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国際公共経済学会

  ベルギーに本部を置く国際学会。その日本支部の理事を務めていまして、2013年大会の実行委員長を仰せつかったので、慶應義塾大学日吉キャンパスで開催しました。

 テーマは「2025年のICT」。ぼくが委員長だからデジタルに引き寄せたのは面白味もありませんが、普段は遠くに眺めているアカデミズムの場を自ら設置することにしたのは2つ理由があります。

 まず、今、ということ。この20年に一度のデジタルの変革期に公共経済学として注目する価値はあるだろうということ。もう一つは、未来展望。それが欠けているだろうという問題提起です。

 かつて、未来の情報社会像に関する空想がたくさんありました。高度情報社会、ニューメディア構想、マルチメディア、ギガビット社会・・妄想がありました。そして、その多くは実現し、むしろ現実が空想を超えてしまいました。

 そのせいか、このところ、未来を展望する気力が失われています。メディアが改めて激動期に入ったところ、未来を再度描くのもアカデミズムの役割ではないか。

 でも、アカデミズムだけではムリ。技術、ビジネス、政策といった多角的な観点から描こうとすると、それら最前線の方々の知恵をいただく必要があります。そこで、アカデミズムの枠を超えた有識者のかたがたにお越しいただいてセッションを企画したものです。

 アカデミズムがプラットフォームになり、場を提供する。これをやりたかった。

 セッションとしては、ビジネス、教育、電子書籍、インフラ、社会といったパネル討論を用意しました。特にぼくが注目したのは、「2025年のデジタル教科書」と「2025年のICT社会」。 

 前者はぼくも登壇したのですが、同じく白石真澄さん、石戸奈々子さんと並んで登壇した武雄市の代田昭久教育監に、反転授業+iPad教育の直接伺いたかったのです。授業で一斉学習し、家で復習という学習パタンを反転し、iPadを家に持ち帰って映像素材で予習、授業ではディベート。デジタル技術で授業の構造を変える取り組みをいち早く取り入れています。

 そのデジタル教材を先生と塾が協働で作っているとのこと。それは画期的だなぁ。代田さんは言います。「教員は正解を教えるものだったが、反転授業・デジタル学習は先生のファシリテート力が問われる。」そう、先生の役割はますます大事になりますね。

 「学習指導要領は「教える」時間を規定する。だが、どれだけ学び、どれだけ理解が進んだかが大事。反転教育はそれを問うものだ。」そう、反転授業では家で映像で教わるんですもんね。「米国立訓練研究所によると、平均記憶率は、講義の場合5%、他人に教える場合90%。授業の中身も、講義から協働へ。」

  ただ、一筋縄ではいかない。タブレットを学校から家に持ち帰らせる仕組みを導入する際、保護者からの反対意見もあったといいます。中には「そんなものを家に持ち帰ったら強盗に入られる」という声が実際にあったそうです。

 「全国の学校を変えるには、まず小中学校の1割、3000校が変わる必要がある。その前に、その1割、300校が目標です。」いいですね。われわれDiTTは100人の先導先生を募っていますが、まず300人に増やしましょう。

  もう一つ。2025年のICT社会も面白かった。東洋大学松原聡教授の司会で、代田さんと共にやってきた武雄市の樋渡啓祐市長、DeNA南場智子さん、参議院議員片山さつきさんらが議論。

  南場智子さんは「ウェアラブルとAR」「オープンソースコミュニティへの参加貢献」の2点を重要な方向として指摘しました。12年前に技術として期待されたものが現実のものになってきたということでしょう。

  同時に南場さんは、国よりもアップルやグーグルのレギュレーションが問題と指摘。そう、ぼくも国家とグローバル企業とのガバナンスは最大問題に発展すると考えます。

  片山議員は、2025年を展望することに関して、政府のイマジネーション不足を指摘しました。発言を求められたぼくも、今こそ空想する意味と必要性を申し上げました。

  それに対し樋渡市長は、「空想は不要であり、目の前の課題を解決すべし」と断言。うむ、この日も樋渡さんは図書館改革やiPad反転授業を報告していました。いずれも難事業。目の前に横たわる大きな岩盤を打ち砕き前進している。

  その目からみれば、空想する呑気さは許されません。ぼくは空想し、樋渡さんは実現する。それでいいのかもしれません。

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