記事

エセ文化人に、二度と大きな顔をさせるな!

赤木智弘の眼光紙背:第311回

「赤木さん、自爆を称揚している場合ではありません。クビが飛んでも動いてみせる、それがフリーターに与えられた自由ではないですか。」

 これは2007年当時、朝日新聞社の論壇誌『論座』誌上で僕が記した、「丸山眞男をひっぱたきたい」という文章に対して、ルポライターの鎌田慧氏が寄せた言葉である。

 この言葉に対して僕は「フリーターはクビが飛んだら死ぬしかない。地方にいれば運動に参加するだけでも金がかかり、貧乏なフリーターが動くことなどできない。社会システムの欠陥の解決を、フリーターに一方的に押し付けているに過ぎない」という趣旨のことを反論したはずだ。今から振り返れば、彼はこの時点ですでに自己責任を当然とする新自由主義の担い手であったと言えよう。

 あれから7年経って。都知事選で鎌田慧や広瀬隆ら、急進的反原発文化人が推した細川護煕は、同じく反原発を政策の1つとして叫んだ宇都宮けんじに敗北した。まぁ宇都宮けんじも、舛添要一に敗北しているのだが、それは今回の論旨に関係のないことだ。

 鎌田慧は敗北後に、朝日新聞に負け惜しみのような寄稿をしている。(*1)

 「せっかく、二人の元首相が、『原発を認めたのは無知だった。間違いだった』と公衆の面前で重大な告白をしても、宇都宮氏を推す共産、社民の陣営はかつての小泉政治を批判して聞く耳をもたず、共倒れとなった。日本の政治の未成熟さだった。」などと、自らの強引な「一元化」の失敗の責任を宇都宮支持者に押し付け、それをもって日本の政治が未成熟なのだなどと見下す、傲慢極まりない文章である。

 僕が考えるに、細川が宇都宮に負けた理由は簡単で、福祉や貧困問題を真面目に考えている人であればあるほど、反原発のために細川小泉という新自由主義の担い手たちに「勝てそうだから」と乗っかることをしなかったというだけのことである。

 実際、選挙中にも執拗に新自由主義者への一元化を迫る鎌田慧に対して、批判が寄せられたそうだ。鎌田は批判に対して「原発だけが問題ではない。他にも問題がある、福祉ををどうするのか、というのは、難癖というものです。」(*2)

 と、多くの重大な問題を「難癖」の一言で片付けるという、極めて雑な物言いで反論している。これで誰が細川を支持すると言うのだろうか。

 脱成長を唱え、格差や貧困問題を難癖呼ばわりする細川陣営を誰が支持していたのかといえば、やはり金持ちの老人たちであった。

 宇都宮がすべての年齢層で一定の支持を得ているのに対し、細川支持者は若者が少なく高齢者に多い。(*3)

そして、市区町村別のデータ(*4)(*5)を見ると、やはり港区など、平均所得の高い層が数多く住む選挙区で、細川票が宇都宮票を上回っているのが分かる。

 すでにゴールし、将来安泰の彼らにとっては、事故や戦争というハプニングで今ある資産が失われることは怖くても、若い人が安定した生活を営むことができないことなどは、どうでもいいに違いない。

 そして、そうした老人たちは、自分たちを肯定してくれる人たちに金を出す。結局、東日本大震災からこちら、急進的反原発を支えていたのは、そうした都市部の金を持った金持ちだったのだろう。

 そう考えると、鎌田慧が細川小泉という新自由主義陣営への一元化を謀った理由もよくわかる。スポンサーの老人たちは、もう福祉や貧困という再分配を問題にするような市民運動を担いたくないのである。なぜなら、再分配の是正で利益を失うのは既存の既得権益層である、老人たちなのだから。

 その代わりに老人たちが確実に逃げ切れる新自由主義を広めて、ついでに原発問題という、少なくとも向こう半世紀は解決しない問題に市民運動がかまければ、間違っても、再分配が是正されるようなイレギュラーは起こらないということだ。鎌田慧はそうしたオーダーのために奔走したに違いない。

 まぁ、オーダー云々については僕の妄想だ。

 けれども、そうでなければ「反原発」などという目標のために、新自由主義者と手を組む理由がわからない。

 思えば、鎌田慧以外の細川支持の文化人たちも、そのほとんどが年寄りばかりだった。高度経済成長で大儲けした年寄りたちに、新自由主義は心地がいいに違いない。

 こうして文化人気取りの新自由主義者たちの化けの皮は剥がれたはずなのだが、残念ながら彼らを駆逐したはずの宇都宮陣営から「反原発という主張は同じなのだからノーサイド」などという声が上がっているらしい。

 しかしそれは、自由主義者が反原発に名を借りた新自由主義者に手を差し伸べることにほかならない。それは新自由主義に異を唱えるために宇都宮に票を投じたり、支援した人たちに対する、立派な裏切り行為である。

 今唱えなければならないことは、決して反原発ではない。反貧困、反格差を達成するためには新自由主義に尻尾を振る左派文化人など不要である。彼らを正しく切り捨て、二度と傲慢な物言いをさせない事こそが、今回の選挙結果から得るべき正しい教訓なのだ。

*1:都知事選、脱原発派は敗れたのか 鎌田慧氏が寄稿(朝日新聞デジタル)http://digital.asahi.com/articles/ASG2B6482G2BULPT11J.html

*2:なぜ、脱原発候補の統一が必要なのか(ポリタス)http://politas.jp/articles/54

*3:舛添氏、高齢層から圧倒的な支持 都知事選出口調査分析(朝日新聞デジタル)http://www.asahi.com/articles/ASG294JLLG29UZPS001.html

*4:東京都-H26東京都知事選挙投開票速報 http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/h26chijisokuho/

*5:東京都知事選挙を数字で振り返る(現代生活図鑑 Insight x Inside)http://insightxinside.com/20140209-tokyo-election/

あわせて読みたい

「脱原発」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    ドラゴンボールが儲かり続ける訳

    fujipon

  2. 2

    コロナが炙り出す質低い大人たち

    毒蝮三太夫

  3. 3

    元慰安婦団体なぜ内部分裂したか

    文春オンライン

  4. 4

    ブルーインパルス飛行批判に落胆

    かさこ

  5. 5

    コロナ対策成功は事実 医師指摘

    中村ゆきつぐ

  6. 6

    元自民議員 安倍政権長く続かず

    早川忠孝

  7. 7

    上場企業レナウン倒産に業界激震

    大関暁夫

  8. 8

    コロナとN国で紅白歌合戦ピンチ

    渡邉裕二

  9. 9

    報ステ視聴率危機? テレ朝に暗雲

    女性自身

  10. 10

    ひろゆき氏がテラハ問題に言及

    ABEMA TIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。