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その戦略に必要な戦略 - 新時代のフレームワーク

企業の業績予想をしたり、経営者が事業戦略を練る際によく出てくるのが、マイケル・ポーターの5forces分析である。会社を取り巻く環境分析を「新規参入業者」「代替品」「供給業者」「顧客」「競合企業」の5つの要因に分けて分析し、総合的な競争力が、事業の長期的なROIC(投下資本に対する収益性)を決定づけるとするものである。

この理論は汎用性が高く、今でも実際の現場レベルで活用されているが、より実践的な米国のMBAなどでは、5forcesだけでは事業ごとのROICの差を説明することはできないとする議論が一般的となっている。何故ならば、5forcesは「業界の予想が可能」であり「競争環境の変化があまりない」ということを前提としたものであるからだ。

リンク先を見るここでも述べたが、我々はIT革命という大きな波の最初の段階にいる。ITのもたらす効率化のスピードは凄まじいものがあり、あらゆる業界の構造そのものが大きく変わろうとしている。このため従来型のポーターの理論だけで競争環境を分析していても、すべての要素が動的に変化しているため、正しい戦略が取れていないケースが頻繁に見られるようになってきている。

ボスコンが提唱した概念で、米国のMBAでも学ぶ最新の経営学では、この欠点を補うために「業界の予想が可能かどうか」「競争環境の変動が大きいか小さいか」という2つの軸を加える。従来のポーターの世界はこの4つのマトリックスのうちの「Classical(旧来型)」に位置する。しかし、2つの軸を追加して考えると、他に3つの世界があることがわかる。すなわち「Adaptive(適応型)」「shaping(構想型)」「Visionary(ビジョン型)」である。
Adaptiveは専門小売などがそれにあたる。業界そのものの予想は困難であり、競争環境の変化も小さい。新たな変化が起きた時にいち早く戦略を変更し、適応できた者が勝利する。Shapingはネット系企業が代表例である。業界の予想は困難であり、一方で競争環境はどんどん変わっていく。つまり、自力で業界そのものの構造を変えていく戦略が求められる。

Visionaryは一時期流行ったビジョナリーカンパニーである。業界の予想ができるエリアで戦い、かつ競争環境が変化する。特定の競争環境を所与とせず、長期的なゴールを目指して組織をつくっていく。自社の利益を追及するためなら時に破壊的な戦略も取り得る会社が成功する。

このように、世界は大きく変わっており、マイケル・ポーターの定義するような、予想ができて競争環境の変化のない世界は昔話となっている。自分の組織がこのマトリックスのどこにあるかを認識してから競争分析や戦略立案を行うと、結果が出やすい。その戦略は正しい環境認識のもとに作成させているか?今一度確認するとよいだろう。

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