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- 2014年02月17日 23:59
メイカーズ・ムーブメント:ハードウェア改革がもたらす21世紀の「新産業革命」
米国オバマ大統領の3Dプリンターへの言及や、『ロングテール』等の著作で有名なクリス・アンダーソンによる『メイカーズ』の出版を背景に、世界中で3Dプリンターを始めとしたメイカーズ・ムーブメントが起こっている。一方で、それが何故「新産業革命」を起こすと言われているかはあまり知られていない。
takram design engineering 代表の田川欣哉氏は、メイカーズ・ムーブメントを3Dプリンターにのみ着目して解釈すると、その本質を見誤ると言う。メイカーズ・ムーブメントという用語自体は「個人でのモノづくり 」を意味し、回路設計やソフトウェア設計等も含む広い概念だからだ。また、PCと繋がった工作機械で、様々な形状の物を簡単に製造することをデジタル・ファブリケーションと言うが、3Dプリンターはデジタル・ファブリケーターの一種類に過ぎないのだ。
ITと密接な関わりのあるデジタル・ファブリケーションがハードウェア産業にもたらす影響は極めて大きい。コストや環境整備などの理由で変革の難しかった製造業の在り方を、根本的かつダイナミックに変化させることができる可能性を秘めているからだ。以下、メーカーズ・ブームメントを分析しながら、今後起こり得る変化を田川氏が解説する。
田川氏は、ムーブメントを「イノベーション領域のシフト」・「ビジネスの破壊的進化」・「人材・社会の進化」・「加工技術の非線形的な進化」という4つの異なる文脈に整理する。
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この20年合間は、ハードウェアの重要性が低下していく流れだったと言い換えることができる。しかし、近年になってハードウェア・エレクトロニクス・ソフトウェア・ネットワーク・サービス全てを包含するビジネスがイノベーションの主戦場になってきた。Appleはその代表例であるが、ハードウェアに関与していなかったGoogleも自動車やロボット等に力を入れ始め、「ITのハードウェア領域への滲み出し」が顕著になってきた。
デジタル・ファブリケーションに期待されているのが、製造業分野で新しいビジネスへのチャレンジを多く生み出す事だ。3Dプリンター等を使えば、低コストで実験的に生産を開始出来るので、小規模からのリーンスタートアップが活発になると考えられている。
3Dプリンター等のデジタル・ファブリケーターの価格は劇的に低下を続けている。。それに上記のようなシェアやフリーの文化が加わることでオープン・イノベーションが個人レベルにまで浸透していくだろう。コンピュータも最初は個人が使える価格ではなかったが、急速な技術進歩によって企業から個人へと広がり、イノベーションが加速した。同様の事がデジタル・ファブリケーションでも起こる事が期待されているのだ。
さらに、少人数・少額投資でハードウェアを少量生産するスタートアップが爆発的に増加する可能性がある。激しい競争と淘汰によってイノベーションが起こりやすくなり、大手企業も将来性のあるスタートアップを買収する事によって産業を支えるといったサイクルも有り得るのだ。
技術の進歩により、今まで難しいと考えられていたハードウェア産業の在り方そのものが変わろうとしている。人類にとって非常に大きな意味を持つこの「新産業改革」は、今度ビジネスや生活をどのように変えていくのだろうか。
takram design engineering 代表の田川欣哉氏は、メイカーズ・ムーブメントを3Dプリンターにのみ着目して解釈すると、その本質を見誤ると言う。メイカーズ・ムーブメントという用語自体は「個人でのモノづくり 」を意味し、回路設計やソフトウェア設計等も含む広い概念だからだ。また、PCと繋がった工作機械で、様々な形状の物を簡単に製造することをデジタル・ファブリケーションと言うが、3Dプリンターはデジタル・ファブリケーターの一種類に過ぎないのだ。
ITと密接な関わりのあるデジタル・ファブリケーションがハードウェア産業にもたらす影響は極めて大きい。コストや環境整備などの理由で変革の難しかった製造業の在り方を、根本的かつダイナミックに変化させることができる可能性を秘めているからだ。以下、メーカーズ・ブームメントを分析しながら、今後起こり得る変化を田川氏が解説する。
田川氏は、ムーブメントを「イノベーション領域のシフト」・「ビジネスの破壊的進化」・「人材・社会の進化」・「加工技術の非線形的な進化」という4つの異なる文脈に整理する。
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●顕著な「ITのハードウェア領域への滲み出し」:ITイノベーションがハードウェア領域に与える影響
