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佐村河内氏ゴーストライター問題のアレコレ

ゴーストライター騒動の渦中にある佐村河内守氏が今月7日、謝罪会見を行いました。

ゴーストライターを務めていた新垣隆氏を名誉毀損で提訴することも検討しているとし、ますます泥沼化していく模様です。

佐村河内氏が新垣氏を提訴した場合、裁判の行方はどうなりますでしょうか?

『村上春樹氏小説のアレコレ』においてご説明したとおり、「名誉毀損」と言っても、刑事上の名誉毀損罪と、民事上の名誉毀損(不法行為)とがあります。

刑事上の名誉毀損罪は、佐村河内氏が告訴を行っても、実際に警察が動くかと言うと・・・現在明らかになっている事情のみに基づけば、難しいでしょう。

そこで、佐村河内氏が新垣氏に対して民事上の訴え(名誉毀損)を起こした場合について分析します。

佐村河内氏は、主に次の2点によって、自らの名誉が毀損されたとし、それによって受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求することになるでしょう。

1.当初は聴覚障害があり、現在でも感音性難聴の状態なのに、佐村河内氏の耳の状態を否定する嘘をついたこと。

2.ゴーストライターのギャラをつり上げる等、新垣氏自身もゴーストライターを積極的に引き受けていたにもかかわらず、「もうこんなことは止めにしよう」と何度も言ったという、佐村河内氏のみを悪

者にする嘘をついたこと。

新垣氏の不法行為(名誉毀損)により佐村河内氏が受けた精神的苦痛に対する慰謝料を支払わせる場合、佐村河内氏側が名誉毀損の事実を主張・立証する必要があります。

1では、当初は聴覚障害があったこと、そして、現在も難聴の状態であることを佐村河内氏が証明する必要があります。

2では、新垣氏がゴーストライターを主体的に務めていたこと(それを間接的に証明するための、新垣氏がギャラをつり上げていたこと等)を佐村河内氏が

証明する必要があります。

なお、裁判で提出される証拠には、「証明力」が高いものや低いものがあります。

証明力が高い順に並べると次のとおりになります。

(1)医師による診断書や警察官による実況見分調書や当事者間の契約書等(客観的証拠)

(2)当時のやり取りの録画や録音(客観的証拠)

(3)第三者の証言という主観的証拠(主観的証拠)

(4)当事者の証言(主観的証拠)

当事者よりは第三者の証言の方が証明力が高いのは、嘘をつきやすい当事者よりは、第三者の方が嘘をつかないだろうという判断からです。

となると、利害関係のある第三者の証言よりは、利害関係のない第三者の証言の方が証明力は高いことになります。

そして、原告(佐村河内氏)がある程度の証明をした場合には、被告(新垣氏)が反論することになり、その事実は被告が証明する必要があります。

1では、佐村河内氏が2002年当時に聴覚障害2級(身体障害者福祉法)に該当したこと及び現在は難聴の状態であることが医師によって認定されている(客観的証拠)ため、十分な証明がなされたとされ、今度は新垣氏側が佐村河内氏の聴覚障害及び難聴の状態はいずれも虚偽であることの証明をすることが必要になります。

そのためには、次のような事実を新垣氏が立証しなければなりません。

(1)佐村河内氏は新垣氏と手話通訳者を介さず普通に会話していた事実

(2)新垣氏が作曲した楽曲に対して佐村河内氏がコメントしたことがある事実

(3)佐村河内氏が新垣氏に電話してきたことがある事実

(4)新垣氏が佐村河内氏の後ろから呼びかけたら佐村河内氏が振り向いた事実

これらの事実を証明できる客観的な証拠がなく、自分自身の証言(主観的証拠)しかなければ、証明としてはいささか不十分でしょう。

新垣氏が2人のやり取りの録画や録音(客観的証拠)、または第三者の証言を用意できるかが焦点となると思います。

なお、佐村河内氏が新垣氏に電話してきたことがある事実については、新垣氏の通話履歴という客観的証拠を提出することができるでしょう。

2では、新垣氏がギャラをつり上げていた事実を佐村河内氏側が証明しなければなりません。

書面・メールや録画・録音として残っておらず、自身の証言(主観的証拠)しかなければ、十分な証明は難しいと言えます。

もし佐村河内氏がそれを証明できた場合、新垣氏が「もうこんなことは止めにしよう」と佐村河内氏に何度も言ってきた事実、つまり、新垣氏がゴーストライターを渋々務めてきた事実を新垣氏が証明することになります。

この場合も同様に、書面・メールや録画・録音という客観的証拠を提出できるか否かが焦点になります。

以上、佐村河内氏と新垣氏との間の裁判の過程を予想してみましたが、結局のところ、名誉毀損による慰謝料請求事件において、1000万円といった高額の支払いが命じられることはほとんどなく、仮に佐村河内氏の主張が全て真実だとしても、100万円ほどが認められればいいところではないでしょうか。

また、新垣氏との訴訟はさて置き、作曲者および聴力の状態の点で嘘をついてCDを出したりコンサートを開催したことの責任からは逃れることができず、近い将来、その裁判が始まることも予想されますし、聴覚障害の事実いかんでは、虚偽の事実を申告して障害者手帳の交付を受けた(障害年金を受け取ってきた)ことをもって、詐欺罪に問われる可能性があります。

泥沼化してきた本件は、いかなる結末を迎えるのでしょうか?

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