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特定秘密保護法Q&A(後編) - 青井未帆

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また、

「特定秘密に指定されたものは、特定秘密が解除される前に、廃棄されることは、完全に禁止されているのか否か。仮に特定秘密の解除前に廃棄できるとすれば、どのようなケースか。それは、どのように(例えば、省令、訓令など)定めるのか」

という質問に対しては、

「お尋ねの『特定秘密が解除される前に、廃棄される』場合の例としては、特定秘密を含む行政文書ファイル等の保存期間が満了した場合があり、この場合には、公文書管理法の規定に従い廃棄することができる」

とあります。

つまり、

・特定秘密を含む行政文書ファイル等は保存期間満了前にも廃棄されることがある

・特定秘密が解除される前でも保存期間が満了したら廃棄されうる

というのです。

ここで法4条4項は、先にも見たように30年を超えて秘密指定することの要件として「内閣の承認を得た場合」としていますが、同6項は「第4項の内閣の承認が得られなかったときは」、行政文書ファイルの保存期間の満了とともに、公文書館等に移管しなければならないとしている点が、興味深いところです。

内閣の承認を得ようとしなければ、「保存期間が満了したら廃棄されうる」旨の12月6日の答弁書と矛盾しないからです。

また答弁の中でも触れられている法5条ですが、これは特定秘密について、行政機関の長は「その他の当該特定秘密の保護に関し必要なものとして政令で定める措置を講ずるものとする」としています。

【逐条解説】を見るに、そのような措置として、防衛秘密の例が参照されて、「特別秘密に係る文書、図画又は物件の作成、運搬、公布、保管、廃棄その他の取扱い及び特別秘密の伝達を適切に管理するための措置……」が挙げられています。

本法は、文書の廃棄というのは特定秘密の指定とは別の次元の話であって、当然になしうるのだという理解に立っているようです。

しかし「特定秘密の指定」は、法3条の要件を満たす場合になされるのでした。特に長期間にわたり秘密の指定がなされるものは、通常、歴史的にも重要度の高い情報でしょう。

それが公文書館のダブルチェックの機会をもたないままに廃棄されうるというのは、おかしいのではないでしょうか。公文書館の役割を改めて考える必要があるといえます[*14][*15][*16]。

リンク先を見る

[*14]もっとも、ANNニュース(2013年11月12日)によると、国立公文書館を視察した安倍総理大臣は「特定秘密に指定された文書等について、その保存期間が満了したものは、ほかの行政文書と同様、歴史的文書として適切に取り扱われる」旨、述べています。

強調を付した部分が、「ほかの行政文書と同様の扱いを受け、歴史的文書については歴史的文書として適切に取り扱われる」という趣旨であるとしたら、上で述べた「まとめ」の通りとなるでしょうが、「保存期間が満了したら、歴史的文書として適切に取り扱われる」というニュアンスがあるようにも感じます。

[*15]自民党の「特定秘密の保護に関する法律Q&A」のQ32「長期間特定秘密に指定されるような重要文書は、指定が解除された後に公開すべきではないですか?」への回答のなかでは、「30年を超えて長期間にわたって特定秘密として指定を継続してきた文書について、自ら指定を解除する場合にも、すべて歴史公文書等として国立公文書館等に移管されるよう、運用基準に明記することを検討します」とあります。保存期間との関係が気になるところです。

[*16]なお、【逐条解説】には秘密の指定の有効期間についての説明はありますが、文書の保存期間との関係ははっきりと触れられてはいません。

サムネイル「Surveillance」Lisa
http://www.flickr.com/photos/66206547@N00/8469794945/


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画像を見る青井未帆(あおい・みほ)
憲法学


学習院大学法務研究科教授。専攻分野:憲法学。東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学)、同博士課程単位取得満期退学。信州大学経済学部准教授、成城大学法学部准教授を経て、2011年から現職。著書に『憲法を守るのは誰か』、共著書に『憲法学の現代的論点〔第2版〕』。編著書に『論点日本国憲法』など。

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