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小出裕章の「100年後の人々へ」を読む

 「100年後の人々へ」(集英社新書)を読みました。著者は反原発の立場から研究と発言を続けている京都大学原子炉実験所の助教、小出裕章(ひろあき)氏です。著者は原子力平和利用の理想に燃えて原子核工学の道を選んだものの、女川原発反対運動に接する中から疑問を感じるようになり、反原発を生涯の仕事と考えるようになりました。現在の研究テーマは、放射能のゴミを始末する技術の開発です。

 編集者は当初、本のタイトルを「10万年後の人々へ」とし、遠い未来人への手紙という形式を提案したとのことです。しかし小出氏は言下にそれを拒絶しました。10万年後では話が抽象化し、話の通じる人類が生きているかどうかもわかりません。それよりも「いま、ここ」にある問題として語らなければ意味がないのです。もちろん未来にかかわる問題ではあるけれど、せいぜい孫の世代に向けて、負の遺産を残す者の無念を語っておくのなら今がそのときかもしれない。そしてこの本が生まれました。

 この本は、口述されたものを担当者が聞き取り整理する形で編集されたようです。ですから非常に読みやすい本で、著者の人がらまでが伝わってきます。私はこの人の講演を聞いたことはないのですが、ナマでお話を聞いたら「この人の言うことは信用できる」と思うでしょう。そのような本です。さらに本文で言及された事項については詳細な脚注がついており、主張される内容を裏付ける根拠を提供しています。

 内容は反・脱原発の文脈ですでに何度も語られていることですが、たとえば著者は「核廃棄物」という言葉を使わずに「核廃物」と言っています。放射性の廃物は捨てることが不可能なので、半永久的に厄介な廃物として対処しなければならないのです。その管理費用を考えたら、原発の発電コストは天文学的に高価になります。現在の財務上、動かせば経済に貢献するように見えるのは、未来の負担を荷重する犠牲の上に、少しばかりの「今の利益」を盗むことに他ならないのです。

 核廃物を無害化する方法はないのか。この問題を最先端の位置で研究している著者の言葉には重みがあります。結論は、将来の技術の進歩を見込んでも、原理的に不可能が見えているのです。核を加工すればするほど核廃物は増えてしまいます。地球外へ、地下のマントルへ送ろうとしても、安全な方法がありません。

 兵器用、発電用を問わず、核は人間の文明と共存することは不可能なのです。拡散する核汚染が人類の生存を不可能にするレベルになる前に、一日も早く廃絶するほかはありません。

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