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米国の公共放送のトヨタのベアの伝え方

今年はベアの恩恵にあずかる人々もいるということで、そうした労働者の皆さんにはおめでとうと言いたいと思います。

 ところで、私、昨日ブログで次のようなことを言ってしまいました。

 「しかし、この甘利発言に接したことによって、私は、現実はそれほど甘くない、つまり、賃上げに応じる企業はやはり多くはないことを確信しました。というのも、ここに来て賃上げをするのが当たり前になっているのであれば、甘利大臣がそのような発言などする必要もないからです」

 甘利大臣の発言とは、儲かっていながら政府の賃上げ要請に協力をしないような企業は、経済産業省から何らかの御沙汰があるから覚悟しておけ、というものなのです。

 私の考えは、理屈としてはもっともだと思うでしょう?

 しかし、そう言った私も、テレビでベアのニュースが次々に報じられると、安倍政権の強引な手法が少しは功を奏しているのかと思ったり‥しかし、その一方で、これから決定される中小企業については、賃上げ余力がある企業が多いとは思えないし、と。

 では、真実はどうのか? アベノミクスの効果で賃上げが実現され、今年は労働者の生活水準が上がるのか?

 ということで、本日は、今年のベアの状況について考えてみたいと思うのです。

 先ず、一番景気がいいとみられるトヨタ。

 NHKのニュースを振り返ります。

 「春闘の相場作りに大きな影響力を持つトヨタ自動車の労使交渉は、ベースアップを組合員平均で月額2700円とすることで12日の回答日を前に事実上、決着しました。

 ことしの春闘でトヨタ労組は、従業員の基本給を引き上げるベースアップを平均で月額4000円を要求し、経営側も理解を示す一方、高過ぎる人件費が国際競争力を低下させるとして、調整が続けられてきました。

 そして、10日の大詰めの交渉で、経営側は今年度の業績見通しが過去最高となることなどを受けてベースアップを月額2700円とする方針を伝えトヨタの労使交渉は12日の回答日を前に事実上、決着しました。

 トヨタがベースアップを実施するのは平成20年以来6年ぶりで、組合が要求の方式を変えた平成14年以降では最も高い水準となります。

 またボーナスは、月給6.8か月分の要求を受け入れて4年連続の満額回答となり、去年を40万円近く上回るおよそ244万円となります。

 春闘の相場作りをリードするトヨタがベースアップに踏み切ることで、大詰めを迎えているほかの企業の労使交渉にも大きく影響しそうです。」

 如何でしょうか?

 賃上げが期待できない企業で働いている労働者からは羨望のまなざしで見られることでしょう。

 ・ベースアップの額は2700円
 ・ボーナスは6.8か月分の満額回答

 何と羨ましいことなのか、と。

 ブルームバーグのニュースも見ておきましょう。

 「トヨタ自動車 は春闘で労働組合が要求していたベースアップ(ベア)について、月2700円にすると決めた。トヨタのベア実施は6年ぶりだが、労組の要求額は下回った。

 トヨタは12日、労組側に回答。トヨタの発表資料によると、昇給は基準内賃金で月1万円、年間一時金は244万円。昇給のうち、賃金制度維持分としてはトヨタ自動車労働組合の要求通り、7300円を支給するが、ベアは労組要求の4000円を下回った。一方、年間一時金は労組要求の通り、基準内賃金の6.8カ月(244万円に相当)と満額回答になった。

 安倍晋三首相が企業に賃上げを求める中、トヨタの宮崎直樹専務役員は同日、愛知県豊田市の本社で記者団に対し、日本経済の好循環へ配慮して例年より高い回答になったとの見解を示した。政府の第3の矢への役割を果たし、「賃金引き上げの流れが各方面に及んでいけばいいと思っている」と述べた。昇給1万円台は1993年以来の水準になり、年間一時金と合わせた年収ベースは前年比8.2%の増加になるという。

 トヨタはまた、シニア期間従業員と一般期間従業員の日給を200円引き上げることも発表した」

 さあ、如何でしょうか? 

 トヨタの社員たちの年収は、前年比8.2%の増加になると報じられています。

 流石トヨタだとお思いになっているでしょうか? そして、やっぱり企業に賃上げを求め続けた安倍政権のやり方がそれなりに功を奏したということなのでしょうか?

 実は、このトヨタのベアについて米国の公共ラジオ放送も報じているのです。では、米国ではどのように報じられているのか? もし、米国でも驚いて受け止められているとしたら、安倍政権の強引なやり方もそれなりに評価をしなければいけません。

 米国の公共ラジオ放送のNPRが33秒でトヨタのベアの結果を報じているのです。

 NPR's business news begins with raises at Toyota.

 「NPRのビジネスニュースは、トヨタの賃上げの結果から始めます」

 (SOUNDBITE OF MUSIC)

GREENE: Toyota employees in Japan will seek their biggest pay raise in 21 years - though it's not very big.

「日本のトヨタの従業員たちは、過去21年間で最大の賃上げを得ることになるでしょうが、それほど大きな賃上げではないのです」」
 
The giant Japanese automaker says it will boost pay by just under one percent.

「この日本の巨大な自動車メーカーは、1%未満の賃上げを行うと言うのです」

This is less than the workers union was asking for.

「これは、労働組合が求めていたものを下回ります」

 Japan's Prime Minister Shinzo Abe has been pressuring Japanese businesses to raise rates in an effort to pull Japan out of decades of deflation.

「日本の安倍総理は、数十年に及ぶデフレから日本を脱却させるために、賃上げを実現するよう日本の企業に圧力をかけてきたのです」

 この米国のニュースを聞いて、今貴方は怪訝な顔をしているのではないでしょうか? 賃上げ率は1%未満なのか、と。

 そんなことを報じるメディアは日本にはないのです。報じていることは、賃上げ額は2700円であって、要求の4000円には満たない、と。但し、それでも賃上げは6年ぶりのできごとだとか‥それに、トヨタの従業員の年収は、前年比で8.2%も伸びる、と。

 一体どういうことなのでしょうか?

 実は、年収が8.2%も伸びるというのは、主に定期昇給分や賞与の増加分を含めるからそうなるだけの話で、同じ年齢の従業員の給与として比べたら、そこまでは増えないということなのです。つまり、賞与抜きで、そして同じ年齢の従業員としての賃金で考えたら、1%未満しか増えないということなのです。

 アベノミクスの円安の恩恵を最大限に受けたトヨタでさえ、定昇抜きの賃金のアップ率は1%にも満たないのが現実なのです。

 しかし、世の中には、アベノミクスの円安によってむしろ経営内容が苦しくなったところもある。それで、全体としてみたとき、どうして労働者の生活水準が改善すると言うことができるのでしょうか?

 同じ自動車メーカーでも、軽自動車のスズキはベアを見送ると見られていたのが、800円で妥結したのだとか。但し、妥結したと言っても、一律の実施は見送り、若手や仕事で成果を残した社員らに手厚く配分すると言っているので、玉虫色の決着としか言いようがありません。

 賃上げに協力しない企業にはどんなお沙汰があるかもしれないと心配して、形だけベアを実現したようにしたのでしょうか?

 そうした一方で、餃子の王将が1万円のベアを実施するのだ、と。要求は2500円でしかなかったのにです。つまり4倍返し。

 幾ら売り上げが伸びているからと言って‥それとも今までが余りにも低賃金過ぎたのでしょうか?

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