痛ましい事件ですね。
事件の概要
横浜市で、今月14日に幼い男の子の兄弟2人がベビーシッターの男に預けられたあと、行方が分からなくなり、警察が捜査していたところ、17日、保育室として使われている埼玉県富士見市のマンションの部屋からこのうち2歳の長男とみられる男の子の遺体が見つかりました。
報道によれば、マッチングサイトを利用したそうです。
横浜市磯子区の20代の母親がベビーシッターを依頼したとみられるインターネットのサイトは、子どもを預けたい人とベビーシッターの仕事をしたい人が相互に書き込みを行う掲示板になっていて、契約を結ぶ際には当事者間が直接連絡を取り合う仕組みになっているということです。
調べてみると、この種のサイトっていくつかあるんですね。軽くリンク集作ってみました。
- ベビーシッターマッチングサイト|imom.jp
- ベビーシッターとママのマッチング募集・求人情報サイト-シッターズネット
- 保育ママ検索—家庭的保育者—ベビーシッター、チャイルドマインンダーを探すなら保育ママ.com | 保育者とママのためのマッチングサイト!
- ベビーシッター検索はアイシッター
- ベビーシッター CRADLE(クレイドル) 個人のベビーシッターをご紹介☆
業界ルールで対応できればよいですが、人命が絡む以上、これらのマッチングサイトには何らかの法的規制が求められても仕方がないと思います。
この見出しはミスリーディング。今回の問題はベビーシッター業そのものにではなく、身元の不確かな個人に依頼できてしまう、個人シッターマッチングサイトにある。 "@nhk_news: 規制や資格なし ベビーシッターの現状 http://t.co/lhBU0vYc03"
— 駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) 2014, 3月 17
個人ベビーシッターの仲介サイトは幾つかあるけど、正直お勧めしない。シッターの質がものすごくピンキリで、しかも預けてみないと分からない、という情報の非対称性が高いからだ。団体がシッターを選別、教育するコストは非常に高く、それが価格に乗ってくる。安さの理由は、それがないこと。
— 駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) 2014, 3月 17
ベビーシッター紹介サイトのようなサービスを否定するつもりはないが、誘拐犯とか児童ポルノ愛好家とか、問題のある人物が入ってくることをなかなか排除しにくいリスクがあると思う。かなり慎重に利用しないとまずいだろう。預けたら、国外へ連れて行かれたりすると、取り返しはつかない。
— 落合洋司 (@yjochi) 2014, 3月 17
「ネットでベビーシッターを探すなんて、親が無責任すぎる」?
で、ネット上の反響を見ていると、ちょいちょい「ネットでベビーシッターを探すなんて、親が無責任すぎる」「そんなベビーシッターに預けるなんて理解できない」的な意見が見つかります。この種の話は、とかく「親が非常識だ」「親の責任だ」と帰着させられがちです。鈴木宗男さんもこんなことを書いてますね。
報道で知る限り母親とベビーシッターの男は面識もなく簡単にインターネットでのやり取りである。母親として見ず知らずの人に預けた場合、安全性とか誘拐とか頭になかったのだろうか。親として無責任な面があったのではと思うのは私だけだろうか。
自由主義・民主主義は相手を信用する。性善説が基本になるが、自分の子供を簡単に知らない人に預ける、あまりにも安易なやり方に何とも無神経と言わざるを得ない。
が、そこでお話を終えてしまっては前進しません。リスクの高いサービスを利用しなくてはいけない背景がそこにあるわけですから。
うちも子育てをしている身ですが、「短時間・短期間、子どもを預かってもらう」という場合に頼れる選択肢は、実際のところ限定的です。公的な支援については、情報を探すのも難しいです。厚労省の「ファミリーサポートセンター」とか、どのくらい認知度あるんでしょうかね…うちは妻の実家が近いのでだいぶ助けられていますが、そうでなければどこを利用していたのだろう…。
時間・金銭に余裕がない人ほどハイリスクなサービスを利用する
好き好んで、あえて「リスクが高いサービス」を利用する人なんていない、ということは理解しておくべきだと思います。ネット上のハイリスクなマッチングサイトを利用する方々は、時間的・金銭的に合理的判断をした結果、こうしたサービスを利用しているわけです。
端的にいえば、「時間・金銭に余裕がない人ほどハイリスクなサービスを利用する」という状況が生まれてしまいがちなのです。これは公正とはいえないでしょう。
余裕のない親たちが、安心してサッと子どもを預けることができるインフラを整えていくべきだと思います。そして、そのためならぼくたちは負担増も受け入れていくべきです。問題を家庭のなかで解決させようとする限り、ハイリスクなサービスを利用せざるを得ない人たちは減っていくことはないでしょう。
親たちはなぜハイリスクなサービスを利用してしまうのか、どのような解決策があり得るのか、議論を深めていきたいところです。
駒崎さんが連続ツイートを投稿しているので引用しておきます。
News23からのコメント取材だん。今回の個人シッターマッチングサイト事件で構造的に重要なのは、なぜ人は個人シッターマッチングサイトを、高リスクにも関わらず、使うのか、という点。それはシッター会社を通すより安いから。なぜ安いか。品質管理コストが掛かってないからだ。
— 駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) 2014, 3月 17
個人シッターマッチングサイトを、単純に規制しても意味がない。なぜなら、サイトがなくなれば、TwitterやFacebook等、個人間のやり取りに移行するだけだからだ。実態は更に「潜る」ことになる。
— 駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) 2014, 3月 17
政府が取れる政策手段はある。それは、ベビーシッターを利用する、利用者側に補助を出すこと。(例:全国ベビーシッター補助券)そして、その補助を使って依頼できるのは、国に届け出を出し、情報開示義務を負った事業者のみにする。
— 駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) 2014, 3月 17
ベビーシッター補助によって、個人シッターを頼むよりも安く、企業所属の一定の品質管理されたシッターを頼めるようになれば、個人シッターに頼むインセンティブはなくなる。
— 駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) 2014, 3月 17
政府はこれまでベビーシッターに対し、ニーズが増加しているにも関わらず、ほとんど補助してこなかった。それが個人間私的契約市場を生み出すことに繋がったといえる。待機児童問題だけでなく、多様な保育を支えるためにも、社会的投資が必要だ。
— 駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) 2014, 3月 17
やむにやまれず、預けざるを得ない方もいるのです。様々な子育て環境にある方がいることに、想像力を働かせて頂けると幸いです。 RT @tacklesun 近所の人にも預けない子供をネットで宣伝しているからと信用する方がどうにかしてる。
— 駒崎弘樹:Hiroki Komazaki (@Hiroki_Komazaki) 2014, 3月 17