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東京都知事・舛添要一氏の憲法論

昨年、自民党の憲法改正草案を読んだとき、次のような疑問を持ったものです。

一言で、稚拙である、と。

よく練られたものではないのではないか。

これは、やっぱり、自民党の政治家が書いたものなのかなあ?

自民党としての「思い」(イデオロギー)をまとめただけのものにしか見えないし・・・。

こんなレベルのものを公の党の名前で発表して良いのだろうか?

少なくとも、わたしにも少しはわかる地方自治の章に関しては・・・。

そう思ったものでした。

この草案では、地方自治と言いながら、地方自治が無いのではないか。

地方は中央政府の下(した)? 地方自治とはたんに「行政」のことを指すの?
自民党憲法改正草案 第8章 地方自治
(地方自治の本旨)

第九十二条 地方自治は、住民の参画を基本とし、住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う。

2 住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を負う。
自民党草案で新設される第92条の2項の「住民」の項は、現行の地方自治法の「住民」をほぼそっくりコピペ(書き写した)しただけであるし・・・。

憲法を起草するって、そんなに軽いものなの?

現在の地方自治法 第2章 住民
第十条  市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民とする。

2  住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を分任する義務を負う。
自民党憲法草案 第8章 地方自治
第九十二条
住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、その負担を公平に分担する義務を負う
となれば、地方分権一括法として、1999年に大改正された現行の地方自治法との整合性をどう説明できうるのか。せっかく分権改革の進んだ地方自治を再び中央集権下に戻してしまう地方自治法の“抜本改正”も必要になってくるなあ。

憲法草案の作成者は地方自治をわかっているのだろうか、と。

ということは、他の章も、それぞれの分野を知る専門家が分析すれば、お寒い状態であるのではないか、などと。いったい、どんな人が、どのような議論の経過をたどってまとめた案なのだろうか、知りたいと思っていました。

それを根本的に調べるのはわたしの役割ではないのでやってはいませんが、以来、書店で憲法関連の出版物を目にすると立ち読みしたり、買ったりするようにはなりました。

その中の一つに、今月20日に発行されたばかりの新刊に、東京都知事に当選された舛添要一さんが昨年暮れに書かれた『憲法改正のオモテとウラ』(講談社現代新書・900円)がありました。

舛添さんは、こんな草案では憲法を変えたくても変えられないではないかという意思を表明されているのでわたしとは立ち位置は異なりますが、書いていらっしゃる内容は、わたし自身、思っていた疑問にかなり近いものがあります。

わたしは、草案の作成者は地方自治をわかっているのだろうか、と書きましたが、舛添さんは、憲法の持つ立憲主義の意味をわかっていないのではないか、と指摘されています。

「はじめに」のところに、
「(自民党憲法草案を)一読して驚いてしまった。右か左かというイデオロギーの問題以前に、憲法というものについて基本的なことを理解していない人々が書いたとしか思えなかったからである。」
と、書いて見えます。

いまから10年前の起草委員会に関わったときの議論の状況を知る立場であったことから、それと、外から見た現在の草案との違いを比較しながら検証となっています。

たとえば、こんなことも書いてあります。
自民党の政策決定過程では、たとえば、政務調査会の各部会で、そのような審議は行われ、役人や利益団体代表などの意見をよく聴取する。しかし、憲法改正の議論については、仲間の議員たちの意見の開陳のみである。元気のよい議員、雄弁な議員、時局におもねるような議員の意見が優先されがちなのである。05年の憲法改正議論のときには、首相経験者などの大物議員がそのようなポピュリズムを抑えたし、若い議員であっても、あえて大勢に異論をはさむ者がいた。その結果、慎重かつ均衡のとれた議論ができたのである。7年後の自民党では、憲法改正議論はどのように展開されたのであろうか。」(同書126ページ)。
表紙の帯に書いてある「立憲主義をわかっていない国会議員に任せて大丈夫?」。

舛添氏が学んだ東大法学部での師だった芦部信喜教授が「近代立憲主義憲法は、個人の権利・自由を確保するために国家権力を制限することを目的とする」ことだと書かれていることを引用したうえで、
「そのことをよく理解していない国会議員は、そもそもが憲法改正論議に加わる資格がない。しかし、現実には、その場の思いつき程度のことを述べる議員のなんと多いことか」同書116ページ
と述べている。
本来、憲法とは権力に歯止めをかけて、これを制限して国民の人権を守るべきものであり、そのために主権者である国民自らが制定するものであるということである。今の自民党には、そのことをよく理解していない国会議員が増えているのではなかろうか。」(同書112~113ページ)。
そのときどきの政治の勢いで、ムードで、憲法を変えるという動きに、政治は立ち止まること、抑制を働かせることが必要だとわたしは思っています。

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