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  • 新恭

石原慎太郎の異常な偏執

石原慎太郎氏のオツムの現状は、自己中心が高じて、異常に偏執的になっているのではないか。あの人かなり変だと思っている人は永田町界隈に多いに違いないが、口には出しにくい。

なにせ残骸に近いとはいえ、「名前」がある。ときどき顔を出して好き勝手なことを言って帰るだけだから、コミュニケーションのとりようもない。遠巻きにながめているほかない裸の王様のような存在になってしまっている。

それでも、昨日、日本維新の会の会合で、多数決で決めた原子力協定反対の党方針を「高校の生徒会のやり方だ。バカバカしくて恥ずかしい」と、政党の共同代表たる立場もわきまえず放言するに至っては、さすがに格下の議員といえど黙っちゃいられない。

「(原子力協定の)採決の時に私は賛成しますよ、賛成したらどうする」と問われた国会議員たちのなかから、間髪をいれず「出て行け!」と怒鳴る若手議員の声が出たのは、正常な反応といえるだろう。

それだけ、石原氏の頭のなかから政党や民主主義という概念が抜け落ちているということだが、それと同時に、思考のバランスがこのところ急速に悪化し、全体への気配りや状況把握の力が以前にもまして落ちてきているのではないかと疑わせる。

筆者は、石原氏のことを「エシュロンじいさん」と、心のなかで呼んでいる。貴重な国会の質問機会に、二回続けて、しかもほとんど同じ発言で、エシュロンに関して問いただすことに長い時間を費やしたからだ。

まず、昨年11月15日の衆院・国家安全保障特別委。

石原「三沢のアメリカの航空基地に、エシュロンという大きなドームに囲われた装置がありますね。冷戦時代に、アメリカが共産圏の情報を窃取するためにつくられた強力な諜報装置です。同じものがミュンヘンにもあります。冷戦が終わり、これが日本の国内に向かって使われているということは、自明なことだと多くの専門家は指摘しております。政府はこれからどういう措置をとるんですか」

同盟国にパラボラアンテナを立てて米国のNSA本部とつなぎ、世界中の通信を傍受してきたといわれるのが「エシュロン」。米政府はもちろん、日本も認めてはおらず、目で確認した人もいないが、2001年にEU議会が「エシュロン」を問題視し、その存在の確度が高くなっているのは事実だ。

しかし公式には、日米ともエシュロンの存在を認めていないから、政府答弁は決まり切っている。

小野寺防衛相「ご指摘の施設のようなものが三沢基地の中にあることは承知しておりますが、それがエシュロンというものかどうかについては、確認をしておりません」

次に、今年2月12日の衆院予算委。

石原「青森県の三沢という航空基地に昔からエシュロンという大きな情報装置があります。これは同じものがミュンヘンにもありますが、冷戦時代にソ連、北朝鮮の動向を調査するための諜報装置だったと聞いている。専門家によると、日本の政府、とくに官庁間の電話はほとんど盗聴されている可能性がある。これをどうしたらいいと思いますか」

小野寺防衛相「米軍の三沢基地のなかにご指摘のような形状をしたものがあることは確認しておりますが、それがどのような役割のものかは承知をしておりません」

同じ質問と答弁。再度同一のテーマを取り上げるのはいいが、それなら角度を変えてみるとか、別の要素を加えるとかするのが、少しはマシな質問のありかたではないだろうか。

筆者が不思議に思うのは、「エシュロン」を言うなら、なぜ「プリズム(PRISM)」を問題にしないのかということだ。

「プリズム」は周知のとおり、かつて米国のNSAやCIAに在籍したエドワード・スノーデンが暴露して明らかになったNSAの個人情報収集システムだ。

「エシュロン」で、官庁間などの会話は筒抜けになっているから、施設を撤去させるべきだというのが石原の主張だが、「プリズム」の活動が続いているのに、「エシュロン」を三沢から撤去してどれだけの効果があるだろうか。石原の頭のなかは、両システムがこんがらがっているのではないか。

石原は、メルケル独首相の携帯も「エシュロン」で盗聴されているように思っているようだが、おそらくそれは間違っている。携帯はデジタルだからだ。

平成22年4月7日の「参議院国際・地球温暖化問題に関する特別委員会」で、参考人として出席した情報通信の専門家、土屋大洋氏はエシュロンについて次のように説明した。

◆エシュロンというのが確かにあった。このプログラムはアナログの技術を中心にしたものだ。あらゆる無線はかつてはアナログでやっていた。人工衛星を介したり、海底ケーブルでも微弱な電波を出すアナログ技術のもの、これらは傍受しやすい。エシュロンが収集していたのはこういう無線の情報だ。

ところが、2000年ごろからインターネットなどデジタル技術が世界に普及したことから事情が激変した。デジタルなら、微弱な電波も出ない。暗号化もしやすい。だから傍受しても分かりにくい。そうなると、通信事業者の協力がなければできなくなり、新たなシステムによる通信傍受がブッシュ政権、オバマ政権で行われている。◆

土屋氏が説明したこの新システムこそ、スノーデンが暴露した「プリズム」か、それに近いものであろうと容易に推察できる。

アナログ対応の「エシュロン」が果たしている役割は、現在においてはかなり小さくなっているに違いない。

一方、デジタル情報革命によって登場した「プリズム」は、米国の大手インターネット企業の協力で、たやすく電子メール、写真、チャット、動画、文書などの情報を収集できる仕組みだ。

マイクロソフト、グーグル、ヤフー、フェイスブックなどシリコンバレーの巨人たちに、世界中のネットユーザーが個人情報を差し出し、安価なオンラインサービスを受け取っているのは周知のとおり。スマホの利用者の急増とともに、居場所まで含む個人情報はいっそう大量に流出している。

石原の言うように、エシュロンの施設を撤去したところで、NSAを中心とする通信傍受システムは微動だにしないだろう。

秘密保護法をつくった日本政府のNSCが、期待通り米国から情報をたくさん受け取るとしたら、政敵や邪魔な人間を潰すためのプライバシー、スキャンダル情報を仕込むことさえできるかもしれない。

それこそ、日本にも恐るべき国民監視体制が築かれないとも限らないだろう。国家が秘密を守るということは、国民が個人の秘密を差し出すということにつながる。

新 恭  (ツイッターアカウント:aratakyo)

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