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阿部彩『子どもの貧困II 解決策を考える』

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現金給付のメリット

 第5章は「現金給付を考える」だ。次章の「現物給付を考える」と対になっている。

 現金で渡すのか現物で渡すのかは論争的なテーマである。

 阿部が紹介しているように、「親に現金を渡してもパチンコで使ってしまう」的な俗論が支配する日本では、貧困対策としての現金給付への風当たりは強い。

 しかし、この章で阿部が明らかにしているのは、それでも現金給付は重要な利点があるということだ。

 さっきも述べたが、貧困にいたる回路が多様ななかで、それに対応する現物給付のプログラムを無数に組むことは不可能であり、非効率である。


その点、色のついていない現金給付は魅力的である。それぞれの家庭において、今いちばん必要だと思われるものにお金を使うことが可能だからである。それが、育ち盛りのお兄ちゃんのための一カ月に一回の焼き肉デーであっても、サッカーやピアノのレッスン費であっても、母親が夜の仕事をひとつ減らすことであっても、現金であればこそ、それぞれの家庭の事情にあった使い方が可能となる。(p.140)



 阿部は100%の政策効果を期待するな、と牽制する。

 早い話が、そりゃ不心得なやつだっているだろ、でも、多くの世帯はそれがあるだけで自由で多様な「貧困対策」を各家庭でやれるんだぜ、そっちの方が大きいだろ、と言っているのである。

ぼくはつい現金給付についてひるみがちであった。

 たとえば子ども手当(現在は児童手当)。「まあ現金とかよりも保育園の充実とかの方がいいですよね」というふうになりがちだったわけだけど、阿部の本書を読んでもっと正面から現金給付の意義について考えるべきだったと反省をした。


メンター・プログラム

 そして第6章は「現物(サービス)給付を考える」。

 この章で注目したのは「メンター・プログラム」。

 つまり、子どもの時期から「信頼できる相談相手」というのを意識的につくって、その子どもを意識的に気にかけてあげつつ、遊びや勉強の相手になってあげるというようなサービスのイメージである。

 阿部は、まずこれを「居場所」づくりの事業として提起している。

 たとえば、福岡市には地域に児童館がないから、中高生は放課後に居場所がない。部活動というのがあるが、その資力のない貧困世帯は排除されかねない。


 阿部は、中高生や中退者・不登校の子どもたちが集まれる居場所づくりの必要性を説くが、それは児童館・図書館・公民館で来るのを待っているようなものでは成功しないんじゃないかと心配する。


アメリカにおいては、通ってくる子どもに金銭的インセンティブを与える実験プログラムもあるが、そこまであからさまな手法はともかく、子どもたちが魅力に感じるゲームがある、食事が提供される、一対一でケアしてくれる人がいるなどの工夫は必要であろう。(p.174)



 ぼくはこれを読んで、自分がいる左翼組織、その若者グループ組織のことを思い出した。「あ、いい線いってんじゃん」と。

 なんか食べられる。相談相手になるお兄さん、お姉さんがいる。たまり場に、マンガが山のようにおいてある(笑)。ときどき勉強したり、ワークショップをしたりする。ぼくが出入りしている、サヨ系ユース組織はそんな感じである。


「子どもの貧困対策」という枠組みに変える

 第7章は「教育と就労」。

 ここで注目したのは、「義務教育の完全無償化」だった。

 義務教育は無償というのが建前であるが、それは「授業料」だけのことで、実際にはなんやかやとお金がかかる。それをフォローするのが「就学援助」だ。しかし、対象範囲が狭い上に、所得制限が厳しい。

 「就学援助の充実」ではなく、「義務教育の完全無償化」というふうに括られることで、まったく違ったものに見えてきた。


 そうなのだ。

 終章の「政策目標としての貧困削減」でも思ったことなのだが、たとえば「就学援助の充実」とか「給食費の無償化」という個別課題の方が一つひとつを前進させやすいように一見思える。

 しかし、行政や保守系の議員、それを支えている支持層の反対を押し切って説得をさせるうえでは、「就学援助の充実」とか「給食費の無償化」という個別テーマの方がむしろ困難である。

 今回「子どもの貧困対策法」が出来てその具体化をする大綱づくりが始まったように、「子どもの貧困をなくすための計画」という括りをすることで、「就学援助の充実」とか「給食費の無償化」はたとえば「義務教育の無償化」というちがったカテゴリーに位置づけられることになる。


 ぼくは率直にいって、「子どもの貧困対策法」が死文化させられる危惧をもっている。「子ども・被災者支援法」がほとんど具体化されていないように。

 その動きを警戒しつつ、ぼくは国待ちにならずに個別の自治体でも同じような条例をつくって、自治体ごとに子どもの貧困の削減にとりくむ計画をつくるべきではないかと思う。


 というような感じで、自治体ごとの施策をすすめようという刺激になった。自治体への運動にかかわっている人は読むべし。

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