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アメリカのウクライナ政策を強力に支持することが日本の国益である

 ウクライナ情勢を受けての日本外交のあり方について、一部にこの際中立的に動いてロシアに恩を売って北方領土問題の前進につなげよう、といった意見があるようですが、これは日本の国益を考えたとき、非常にリスキーな選択だといわざるを得ません。

 そして、先日の日米首脳の電話会談以降の日米政府のやり取りを見ていると、多少の不安を感じざるを得ません。日本としては安全保障、外交の優先順位を誤るわけにはいかないのです。

 日本外交の中で、対処すべきものの優先順位は明確なはずです。今の日本のおかれている状況を考えれば、現実の軍事的脅威への対処こそが何にも優先されるべきです。北方領土や歴史認識など我が国にとって極めて重要な問題も、現実的な安全保障の判断に優先されるべきではない。我々は政治家としてリアリズムに基づく判断を下さねばならないのです。

 朝鮮半島をはじめとして様々な地政学的リスクがありますが、日本として何よりも優先すべきなのは中国の現実的な軍事的脅威への対処です。中国人民解放軍の潜水艦の配備や弾道ミサイル、航空母艦や航空部隊の運用等々から判断して、時々刻々と日本に対する中国の軍事的な圧力は現実的に強まっていますし、日本単独でこれに対抗することは事実上不可能です。韓国やオーストラリア、台湾などと複層的な連携を強めることはもちろん重要ですが、その観点から何よりも死活的に優先すべきは日本の安全と東アジアの安定へのアメリカのコミットメントをどう維持することが出来るか、この一点につきるのです。

 今回のウクライナ問題への対処もその一つの例です。日露の二国間の問題ではなく国際政治の中での相対的な問題としてこの問題を見ねば道を誤ることになりかねません。国際法上の問題があるにもかかわらず個別の領土問題をそれに優先したとなれば国際社会における日本の評価や信頼が大きく揺らぐということもそうですが、それ以上に、大きいのが日米関係への影響なのです。

 ウクライナ問題でアメリカと完全に歩調を合わせることができなければ何が起こるのか。日本がアメリカの姿勢を完全に一致して支持しなければ、少しでもふらふらすることでアメリカ側に不信感や不満が生ずれば、誰が最も得をするのか。それは中国に他なりません。中国がいつものようにロシア側に立つのに慎重だった理由の一つとしては、国内の少数民族の問題に加えて、日本の揺れている様を見て、日米同盟への長期的なダメージを与えるチャンスだとの判断があった可能性も極めて高い。我々がそれに乗っかることほど愚かなことはありません。

 そもそも外交的な判断においては、アメリカは同盟国なのだから最後は日本が何をやっても必死に守ってくれるはずだ。中国が現実的に紛争を仕掛けてくるはずが無い、等々の先入観や願望を断固として排さねばならない。アメリカの政権が日本の立場を好意的に見てくれて当然だというのは、冷戦下で生まれた、戦後民主主義同様の甘えといわざるを得ません。このところの歴史認識等をめぐる一連のやりとりも、私も日本人として気持ちは多いに共有しますが、国際政治におけるリアリズムを考えれば、根本認識としてこの甘えがその根っこにあるといわざるを得ないし、結果的には日本の国益にとってマイナスの面が長期的には大きいといわざるを得無いのも事実です。少なくとも日本として、中国を利するような行動は、あらゆる局面で断固としてするべきではない。そして今回のウクライナ問題に関しては、アメリカの立場を力強くサポートすることが極めて重要です。

 同盟関係にあっては、水面下でいろいろな議論をすることは重要ですが、表立っては完全に一致をしておかねば強固な同盟関係とはいえません。経済や貿易の問題はともかく、安全保障や国際政治の問題においては同盟関係の中で駆け引きをするべきではありません。

 そして、今回のウクライナ問題についていえば、そもそも、ロシアが日本が中立の立場に立ったからと行って恩義を感じて領土問題で配慮するような国かといえば、応えは否です。そして、仮にそのような進展があったとして、それが日米の信頼関係を傷つけてまでして得られた果実だったとして、それが日本の長期的な国益にプラスなのか?その答えも否です。

 日本の政治家は日本の国民の安全を守ること、それこそが究極の責務です。これを軸に国益の優先順位付けをし決断を下していくことこそが外交に限らず政治が為さねばならないこと、私はそう確信しています。

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