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東芝情報流出事件のアレコレ

東芝の提携先の元技術者が、東芝のフラッシュメモリーに関する研究情報を、韓国企業に流出させた疑いで逮捕されました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140314-00000085-san-soci
技術大国日本を揺るがすこの事件を分析します。

情報(データ)を盗む行為は犯罪になるのでしょうか?

実は、「情報窃盗罪」のような、情報自体を盗む行為を処罰する刑法上の犯罪は存在しません。 また、情報自体は窃盗罪(刑法235条)の「財物」に含まれないと解されているため、窃盗罪にも該当しません

財物とは、お金や宝石といった、目に見えるものを想定しているのです。 刑法が作られた1907年(明治40年)当時には、コンピューターなど存在していなかったので、「情報」を盗むなんてことは想定されていないのです。

ちなみに、情報自体ではなく、情報が入ったフラッシュメモリー等は「財物」となり、それを盗んだ場合には窃盗罪が成立します。 しかし、会社のフラッシュメモリーに会社の情報を入れて持ち出せば窃盗罪になるのに、自らが持ち込んだフラッシュメモリーに会社の情報を入れて持ち出せば窃盗罪にならないという、おかしな結論になってしまいます。

法の不備を是正するため、営業秘密の流出は不正競争防止法で罰せられるようになりましたが、「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金(またはその併科)」という刑罰は、アメリカの経済スパイ法の「10年以下の懲役または上限なき罰金」、さらには外国政府が関与した場合の「15年以下の懲役もしくは50万ドル以下の罰金(またはその併科)」と比べると軽く、現代社会における「情報」の重要性を考えると、法の整備がまだ不十分であると言えるでしょう。

なお、会社の重要な情報(秘密)の流出を防ぐため、会社と従業員が秘密保持契約を結ぶことが多いのですが、それはあくまで民事上の契約ですので、(不正競争防止法違反になる場合以外には)刑事罰を与えることはできません

民事上の損害賠償をするにしても、情報を流出された後であれば結局は後の祭ですし、秘密保持契約には「損害賠償として1億円支払う」という具体的な金額をあらかじめ定めておくことはほとんどなく、「損害を賠償する責に任ずる」と定める程度ですので、実際の金額は裁判において主張・立証しなければなりません。

秘密保持契約を結んでなかろうと、情報流出により会社が損害を受ければ損害賠償請求訴訟を行うことができるため、秘密保持契約を結んでおくことは、いわば「保険」のようなもので、それがあれば絶対に大丈夫というほどの効力はないというのが実情です。

また、情報やノウハウ(情報とノウハウの境界自体が非常に不明確なものです)を持った従業員がライバル会社に転職しないように、会社と従業員が競業避止義務契約(在職中に会社と同種の事業を他で行うことを禁止し、退職後も一定期間は同種企業に転職することを禁止する契約)を結ぶことも多いのですが、特に退職後の転職禁止は、職業選択の自由(日本国憲法第22条第1項)に抵触するため、問題になります。

競業避止義務契約の有効性が裁判で争われる際には、次の事項等を考慮要素として、公序良俗違反として無効(民法第90条)となるか否かが判断されます。

1.企業の利益(ノウハウ等の要保護性)

2.従業員の地位・業務の性質・勤続年数

3.競業避止義務の期間

4.代償措置の有無

高度なノウハウを守る必要性が高く、そのノウハウに触れる立場の従業員であり、競業避止義務の期間が退職後1年間程度であり、競業避止義務の対価とみるのに十分な報酬が在職中に支払われていたような場合には、その競業避止義務契約は有効であると認められる傾向にあり、そうでない場合には、認められない傾向にあります。

以上のように、秘密保持契約や競業避止義務契約により、会社の重要な情報やノウハウが流出することを一定程度は防ぐことができるとはいえ、完全に防止することはできません。

ばれないように情報を流出させたり、たとえばれても窃盗罪よりも軽い刑罰を覚悟して流出させる従業員ないし元従業員がいたり、1年程度の転職禁止期間経過後は堂々とライバル会社に転職することができる現実を前にすると、現在の法制度の改革は不可欠であると思います。

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