時代によってイノベーションを先導する産業領域は変化し続けている。第一次大戦以前は、船や大砲等ハードウェアを効率的に製造する技術を持った英国等の欧州列強が強かった。第二次大戦以降1980年代までの間は、エレクトロニクスが台頭し、日本の製造業を始めとしてハードウェアとエレクトロニクスの複合産業が主流になった。1990年代になると、マイクロソフトやインテル等がソフトウェアを中心とした新しい産業を切り拓き、ハードウェアとエレクトロニクスを陳腐化させた。2000年代になると、GoogleやYahoo!等ソフトウェア・ネットワーク・サービスを得意とする企業が大きな勢力を持つようになる。この20年合間は、ハードウェアの重要性が低下していく流れだったと言い換えることができる。しかし、近年になってハードウェア・エレクトロニクス・ソフトウェア・ネットワーク・サービス全てを包含するビジネスがイノベーションの主戦場になってきた。Appleはその代表例であるが、ハードウェアに関与していなかったGoogleも自動車やロボット等に力を入れ始め、「ITのハードウェア領域への滲み出し」が顕著になってきた。
●デジタル・ファブリケーションが今まで難しかった製造業活発化を実現
ベンチャー企業の活発なビジネス参入を促し、大小様々なアイデアが市場で試される土壌があり、それがイノベーションの棚どことなっているからだ。一方でハードウェア産業では新規事業立ち上げのコストが極めて大きい事から、新しい仮説が実際に市場で試される機会が少ない。結果としてビジネスの多様性が低くなり、破壊的イノベーションが起きにくいのだ。デジタル・ファブリケーションに期待されているのが、製造業分野で新しいビジネスへのチャレンジを多く生み出す事だ。3Dプリンター等を使えば、低コストで実験的に生産を開始出来るので、小規模からのリーンスタートアップが活発になると考えられている。
●フリーとシェアの文化がパーソナル・ファブリケーターを生む
デジタル・ファブリケーションの技術自体が個人によるモノづくりへの障壁を下げるだけでなく、それをサポートするコミュニティも存在する。その中心的存在が『Make:』と「FabLab(ファブラボ)」施設だ。Make:は個人レベルでモノづくりを行う人が繋がりを作る上で重要な役割を担う雑誌である。FabLabはデジタル・ファブリケーションを備えた施設で、ここでは新しいアイデアを持つ人が実際に「プリント」する事が出来る。3Dプリンター等のデジタル・ファブリケーターの価格は劇的に低下を続けている。。それに上記のようなシェアやフリーの文化が加わることでオープン・イノベーションが個人レベルにまで浸透していくだろう。コンピュータも最初は個人が使える価格ではなかったが、急速な技術進歩によって企業から個人へと広がり、イノベーションが加速した。同様の事がデジタル・ファブリケーションでも起こる事が期待されているのだ。
●「削る」加工から「盛る」加工への変化がモノづくりへの敷居を下げる
従来の加工技術は、切削による「削り出し」や射出成型といった「型抜き」が主流だが、これらを扱うには廃棄物処理なども必要となるため、個人で運用するには難易度が高い。一方で3Dプリンターは、操作やメンテナンスが従来の工作機械に比べて容易であるため、個人での運用も可能なのだ。●メイカーズ・ムーブメントとデジタル・ファブリケーションの進歩が「新産業革命」
今後、デジタル・ファブリケーション技術の進歩に伴い、製造業を支える物流システムに抜本的な変革が起こる可能性を田川氏は指摘する。例えば現在、住宅・工場設備等の設備交換部品については、メーカーが部品を在庫として抱え、それを長距離物流で各地に輸送している。例えば、大規模なデジタル・ファブリケーション工場を各地に設置し、メーカーからデータを受け取って部品を3Dプリントし、最短距離で納入先に輸送するビジネスが立ち上がれば、長距離物流や在庫管理をまとめて中抜き出来る可能性がある。単一の製品に特化した製造ラインや在庫を持たず、少量多品種を柔軟に随時生産する汎用製造工場が増えてくる可能性もある。さらに、少人数・少額投資でハードウェアを少量生産するスタートアップが爆発的に増加する可能性がある。激しい競争と淘汰によってイノベーションが起こりやすくなり、大手企業も将来性のあるスタートアップを買収する事によって産業を支えるといったサイクルも有り得るのだ。
技術の進歩により、今まで難しいと考えられていたハードウェア産業の在り方そのものが変わろうとしている。人類にとって非常に大きな意味を持つこの「新産業改革」は、今度ビジネスや生活をどのように変えていくのだろうか。
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