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雪害、自治体・自衛隊が災害派遣を躊躇ったワケ

歴史的な大雪による災害に関連して、自衛隊の災害派遣について、自衛隊自身や派遣要請をする自治体の対応について、批判が起こっています。
大雪:埼玉県が自衛隊派遣断る 秩父市が要請」(毎日新聞14年2月18日)

この雪害に関して、世論の大勢は、積極的に自衛隊を投入すべきだという考えのようです。
冒頭リンクの記事などは、毎日新聞なのに、災害派遣を躊躇った埼玉県を悪者扱いしているくらいです。
また、適当なニュースが見つかりませんでしたが、山梨の被災でも、同様の批判が起こっています。

世論の怒りは、サッサと派遣を要請しない県は、天ぷらを食べている安倍総理と同じでケシカラン、とでも言いたい様子ですが、自治体の防災担当者が派遣要請を躊躇した事には、それなりの理由があります。

山梨などは、民主党の輿石元幹事長を国会に送り込んでいる土地であるため、日教組などからの吊し上げを恐れ、派遣要請を躊躇したという側面も、確かにあるでしょう。

しかし、そう言った考えが、過去の日本では主流であったため、自衛隊が災害派遣を行うに当たっては、災害派遣の3要件を満たしている必要があるとされています。
その3要件とは、「公共性」「非代替性」「緊急性」です。
関連過去記事:「ハエ駆除における、災害派遣3要件の適用」「自衛隊による防疫活動

佐藤議員は、今回の雪害が3要件を満たしていると言っています。
リンク先を見る
自治体、それに自衛隊も、実際に派遣で出ている訳ですから、最終的には、満たしていると判断したはずです。

ですが、私から見ても、3要件を満たすか否かは、かなり怪しい感じがします。
死者も出ている状況ですから、「緊急性」は、さほど問題ありません。除雪を行うのが公道であれば、「公共性」も問題ないでしょう。
しかし、「非代替性」は、大いに問題があります。

「非代替性」とは、過去の記事でも書いたとおり、他の組織等の能力では十分な効果が得られない、という条件です。
その根幹には、災害派遣によって”民業を圧迫”してはならないという、公務全般の原則が関わっています。

この「非代替性」が怪しいというのは、もっと大量の降雪がある雪国を見れば明らかです。
東北や北陸自動車道などは、大雪になると頻繁に通行止めになります。今回の大雪を遙かに上回る降雪が頻繁に発生している訳ですが、災害派遣が要請されることはありません。自治体が、土建業者に発注して除雪を行っているからです。
埼玉でも山梨でも、災害派遣を要請するのではなく、こうした業者に発注することが、本来のスジなわけです。また、そうしないと降雪地の住民は除雪のために税金を払うものの、埼玉や山梨では国民全体が税金を払っている自衛隊にやらせるという不公平が生じることにもなります。

今回、この「非代替性」要件を満たしていると判断された理由は、埼玉や山梨では、急遽業者に発注しようにも、受注できる業者が不足していたため、”代替困難”だったためでしょう。
ですが、要件を満たすか否か、怪しい状況だった事は間違いありません。

しかし、近年の災害派遣では、この3要件を満たすか否か怪しい状況でありながら、派遣が実施されるケースが増えています。
過去記事で書いたハエ駆除もそうですし、新潟地震の際の被害後家屋の除雪作業などは、公共の利益ではなく、個人の利益のために行った訳ですので、「非代替性」だけでなく、「公共性」さえも怪しい派遣でした。
また、離島ではあたりまえの公共サービスの一つにもなってしまっている急患空輸などは、かなり以前から疑問視されています。(何せドクターヘリを持っている自治体であれば、当然そちらが行うべき業務です)

これを、間違っているなどと言うつもりはありません。
自衛隊をどう使うかは、主権者である国民が決めれば良いことですから、世論が派遣を支持するなら問題ありません。
そもそも、この3要件を必要とすること自体も、以前は朝日や毎日と言った左派系マスコミが、自衛隊の災害派遣を国民の目を慣らさせるための手段だと言って糾弾していたからです。
その批判を逃れるために、言うなれば、仕方なく派遣したというイイワケとするために作られたのが3要件だとも言えます。

今回の災害で、世論は明確に派遣を支持していました。
今後は、この3要件が怪しいケースでも、更に災害派遣が行われるケースが増えるでしょう。

自衛隊とすれば、例え3要件が怪しくても、要請がさえあれば、要請があったから派遣したと言い訳ができます。
それだけに、自治体の防災担当者は、更に勉強をして、左派系マスコミや自治労にも的確に反論できる体制を整える必要があるでしょう。

また、そのためにも、自治体の防災担当部局への退職自衛官の採用をもっと積極的に進めるべきだと思います。
今回問題になった埼玉と山梨は、共に県庁に1名の退職自衛官を採用していますが、迅速な派遣を行うためには力不足でした。
退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況

しかし、その一方で、やはり「非代替性」については、留意されることが重要だと思います。
今回のケースでは土建業者、またハエ駆除であれば害虫駆除会社などは、「なんで発注してくれないんだ!」と思っていたかもしれません。
また、ゲスな勘ぐりをすれば、今回要請に積極的だった自治体は、あと1ヶ月ちょっと分しか残っていない今年度予算が惜しいため、自衛隊をタダで使おうと思った可能性もあります。

ここからは蛇足です。
ここで言及した災害派遣の3要件の出典、正直に言って記憶があいまいです。
自衛隊の内部文書であり、災害派遣の虎の巻と呼ばれる「災害派遣の参考」には、これでもかという程書かれていたことは覚えているのですが、大元を改めて調べて見ましたが見つかりません。
多分、国会答弁か何かだと思うのですが……
なお、「災害派遣の参考」は、確か表紙が青かったため青本と呼んでました。しかし、こちらのサイトに出ている公開された資料では、表紙が青くないです。(変わったのか?)

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