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教育の独立性と偏差値と予備校と学歴

ニュースステーションでやっていた竹富島の教科書採択問題。行政の息がかかった人間を教育長に据え、現場の教員の意思を無視して、強引に教科書採択。いじめ対応の強化、学力テストの結果の落とし前など、教育長を行政の管轄下に置くための言い分はたくさんある。それらはそれらで対応しなければいけない問題だ。しかし、教育の独立性という上位概念を捨てるかどうかはまったく別問題であるはずだ。教育長を行政の息の下に置くことがもたらす効果と副作用を冷静に考えなければいけない。教育を、行政の意のままにするために、いじめ問題を都合良く利用しているようにしか思えない。教育長を、行政の息のかかった人間にすることのリスクについては下記エントリーを参照されたい。

http://blogos.com/article/78770/

次にモギケンさんの偏差値批判、予備校批判について。かなり好意的にとらえれば、多分、モギケンさんは偏差値の意義、予備校の意義も理解したうえで、そういうものに頼らざるを得ない日本の教育のていたらくをなげきたかったんじゃないかと私は思う。そんな気持ちで単に酔っ払ってツイートしちゃったんじゃないかと思うけど。偏差値という単なる統計上の数字が何か悪さをするはずもない。学校に所属することができず浪人という身分にいる人が所属する予備校という存在が悪いはずもない。予備校とは、何者でもないものが何者かになるための場所。なければないで浪人生たちは困ってしまうわけだ。日本の教育において塾や予備校が果たしている役割についてはこちらのエントリーを参照されたい。

http://blogos.com/article/78732/

では、子どもたちを苦しめる競争教育とは何か。塾が日本の教育に果たしている役割を考察した拙著『進学塾という選択』から引用する。

競争を激化させる最大の要因は、日本の学校制度が単線型であり、かつ、入学に際しては競争型の入試をかいくぐらなければいけないことにあった。

日本の学校制度は、各学校が個性的であることよりも、画一的であることを目指している。学習指導要領や検定教科書で、全国津々浦々で「同じ」教育が受けられることを目指している。下に外れることはもちろん、上をいきすぎることも許されない。みんなが同じレールを行くようなものだ。

だからすべての学校が偏差値によって序列化される。たかが偏差値1の違いでも、A高校よりB高校のほうが上であるという見方がされる。どうせ受けるなら1つでも偏差値が上の学校に合格したいと思う気持ちが刺激される。できるだけ上のランクの学校に合格することこそが自己目的化する。まるでゲームだ。

『学習塾百年史』の中で小宮山氏は次のように指摘する。「受験のゲーム化は、高校や大学が偏差値で細かく輪切りにされているから起きる現象である。これも受験競争を激化させる要因の一つといえるだろう。このような受験競争意識の激化は、塾を成り立たせる加速条件といえる」。

そもそも塾が受験競争意識をもたらしたのではなく、受験競争意識が塾を成立させているという指摘だ。

誰もが同じレールの上を進むことができて、しかも努力すればレベルの高い学校に行くことができるしくみというのは、世界でもまれに見る開かれた学校制度である。どんな出自であっても、努力さえすれば人の上に立つことができる。しかしそのこと自体が「学歴エリート」や「受験競争意識」を生み出した。

欧米では、いまだ伝統的階層文化が根強く、社会の平等化に対して教育がほぼ無力であると、広く認識されている。出自によってあらかじめ学歴が決まってしまう部分が多く、社会的階層が固定されているのだ。だから過度な競争は起こらない。

しかし日本では、「平等」を重んじる学校制度こそが、受験競争意識を支える土台となっている。皮肉だ。

オックスフォード大学教授の社会学者・苅谷剛彦氏は、著書『大衆教育社会のゆくえ』(中央公論新社刊)の中で、「戦後の日本における能力主義と平等主義の奇妙な結合」と表現し、それが学歴社会の基盤となっているのではないかと指摘している。

そのまま苅谷氏の言葉を借りれば、子どもたちを受験競争へと追い立てるものは、塾でも偏差値でもなく、「戦後の日本における能力主義と平等主義の奇妙な結合」なのであり、塾を悪者に仕立て上げることは、「木を見て森を見ず」なのである。

教育行政問題と、教科書検定問題と、塾・偏差値問題、さらには学歴問題は実はつながっているのである。

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