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メルマガから自社サイトに誘導しない常識はずれなECサイト「Huckberry」

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世の男性には、多かれ少なかれ冒険をしたいという願望があるのではないだろうか。

旅行やスポーツをすることでそういった願望を満たしている人もいるだろうし、あるいは映画、本、ゲームのようなメディアを通して冒険を仮想体験している人も多いだろう。男性読者のみなさんはどうだろうか。

今回は、冒険心を持つ一般男性たちを対象にしたキュレーション型ECサイト「Huckberry」をご紹介しよう。

同サイトは、メールマガジンとブログによるコンテンツマーケティングで男性雑誌のような切り口のストーリーを展開し、男性たちのささやかな冒険心を満たしてくれるのが大きな特長だ。

また、商品を買う、買わないに関わらず、ファンに価値を提供することを目的としており、サイトや商品、ブランドを宣伝するよりも、まったくサイトと関係がなくとも面白いブログやアイテムを紹介するスタンスも人気の秘密となっている。

その結果、13万人のメールマガジンの購読者を獲得。またメルマガの開封率27〜28%、クリック率4〜5%と、読者から親しまれるコンテンツを展開している。

その成果の高さから「ECサイトの未来の姿」と評価するさえあるHuckberry。同サイトの人気の秘密に迫ってみよう。

男性向けEC市場の隙間とは?

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Huckberryの創業者は、サンフランシスコの投資銀行に勤めていたAndy Forch(写真左、以下フォーチ)氏とRichard Greiner(写真右、以下グレイナー)氏。両氏は男性向けのECサイトを見ていて、あることに気がついた。

それは、男性向けECサイトはおおまかに言って2つの種類に分けられるということ。

一方は、富裕層向けの高価な製品を取り扱うECサイト。もう一方は、専門性を追求した製品を販売する、たとえば、エベレストに登るのに必要なテントを取り扱うようなサイトだ。

だが、世の中には富裕層向けの高級品にも、エベレスト登山用のテントにも縁が無い男性はたくさんいる。

フォーチ氏とグレイナー氏は自転車で出勤したり、週末にハイキングに出かけるような活動的な男性だったが、自分たちには高価な製品を取り扱うECサイトも専門性の高いECサイトも合わない、と感じていた。

「エベレスト登山に使うテントはいらない。僕たちに必要なのは、ちょっとした旅行で使える、機能的でデザインのいいテントなんだ。でも、僕たちみたいな男性を対象にした、気軽に使えるようなECサイトはほとんどなかったんだよ」(グレイナー氏)

かねてより起業したいと考えていたフォーチ氏とグレイナー氏にとって、市場の隙間に気づいたことは、業種を選択する上で大きなヒントとなった。

2011年4月には、2人でそれぞれ2万ドル(約200万円)を個人的に出資し、外部からの資金調達を一切することなくHuckberryを創業。グレイナー氏は起業への想いについてこのように語っている。

「僕たちは尊敬する人と一緒に、自分たちのペースで、利用者を友だちに変えるような感じでHuckberryを育てたいんだ。自分たちの誇れる最高の仕事をし、最高の製品を扱えるようにね」

自分たちがオススメするものしか売らない

Huckberryは基本的にはキュレーション型ECサイトとして、期間限定のフラッシュセール方式や、特に期限を設けない方式で、スタッフが厳選した商品を販売している。

サイトで取り扱っている商品は幅広く、常時販売されている商品のカテゴリには、時計、デニム、身だしなみ用品、日用品、お出かけ用品、Tシャツなどが並ぶ。

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品揃えの豊富さも同サイトの魅力のひとつだが、それ以上にユーザーやファンを惹き付けているのが、商品説明ページのユニークな内容だ。一例として、同サイトで扱っているブランドのひとつ「West America」のブランドと商品の紹介文を見てみよう。

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「とてつもないスケールで、製品テストを行っているブランドの話をしよう。West Americaは、自前のシャツやベスト、ジャケットをまとってダートバイクに乗り、ブリティッシュコロンビアのウィスラーからパタゴニアまで往復2万マイルの旅をして、自分たちが作った製品の品質テストをしているんだ」(ブランドの説明文)

