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入社受験料制度の継続を巡る「ドワンゴ社の乱」

ひさしぶりの「闘うコンプライアンス」シリーズです。動画投稿サイトを運営するドワンゴ社が2015年春採用の入社試験の応募者から受験料を徴収する制度を導入したことについて、厚生労働省は「学生の就職活動が制約を受ける恐れがある」などとして、16年春採用から取りやめるよう求めているそうです(概要を伝える中日新聞ニュースはこちら)。これに対してドワンゴ社は、「現段階では自主的に入社受験料制度を中止するつもりはなく、来年度も継続したいと考えています。」と、厚労省の助言については当面従わないことをリリースしています(ドワンゴ社のリリースはこちら)。

厚労省の要請は職業安定法48条の2に基づく(つまり法律に根拠を置く行政指導としての)口頭での助言ということのようです。職安法が(職業紹介、職業訓練だけではなく)労働者募集を規制する趣旨は「労働力需給取引の公正の確保」にあります。ニュース等では、労働者募集時における勧誘者の報酬受領の禁止(職安法39条)が問題とされているようですが、労働力取引(受給)の公正性が害するおそれのある場合に、企業の(労働者募集に関する)業務の適正を確保するために行われる行政指導なので、39条の「報酬」にあたるかどうか、ということよりも、このような入社受験料の徴収制度が労働力取引の公正を害するかどうか、という実質が問題となるのではないかと。

職安法2条は労働者の職業選択の自由を、また同3条は労働者募集(勧誘)にあたり差別的取扱い禁止を規定していますので、このような規定の趣旨に反するような業務をドワンゴ社がしないように(業務の適正を確保するための)指導・助言をします、というのが厚労省の考え方かと思います。なお、39条違反(報酬受領の禁止)の企業行動については、同法65条、67条で行為者、法人とも刑事罰の対象となっているので、憲法31条により「報酬」については明確が定義が求められるはずです(ちなみに「労働者募集取扱要綱」が、「報酬」の解釈基準を示していますが、ドワンゴ社の場合、受験料を「2525円」とした根拠、受験者の居住地域によって受験料をとらない扱いをしていることから、単純に「採用試験の手数料」には該当しないと思います)。

こういった職安法の解釈からしますと、ドワンゴ社が「今後は(入社受験料制度を廃止することなく)、平成25年度の結果をみながら厚労省とは意見交換を行ってまいります」とする見解は、職安法の制度趣旨との関係ではそれほど間違った対応ではないように思います。ただ、入社受験料を徴収した行為の私法上の有効性は別なので、2525円の受験料を支払った方との受験契約は、公序良俗違反(民法90条)により無効ではないかとの見解も聞かれそうです。職安法の制度趣旨は法規に基づく行政指導と業務改善命令、そして刑事罰によって担保されるのか(純粋な取締規定)、それとも前記職安法2条、3条により、私法上の効力にも影響を及ぼすものなのか。ドワンゴ社の入社受験料制度の私法的効力を維持することが、社会の「労働力取引の公正」を害することを助長するものであるならば、その効果を裁判所はどう考えるのか・・・、といったあたりが(憲法の私人間効力の理屈なども含めて)法律上も問題となりそうな気がします。

「闘う」という言葉の意味は本件では正確ではないかもしれませんが、企業コンプライアンスの視点からは今後のドワンゴ社のステークホルダーへの対応がとても興味深いところです。

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