- 2014年03月17日 11:05
NHKが「佐村河内」報告書で明らかにした”見破る難しさ” 民放も報告書を出すべきだ
4/4再発防止に向けて
今回の問題に関して、NHKには視聴者から極めて厳しい意見が寄せられた。番組制作にあたり、企画から放送までのそれぞれの段階でチェックと検討を重ねてきたが、別の人物が作曲していたことや、全聾ではなかったことに気づくことができなかった。番組制作者として深刻に受け止めている。
佐村河内氏に関しては、そもそも、別の人物が作曲しているかもしれない、という想定はまったく持っておらず、疑念を抱かせるような情報も入っていなかった。作曲するときの「記譜シーン」の撮影は、耳の聞こえない人がどうやって作曲するのかを描くねらいであって、本人が作曲していることの証拠を得ることを目的とするものではなかったため、番組制作の段階では、そのシーンが不可欠であるという判断は難しかったと考える。
しかし、結果として虚偽を見抜けなかったことは、今後のこうした取材をする場合の教訓として制作現場で共有しなければならない。
聴覚障害については、通常行わない障害者手帳や医師の診断書の確認までしていた。
取材の現場では、佐村河内氏の障害を裏付けるような場面に多く遭遇したことや、人道上の観点から、それ以上の確認作業は行わなかった。佐村河内氏の「音楽的経歴」については、両親への取材を申し入れたが、拒否された。
友人にも話を聞いたが、佐村河内氏の経歴を疑わせる発言はなかった。もっと取材範囲を広げて裏付け取材を行えば、経歴が虚偽であったことを見抜けたかもしれない。社会的に一定の評価が定着している人物を番組で取り上げるとき、
その経歴や評価についてどこまで確認をとるべきなのか、番組制作の教訓として重くとらえている。以上のように、番組を制作した時点では、当時必要と思われた検討や確認は行ってきたと考えるが、結果として、事実とは異なる内容を放送したことを真摯に受け止め、反省しなければならない。
これからは、今回のようなケースもありうることを、制作現場のすべての職員・スタッフがしっかりと認識し、取材から放送に至るまでのあらゆる過程で、真偽を見極めるチェックの精度を高めていく必要がある。
NHKは、今回の問題を、様々な研修会や勉強会で取り上げ、再発防止の取り組みを進めていく。
「NHKスペシャル」について、筆者が番組制作の姿勢で気になったことは、「ラの音の耳鳴り」「絶対音感」など、「実際の映像とCGを組み合わせたような、一見、科学分析のように見えるシーン」を登場させながら、「科学的な(あるいは医学的な)分析」がなかったことだ。聴覚を失っての作曲はどのようにして可能なのかは検証すべきテーマだった。最初からそれがなかったことと、さらに結果的に被災で親を失った少女の心を傷つけたことは今後も反省すべきと思う。
佐村河内氏についてもこれですべてが判明したわけではない。
先日の記者会見で彼の言い分があらゆる点で真実だと感じた視聴者は少ないだろう。
NHKの報告書も、佐村河内氏の「言い分」に基づいたもので、「彼はこう言っている」と記されている部分が多く、まだ不十分だ。
なぜ見抜けなかったのか。今後どうすればよいのか。番組に登場させた被災者らへの責任をどうとるか。
今後も考え続けてほしい。
なぜなら、NHKは日本一の制作者集団であり、「NHKスペシャル」も日本一の番組だからだ。日本の放送文化やジャーナリズムにとっての「最後の砦」とも言える番組だからだ。
「記譜」のシーンが撮影できなかった時、番組をボツにするという判断もありえたはずだ。
ないものねだりかも知れないが、他の番組ならばいざ知らず、NHKスペシャルなのだから。
NHKの人たちは問題の検証をこれからも怠らないず、けっして萎縮することなく意欲的な制作を続けていってほしい。
自らを検証しなければならないのは民放も同じだ。
佐村河内氏の言うがままに再現シーンを撮ったり、事実かどうか検証されないナレーションで放送していた責任は民放にもある。
一例を挙げると、TBSの「中居正広の金曜日のスマたちへ」。佐村河内氏を紹介する時に、彼の幼少期に始まり、聴力を失った経緯、障害児に出会って作曲家として生きる決意を固めたという「美談」が再現VTRと本人のインタビューで構成されている。今回、NHKにねつ造を認めた「創作ノート」を手にとったタレントが感心するシーンや佐村河内氏が「盲目の孤児たちの施設」に行ったことで勇気づけられ、以後、障害を持つ人たちとの交流に積極的になったというエピソードが語られていた。児童養護施設にいる子どもたちは様々な事情で施設に入所している。このため、いまどき「孤児」という差別的な言い方はテレビなどのマスコミはほとんど使わないのに、この番組のずさんなナレーションの表現は筆者の記憶にも残っていた。
あれらの番組はどうして放送されたのか。
佐村河内氏を登場させた民放各局も検証して「公表する責任」を負う。



