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あの日から3年の日に思ったこと。の巻 - 雨宮処凛

 東日本大震災から、もう3年が経過した。

 この3年間の原稿をちらちらと読み返して、改めて、気が遠くなるような感覚に包まれた。

 多くの命が失われたあの日から、なぜか生き延びた私たちはきっちり3歳、年をとった。

 「被災地」には、この3年間で何度か足を運んだ。

 震災1ヶ月と少しで訪れた石巻。イベントで行った福島。取材で訪ねた岩手。

 津波が襲った町はひたすらにどこまでも瓦礫で埋め尽くされ、あり得ない場所にあり得ない角度で突っ込んだままの車には、「捜索済」の文字が生々しく書かれていた。たくさんの自衛隊員が長い棒を片手に遺体の捜索を続け、瓦礫撤去のボランティアたちも大勢現地に入っていた。そんな石巻では津波によって陸に打ち上げられた魚が腐り、その匂いが海辺から離れた場所にまで漂っていた。戻ってきても、しばらくはその匂いを忘れることができなかった。

 翌年の1月には、取材で岩手を訪れた。

 津波に襲われた町の瓦礫は撤去され、見渡す限りの更地で、それが被害の全貌を恐ろしいくらいに露にしていた。

 2011年の末だったと思うが、講演で福島を訪れた。

 学校の先生たちの会合で、まさに自宅や勤めていた学校が20キロ圏内にある人たちが大勢いた。自身の学校が避難所となり、地震、津波、原発事故という被害の中、「避難所運営」に忙殺された先生たちの話に、なんと言っていいのかわからず、ただただ頭が下がった。

 この時、原発事故の賠償金や慰謝料などを巡り、「これから福島が内部分裂するのではないか」という不安の声を聞いた。

 それが現実となったことを知ったのは、2012年2月の福島行きでのことだ。

 避難区域の人たちがたくさん避難している福島市で乗ったタクシーの運転手さんは、彼らを「東電の賠償金でパチンコ行って酒ばかり飲んで」と痛烈に批判し、飲み屋では、「あそこはいくら貰った」などの「原発事故の賠償金」にまつわる噂話が飛び交っていた。訪れた大学には、温度計と見間違うようなさりげなさで「放射線量」を示す計器が設置され、居酒屋に貼られた生ビールのポスターには、「ビールは放射能にいい!」というブラックジョークのようなキャッチコピーが踊っていた。

 この3年、津波の被害に遭った人、原発事故によって避難生活を強いられている人、原発で働く人、家族を亡くした人など、本当にたくさんの人に話を聞いた。大勢の人の涙に触れて、私もたくさん、涙を流した。

 あれから、この国の人たちは少しずつ、変わった。

 国は情報を隠すのだ。一部の人や地域を見捨てるのだ。そんなことを、多くの人が嫌というほど痛感したからだ。

 だからこそ、多くの人がデモに参加し、官邸前に集まり、脱原発の声を上げ続けている。

 しかし、あの日以降、「分断」も絶え間なくしかけられ続けている。「あいつらだけ賠償金もらって」というようなやっかみなどは、その典型的なパターンだろう。

 だけど、今一度、問いたい。

 賠償金が貰えるなら、自分の生まれ育った故郷が2度と戻れない汚染地帯となり、思い出のある家も仕事も奪われ、そして情報が錯綜する中、結果的に置き去りとなってしまったペットや家畜の生死に気が狂いそうなほどの夜を過ごしてもいいという人など、この世に一人でもいるのだろうか? と。

 そして今、その賠償金は、避難区域の再編などでどんどん打ち切られているという現実がある。東電と国による被害者の「切り捨て」は、とっくに始まっているのだ。

 そんな中、安倍政権は「再稼働」に向けての準備を着々と進めている。

 3・11から約1ヶ月の「原発やめろデモ」で、非常に印象に残っている言葉がある。

 それはプラカードに書かれた、「今まで無関心でごめんなさい」というものだ。

 私たちの無関心が、ある意味で原発の安全神話を補完し、そして地震大国であるこの国の原発を稼働させ続けてきた。

 あの時まで、「無関心」なことは、「無害」なのだと思っていた。しかし、無関心も沈黙も、「有害」だし「罪」だし、何より「無責任」なのだ。

 もう2度と、あんな後悔はしたくない。

 無責任な大人でいたくない。

 あの日から、3年。

 改めて、この国に生きる一人としての「責任」を考えている。

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