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「モンスター」は差別表現か

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 ハロウィンの朝、8歳の娘が魔女の帽子をかぶって、ぼくのベッドまであいさつに来てくれました。皆さんのお宅にも、小さな精霊や魔女が遊びに来たでしょうか。

 ハロウィンといえばモンスターのコスプレ。そして、モンスターといえば、思い出すのは『アダムス・ファミリー』です。(ぼくの場合)

 『アダムス・ファミリー』は、モンスターの一家がふつーの市民生活を営もうとしてどたばたトラブルを引き起こしていくコメディ。原作はチャールズ・アダムスによる古いコミックなのですが、1960年代初めにテレビドラマ化されると人気が沸騰し、1970年代にはアニメ版が放映され、そして 1991年に『アダムス・ファミリー』、1993年に続編『アダムス・ファミリー2』が映画化されました(以下、『AF』『AF2』)。

 映画版は登場人物が天然ボケで痛烈なブラックジョークをかましていくさまを愉快に描いていて、世界中から好意的な評価を受けました。日本でも、ホンダの戦略車「オデッセイ」のコマーシャルに起用されるなど、一時はブームと呼べるほどの大ヒットを記録しました。

 でも、1991年に初作が映画化されると、米国では人種差別や障害者差別と闘っている人たちの間で議論が巻き起こりました。一方にいわく、「異民族や身体障害者への偏見と差別を助長する映画だ」と。それに対して、「いや、むしろそういう偏見と差別を逆手にとって嗤う高度な風刺なんだ」と。

 というのも、『AF』にかぎったことではないのですが、もともと「モンスター」というのは異民族や身体障害者、高齢者をゆがめてイメージ化したものが多いのです。クル病とせむし男の関係がわかりやすいかな。『AF』にもせむし男が登場しますね。

 あるいは、吸血鬼ドラキュラもそうです。この物語が生み出された当時のイギリスでは、植民地化による異民族との交流の増大にともなって、外国恐怖症(ゼノフォビア)が蔓延していました。同時に、ユダヤ資本の拡張に対して反発が広がっていた時期でもあります。『ドラキュラ』という作品は、ゼノフォビアとユダヤ人恐怖とが合体することで生みだされた非常に差別性の濃い物語なのですね。(詳しくは丹治愛『ドラキュラの世紀末―ビクトリア朝外国恐怖症の文化研究』東京大学出版会を参照のこと)。

 ようするに、異民族や身体障害者に対する嫌悪感や恐怖感が「モンスター」を生み出したという面もあるということです。『AF』の登場人物には一人として金髪碧眼のWASPらしい姿を持つ者はいません。みんな黒髪のオリエンタルな容貌をしています。 そう考えると、『AF』に対する評価も変わってくると思いませんか。

 そして、『AF』が公開されると、米国では実際に以下のような議論が起こったわけです。
あの映画は、『フリークス』のように、障害者や異民族を不気味な存在として見世物視している。差別や偏見を助長するおそれがある。

いや、『AF』では主人公たちを恐怖の対象として描いているわけではなく、むしろユニークかつ知的にトラブルを解決するさまは痛快なヒーロー/ヒロインとして好意的にとらえられているじゃないか。

たとえ好意的に描かれていようとも、不気味なステレオタイプをそのまま使っていれば偏見を垂れ流しているのと一緒だ。

というより、「不気味なステレオタイプ」を怖がることこそナンセンスなんだという映画でしょう?

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