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「この製品は、機能性と品質に優れ、時代を超えた国産製品を作るという使命を果たした結果生まれた。このジャケットはたき火の煙にあたっても、バイクに乗ってもこたえることはない。長く使えば使うほど、あなたは品質の確かさを理解するだろう。筋書きのない、壮大な冒険のお供に」(商品の説明文)

同サイトでは、何枚もの写真と独特の切り口の長めの文章を組み合わせて、商品やブランドの説明を行い、雑誌のようなテイストの世界を作りだしている。この方針は同社のブログ「The Journal」でも貫かれているようだ。

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ブログでは商品やブランドの紹介を行うこともあるが、読者を楽しませることを最優先としているため、同サイトで扱っているブランドやアイテムとまったく関係のない題材を扱った記事も多い。

ちょっと昔の話になるが、2009年7月の「Hank Bought A Bus(ハンクはバスを買った)」の記事で紹介されているのは、改造したスクールバスに乗って米国中を旅する学生の話だ。

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記事では、大学のプロジェクトの一環として9000ドル(約90万円)のスクールバスを家のように改造した学生のハンクが、このバスに乗って米国中を旅をする。途中で彼の家族や友人、ヒッチハイカーなどがバスに乗り込んだり、サンフランシスコで車両停止を求められるハプニングにあったり、といったストーリーの断片が色とりどりの写真とともに紹介される。

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商品やブランドの説明文にも通じる文章や写真の雰囲気は、「ナショナルジオグラフィック」誌の記事のような感じだろうか。

ブランドイメージの構築やコマーシャル的な要素は乏しく、コンテンツマーケティングとしては異色の試みと言える。フォーチ氏らと交友を持つ人物が、このように言及しているほどだ。

「Huckberryは商品を売るためにコンテンツを作っているんじゃない。自分たちが求めているコンテンツを作る資金の調達手段として商品を売っているんだよ」

一方グレイナー氏は、自分たちの利益だけを考えれば、もっと他の方法で利用者にお金を使ってもらう工夫ができるだろうが、Huckberryではそれよりも顧客と深い交流をしたいのだと語る。

「僕たちのお客は、商品を買う買わないと関係なく、僕たちのコンテンツが好きなんだ。財布の中身より、心の中身を分けてもらう。長期的な関係を築くほうが確実に利益になるんだよ。僕たちは決して、小手先の技や値引きは使わない」

「コンテンツを中心としたWEBメディア + ECサイト」という形

Huckberryのコンテンツマーケティングへは、良質なWEBメディア発信にかなり重きが置かれている。ECサイトはおまけ、とさえ思えるほどだ。その根底には、より深いところでファンとつながり、彼らを楽しませたい、という想いがある。

同サイトはメールマガジンの配信も行っているが、自社サイトへ読者を誘導するという定石は用いず、スタッフが見つけたおすすめサイトへリンクを張っている。Huckberryの利益に直接関連しなくとも、面白いと思うものであれば何でも紹介する、というスタンスを取っているのだ。

こうした方針を採る同サイトのメールマガジンの開封率は、競合と比べて5〜10倍にあたる27〜28%もあるという。良質なコンテンツを作る事を最優先し、ユーザーと信頼関係を築いてきた結果だろう。一見遠回りに見える「面白いコンテンツ作りを最優先にする」というやり方が、利益に結びついている一例だ。

「僕たちは、ECサイト運営のプロに嫌われるような決定をいつもしているんだ」(グレイナー氏)

あなたは常識・定石を捨てて、顧客と向き合うことができるだろうか?定石にとらわれず、顧客の満足を徹底的に追求する。言葉では簡単だが、これは極めて難しい行動だ。

まずは、一つ一つの行動に「なぜそうするのか?」という疑問を持つことから始めてみよう。
想像もしなかった全く新しいアプローチが見つかるはずだ。

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