました。学生時代、LGBTの活動をしていたことを、ES・自己PR・面接でふれたけれども、自分のセクシュアリティにはふれないようにしていました。面接はレディースのパンツスーツでメイクはしないという方法をとりましたが、それに関しては何も言われませんでした。

しかし、教員は対人間の仕事なので、セクシュアリティというアイデンティティのひとつを秘密にしたまま子供たちと人間関係を構築することには困難があるだろうと予想しています。実際、教育実習の際も受け入れ校がないことを懸念し女性として実習に参加しましたが、その時も自身を隠しているような後ろめたさがありました。しかしながら、教職はまだまだ保守的な職種でもあるので、カミングアウトしての就職も安全とは言えない、とも感じます。

それでも教職をめざした理由はふたつ。ひとつは、小中高といい先生にめぐりあえたおかげで教職への憧れがあったから。もうひとつは、ロールモデルになりたかったから。ロールモデルというのは、LGBTの生徒にとっては将来の選択肢のひとつとして、LGBTでない生徒にとっては身近なLGBTとして、教職をめざすLGBTにとっては前例として。だからこそ、いずれはカミングアウトしたい、と考えています。そのためにもまずは仕事で成果・実績をあげること。信頼関係があれば、カミングアウトしても大丈夫だと思うので。また、自身がLGBTとしてでなくても、LGBTのことを教えることはできるため、日常でも授業でも教員研修でも、LGBTのことは伝えていきたいです。

■教育委員会・学校・教職事務室へのお願い

教職につきたいLGBTにとっては、介護等体験、教育実習、教員採用試験……と、就活以前から対外的な問題がたくさんあります。実際、ある地域ではトランスジェンダーであることを理由に教育実習の受け入れ先がなく、実習に行けなかった例があると聞きます。

最初の窓口である教職事務室が否定的でもいけないし、また大学が協力的であったとしても先方が受け入れてくれなければ実現しない。みんながそれぞれLGBTについて理解して、受け入れの実績をつくり、LGBTがあたりまえに実習も就活もできるようにしてほしいと願います。

《筆者からの補足》

LGBTであることをカミングアウトしないで就活をするLGBTも少なくありません。はたらきはじめてからカミングアウトをする人もいれば、ずっとしないままはたらくことを選ぶ人もいます。

カミングアウトをしないではたらく人の中には、「カミングアウトをしないはたらき方を選んだっていうより、自分にとって、カミングアウトは必要なかったように思います。学生時代も多くの人にはセクシュアリティは伝えていなかったですし。だからこそ、絶対カミングアウトしないと決めているわけではなく、必要が出てくればしようとも思っています。」との意見も。

カミングアウトできる選択肢もありながら、カミングアウトしてもしなくても、就活がしやすく、またはたらきやすい職場であることが理想的です。

2013年の虹色ダイバーシティーの調査によると、職場でカミングアウトをしているLGBTは38.5%。友人へカミングアウトしている人は88.3%、家族へカミングアウトしている人は49.5%で、職場でのカミングアウトの難しさが伺えます。http://www.nijiirodiversity.jp/公開資料/

カミングアウトしはたらく社員×経営者対談

最後に、自身のセクシュアリティをオープンにしてはたらく平山さんとその企業の経営者小寺さんにインタビューをさせていただきました。

平山さん

ゲイ。5年前に通信会社に新卒として入社し、3年後に小寺さんが経営する会社に転職。一社目ではカミングアウトせずにはたらき、現在二社目となる企業ではセクシュアリティをオープンにしてはたらく。

小寺さん

学生を中心とした、人材育成会社を経営。

■二人の出会いからカミングアウト

平山さん 大学2年の時に小寺さんと出会いました。

小寺さん 平山に対する初対面の印象は、あんまり良くないんですよね(笑)なんだか物の見方が斜めで、人をどこか信じきっていない印象でした。そんな印象からスタートしましたが、彼が所属しているサークルで4回コーチングの講師を務めたり、その後に1対1のコーチングで話を聴いている内にだんだんと関係性が変わっていきました。「成長したい」「もっと自分を変えたい」そんな想いを話してくれる彼と一緒に「うちの会社でインターンしない?」という話になったのは、出逢ってから半年後くらいのことでした。

平山さん 大学3年時にがっつりインターンをする中で、だんだんと自分はどう生きたいか考えるようになりました。その中で自分のセクシュアリティに向き合うきっかけが多く生じて、自身が担当していた就活セミナーの最後の回で受講者や運営メンバーにカミングアウトしたんです。大人数に対してセクシュアリティをカミングアウトするのは人生で初めてでした。

