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ロシアに対して経済制裁が不要な理由

 ロシアの海軍がクリミアに配備されているウクライナ海軍に投降を迫ったと報じられ、急速に緊迫感が増しています。

 本当にドンパチが好きな白人たち。

 いずれにしても、武力の衝突だけは回避してもらいたい。

 では、どうしたらいいのか?

 ロシアに対して、軍事介入を止めろと言っても、彼らが素直にそれに従うことはないでしょう。ロシアの軍事介入が非難されるべきものだとしても、ロシアにはロシアの理屈があるからです。

 表向きの理由は、ウクライナ、特にクリミアにいるロシア系の住民の安全と財産を守ることが必要である、と。但し、本音としては、これまでロシアがウクライナに認めさせていた特権を守ることが是非とも必要である、と。

 早い話、ウクライナがこのままEUに加盟することにでもなれば、ウクライナは今までのようにロシアを大切にすることはなくなり、ロシアの利益が大きく損なわれてしまうということなのです。つまり、親露的であったヤヌコビッチ政権が追放された今の流れを黙認するならば、ロシアの権益が侵害されることが明白であるので、ここは何としても黙って見逃すわけにはいかないということなのです。

 ただ、欧米側からみたら、そのロシアの言い分は理屈としては成り立たないのです。

 何故ならば、幾らウクライナが歴史的にみてロシアと深い関係にあるとしても、ウクライナは独立国家であるので、そこで何が起ころうとも、そのウクライナの問題に関して第三者であるロシアが一方的に軍事介入するのは国際法上も許されないからなのです。

 理屈を言うのならば、欧米の言うとおりでしょう。

 しかし、そうは言っても現実にロシアのこれまでの利益が大きく侵害されることも事実。だから、ロシアは実力行使に出たのです。

 確かにロシアの理屈は正当性を欠く。しかし、欧米だって、他の国の問題に関して、人権侵害や独裁体制の打破を理由に軍事介入することがあるのは、誰もが知っていることなのです。

 要するに、欧米諸国は、口ではどんな立派なことを言っても、自国に利益になるように行動するのが常であるので、ロシアの行動を批判する資格がどれほどあるのかということなのです。

 いずれにしても、戦争だけは回避しなければなりません。

 では、我々はそのためにどのような手段を利用すべきなのか?

 私は、先ずどちらが正義であり、どちらが正しいのかというような議論を止めることから始めることが肝要だと信じます。

 確かに争い事がある場合には、誰に責任があるかを詮索したくなりますが、そうなると悪い方におしおきをする必要があるということになり、その一方、責任があるとされた側がそれを認めないと、どうしても衝突が起きることが避けられなくなってしまうからです。

 従って、どちらの言い分が正しいかを考えるよりも、どうしたら武力衝突を回避することができるか、ということを優先すべきだと思うのです。

 では、どうしたらウクライナにおける武力衝突を回避することができるか?

 それは、とにかく戦わないと決めることが一番。

 私が、そのようなことを言えば、そんなことではロシアに領土を取られてしまうという人々がいるかもしれません。

 しかし、今回のロシアの軍事介入について考えれば、ロシアが何の理由もなく、いきなり行動を起こした訳ではないのです。ロシアの言い分にどれだけ合理性があるかは別として、ロシアの権益が侵されそうになっているから行動に出ただけなのです。だから、仮にウクライナがEUに加盟しようとするにしても、今までの経緯もある訳ですから、ロシアとの話し合いを十分に尽くした上で行うべき事柄だったのです。
 
 では、欧米社会はロシアにどう対処すればいいのか?

 オバマ大統領は、ロシアの行為には代償が伴うと言いました。意味深な言葉です。ロシアが軍事行動に出るのであれば、西側による報復も覚悟しろということが含まれるのでしょうか?

 ケリー国務長官は、ロシアを孤立化させることが必要だと言っています。

 でも、孤立化させることなんてするから却って緊張が高まってしまうのです。ケリー国務長官は、過去の冷戦の歴史から何を学んだのでしょうか?

 孤立化なんて必要はないどころか却って有害なのです。

 では、経済制裁を課すべきか?

 それも必要はありません。

 というのも、経済制裁などしなくても市場のメカニズムが働いて、既にロシアに不利に働いているからです。

 ご承知のように、欧米市場では株価が低下しています。しかし、それだけではないのです。ルーブルの価値が急落しています。自国の通貨の価値が下がって喜んでいるのは、これまでの日本位なものなのです。ロシアは早速反応をしています。つまり、急激な自国通貨の価値下落を食い止めるために利上げを余儀なくされているのです。

 利上げになれば、当然のことながらロシアの経済活動にブレーキをかけてしまいます。そして、そうなればGDPは縮小してしまうでしょう。

 他方、経済制裁などが噂されるだけでドイツの株価は特に悪影響を受けるのです。何故かと言えば、ドイツはロシアのガスに対する依存度が大きいからなのです。そして、そのような状況にあるドイツとしては、過激なことを言うケリー国務長官には一歩距離を置くことになるのです。

 つまり、こうして市場が関係者に、戦争を思いとどまらせるように働きかけるのです。

 ロシアが独りよがりの行動に出れば、必ず市場が反応してルーブルの価値は下落する。そして、欧州との関係も悪化するので、輸出収入も激減する。それで、仮にクリミアの権益を確保できたところで、どれだけトータルとしてロシアのとってプラスになるのか?

 そんなこと、計算すればすぐ分かる筈なのです。

 もし、ロシア側がそれに気が付かないのなら、それを教えてあげるのが欧米や日本の務めです。

 まあ、ソチで開かれる予定のサミットはボイコットするぞ、という程度は言っていいかもしれません。しかし、いずれにしても、ロシアを孤立化させるなんて歴史に逆行する話なのです。

  繰り返しますが、ロシアが自分勝手な行動に出ると、却ってロシア自身が損をする結果になるということを教えて上げるべきなのです。欧米がそれを教えなくても、市場がそれを今ロシアに教えてあげているところなのですが‥

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