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2012年の末に紙版の廃止を決めた『Newsweek』。80年の歴史を持つニュース雑誌の決断は、デジタル時代を象徴する出来事として語られました。しかしそれから1年後、『Newsweek』は紙媒体を復活させることを宣言。紙とウェブの二刀流体制をつくっていきます。
「これからはウェブだ」という時代の風潮に逆らうように、紙媒体を新たに始めるウェブメディアが増えているように思います。
昨年11月、アメリカの政治メディアPOLITICOは、紙媒体『POLITICO MAGAZINE』を発行。17年ウェブでやってきた音楽マガジンPitchfork.comも、昨年『The Pitchfork Review』という雑誌を創刊しました。以前紹介したThe Croydon Citizenのフリーマガジンも、そのひとつと言えるでしょう。
画像を見る▲『POLITICO MAGAZINE』
もちろん紙からウェブへ移行しているメディアもあります。歴史あるファッション雑誌『Herper’s Magazine』はiOSアプリを開始。『NEW YORK MAGAZINE』は昨年、紙の発行頻度を減らしてウェブに力を入れていくことを決めました。『i-D』も紙の雑誌は続けつつ、ウェブにも力を入れています。
このように紙メディアはウェブを始め、ウェブメディアは紙を始め、1つのメディアが紙とウェブの両方を持つことが当たり前になっていくのではないかと思います。
理由は紙とウェブのどちらにも優れたところがあるから。ウェブは速報ニュース、動画や音声といったマルチメディア、そして読者とのコミュニケーションの場として、紙はじっくり読みたい長い特集、デザイン性や紙という物質性を活かしたものをつくる場として、これから上手な使い分けがより進みそうです。
たとえば『WIRED』は、この紙とウェブの使い分けがかなり進んでいるんじゃないかと個人的に思っています。紙の雑誌は特集中心でデザインがかっこよく、ウェブでは日々ニュースを発信し、動画を使った伝え方もしているからです。
また異なる媒体を持つことは読者層を広げ、収入源を分散させるというビジネスの意味でも有効なのでしょう。『5年後、メディアは稼げるか』によると、アメリカの老舗雑誌『the Atlantic』は、紙とデジタルの二刀流を始めてから両方の広告収入を伸ばしているそう。
新聞はずいぶん前からオンラインでもニュースを発信していますが、NYTのSnow Fallやthe guardianのインタラクティブ・マップのような、ウェブでしかできない情報発信の仕方はまだまだ工夫できるところがあると思っています。以前から書いているように、紙の新聞はデザイン性をもっと意識してもいいかもしれません。
紙とウェブはお互いを補い合い、共存するもの。それぞれの媒体で、媒体の魅力を活かすようなコンテンツがたくさん出てくればといいなと思いますし、出てくるべきだとも思っています。
(cf. Los Angeles Times, Talking New Media)
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- 2014年02月19日 11:59