小寺さん 平山はライフデザインスクールのメンバーにカミングアウトしたことで、本当にすごく変わっていきましたね。よく僕はその違いを、BC(before coming out)とAC(after coming out)と言っているくらいです(笑)平山はカミングアウトした後にどんどんいろんなことに積極的になって、自分の意見もいきいき伝えるようになりました。

僕はメンバーよりも先にカミングアウトしてもらったのですが、海外に長く住んでいたのもありますし、私の中でLGBTが異質なものだとは思っていなかったから特段驚きませんでしたが、カミングアウト後の彼の活躍、変わりぶりにはすごい驚きました。それは僕だけではなく、周りの人たちも同じだったと思います。

■カミングアウトせず、他社ではたらくことを決意

平山さん インターンした当初はここに就職するなんて想ってなかったけど、小寺さんとのコミュニケーションが多くなる中でその選択肢がでてきました。でも立ち上げたばかりのベンチャー企業に入るのはいばらの道だなと感じて、3年他社で修行しようと思って、大手通信会社に入社しました。

その会社ではカミングアウトしませんでした。勇気がなかったから。今なら言うな、とは思うけど。例えば就活中に他の会社を受けたときも、「LGBT向けのサービスがしたい」とは言えなかったですね。怖くて。セクシュアリティを言わないでいたけど、実はそんなに不便じゃなくて。もちろんおっくうなことも沢山あったけれど。例えば先輩の付き合いで合コンや風俗に付き合ったり。他にも「彼女いるの?」とかはコミュニケーションのひとつとしてよくあったから。「彼氏」を「彼女」に置き換えて話して、あえて遊んでいるキャラを演出してばれないようにしていました。

でも、今の会社の方が、断然はたらきやすい。全てが違うと感じますね。自分を語る上で、ゲイっていう面は存在しているわけで、それが決して全てではないけれど、そこなしには語れない。それを語らなかった前職では本当とは違う自分を像としてつくって生きていたように思います。だからこそ、心が震えるくらいの感動やうちひしがれるほどの悔しさもなかった。仕事もその中に心をいくら込められるかが、その仕事で出せるバリューにもつながると思っています。

■LGBTとはたらく、について企業に伝えたいこと

小寺さん LGBTとはたらくことが特殊だったり、特別である社会から、もっとナチュラルで当たり前な社会になったらいいなぁと思っています。セクシュアリティだったり、障がいというものが特別視されて、それだけに注目してしまうと、その人の人間性や個性そのものまでも偏って理解されてしまう気がします。セクシュアリティや障がいは、きっとその人の個性の一部であって、全てではないはずです。セクシュアリティの一面からだけで判断するのではなく、ホリスティック(全体的)に人や物事を捉えていくことで、きっと、もっともっと多様な人たち同士が互いを分かりあえるのではないかと思います。

これから支持され、繁栄していく企業はきっと、そんな人間性を尊重した経営をしていく会社なのではないかと思いますし、そうなって欲しいなと願っています。

平山さん:多様性のある組織がいかに素晴らしいか、なんで大切なのかっていうのをもっと知ってほしいと思っています。Walmartでも多様性のある組織が生き抜ける組織が大事って言っていたけど、日本の多様性ってまだポーズ的なところがあると感じます。育休とかも制度さえ有ればいいわけじゃなくて中身の部分も必要だし、多様性は女性に関することだけではないし、でもLGBTだけじゃないし、どんな人でも輝ける才能があって、それを活かせる環境を作ることが大切だと感じています。自分らしくはたらけることが、人の幸せや会社の利益につながることを多くの会社が認めていくことで、社会も変わっていくと信じています。

■これからはたらくLGBTへ

小寺さん どんな人でも必ず素敵な部分があるし、輝く個性を持っていると思っています。だから、自分の可能性を信じて、周りとのつながりやご縁を信じて、生きたい道を生きて欲しいです。LGBTであることで、決して自分を蔑んだり傷つけたりする必要はない。周りからの目や評価で、自己否定をしてしまう子も多いとは思うけど、自分が自分を信じてあげてほしいし、それを受け止めてくれる人はこの社会に必ずいて、今、出会えていないなら探しに行って欲しいし、どんなに必死で探してそれでも見つけられなかったら僕らのところとかに会いにきてほしい。独りじゃないよって伝えたいですね。

平山さん 諦めないでほしい。自分に、そして将来の人生に。本当にやりたいこととか、見せたい自分がいるけど、周りがこうだから周りにこう言われたからっていう理由で諦めている人が多くて、それが悲しい。カミングアウトをした方がいいとは思わない。あくまで選択肢でしかないから。ただ、どこかでそれを隠すことで生きづらさや過ごし辛さを感じているなら、カミングアウトするという選択肢があることも知っていてほしい。そしてその選択肢が、企業においても社会においても守られるといいなと願っています。

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