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- 2014年02月15日 23:48
気が付けば「フラジャイル・ジャパン」~Bye-Bye Abenomics
「14日の東京株式市場で日経平均株価は続落し、前週末比で149円38銭安となった。週間ベースの下落は2014年の取引開始以来6週連続。6週以上連続で下落するのは、2012年4月第1週~5月第5週以来となる」(14日付日経電子版「日経平均、年初から6週連続下落 12年4~5月以来 利益確定売りなど膨らむ」)
NISAがスタートし、「投資魅力の高い400銘柄で構成する」(日本経済新聞)新たな株価指数「JPX日経インデックス400」に連動する投資信託が設定されたことなどで株式投信の資金流出入額が1兆3063億円の流入超と、2013年5月以来8カ月ぶりに1兆円を超えるなか、日経平均株価は民主党野田政権以来の6週連続の下落を記録、Abenomics の神通力が失われた格好となりました。
日経平均株価が6週連続下落を記録するのを尻目に、14日の欧米の株式市場は堅調に推移し、米国S&P 500は前日比0.5%上昇、「週間では2.3%高と今年に入って最大の上げ」(Bloomberg)を記録、欧州株式相場も「指標のストックス欧州600指数は週間ベースで年初来最大の上げ」(Bloomberg)となりました。2013年に50%超の上昇を示し、先進国の株式市場を牽引してきた日本株は、2014年に入り失速、蚊帳の外に置かれ始めています。
14日時点での2013年末比での世界主要市場の騰落率をみると、日経平均株価は▲12.2%と、NYダウの▲2.1%、英FT100の▲1.0%、独DAX △1.2%はもとより、上海 △0.9%、インド▲3.7%、ブラジル▲6.4%、ロシア▲6.9%といった、BRICs各国にも、さらには「フラジャイル5」と呼ばれる「脆弱な新興国」にも大きく後れをとっています。
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2013年、外国人投資家は日本株を15兆1196億円買い越しました。その外国人投資家は、まるで、日本でNISAや「JPX日経インデックス400」が登場するのを待っていたかのように、安倍総理が大納会で「来年も日本株は買いです!」と高らかに宣言したのを境に、1兆1696億円の売り越しに転じて来ました。奇しくも、2014年1月の外国人投資家の月間売り越し額は、株式投信への資金流出入学がほぼ一致しています。
「米国の金融緩和縮小や中国の景気減速懸念に伴い一時高まった新興国不安はひとまず後退している」(14日付日本経済新聞 「拭えぬ新興国不安」)
アルゼンチン発の新興国不安が一旦おさまりを見せ、イエレン新FRB議長が「バーナンキ路線を踏襲する」ことを強調して議会証言を無難に乗り切り、世界の金融市場が落ち着きを見せる中、日本の株式市場は明らかに変調を来しています。
「経常赤字国は国内物価が国際商品市況の動向に左右されやすく、通貨安が進めば輸入物価の上昇でインフレ圧力が強まる。輸出産業が少なく、通貨安の恩恵も受け難い」(14日付日本経済新聞 「拭えぬ新興国不安」)
日本経済新聞は、記事の中でこのような解説を加えています。日本の2013年の経常収支は、統計が比較できる1985年以降では最少を記録したものの、3兆3061億の黒字でした。しかし、年間では「経常黒字国」の地位を保ったものの、月間ベースでみると、昨年12月まで3カ月連続で、「経常赤字国」に転落して来ており、この点においては「フラジャイル5」各国と同類項になりつつあります。
「インフレの兆候が顕著だ。通貨安で輸入物価が上がれば、物価上昇圧力が強まる」(14日付日本経済新聞「時事解説 揺れる新興国経済」)
14日付の日本経済新聞は「財政・金融政策にジレンマ」と題して、新興国経済が抱える課題について、「通貨安に伴う物価上昇」を挙げています。インフレ克服が必要な多くの新興国と、デフ脱却を目指す日本を同一に論じることは出来ませんが、「通貨安に伴う物価上昇」という状況が日本にも当てはまることは事実です。
「問われるのは新興国の財政・金融政策の質だ。最近もアルゼンチンはマネタリーベース(資金供給量)の急膨張、トルコはインフレ目標の甘い設定など、政策の拙さが危機を深めた面がある」(同)
マネタリーベースの急膨張によって通貨切り下げを余儀なくされたアルゼンチンに対して、「インフレ目標の甘い設定」に基づいて政策的にマネタリーベースを急膨張させることで通貨安を演出して来た日本。経済状況は異なるものの、国名を伏せてこの記事を読むと、日本についての論評だと思ってしまいかねないほど、日本は新興国との共通点は増えて来ています。
極めつけは「輸出産業が少なく、通貨安の恩恵も受け難い」(14日付日本経済新聞 「拭えぬ新興国不安」)という部分です。
先月下旬のアルゼンチン通貨危機に端を発した新興国発の金融市場の混乱が、予想以上に早く落ち着きを見せ始めたのは、多くの新興国が変動相場制に移行しており、「自国通貨下落による輸出増加とそれに伴う貿易収支赤字の縮小効果が見込まれる」という見方が強かったことも要因です。
「2013年の経常黒字が3年連続で縮小し、過去最少となった背景には、日本の産業構造が変化し、円安でも貿易赤字に歯止めがかからなくなってきたことがある。・・・(中略)… 一方、日本企業の現地生産が進んだことや、中国など新興国の製品との競争が激しくなり、輸出数量は伸び悩んだ」(10日付日経電子版「円安でも輸出低迷の誤算、『空洞化』鮮明」)
「自国通貨下落による輸出増加とそれに伴う貿易収支赤字の縮小効果が見込まれる」という見方がある中で、2013年に20%以上円安が進んだにも関らず「輸出数量」が伸び悩み、「経常赤字国」陥落の危機に直面し始めた日本。「現地生産拡大」という「産業構造の変化」が進んだことで、日本が「輸出産業が少なく、通貨安の恩恵も受け難い国」になって来ていることが露呈して来ています。
「通貨安」「輸入物価上昇」という、「フラジャイル5」と同じ経済状況のなかで、「輸出産業が少なく、通貨安の恩恵も受け難い国」であることを露呈し始めた日本。国内には、「日銀の追加緩和」に対する期待が根強く残っていますが、「通貨下落による輸出増加とそれに伴う貿易収支赤字縮小効果」があることを早急に示せなければ、日本が世界の投資家の目に「フラジャイル・ジャパン」と映っても仕方がありません。
「大胆な金融緩和」によって「円安・株高」を演出し、世界の注目を浴びたアベノミクス。その前提にあった「通貨下落による輸出増加とそれに伴う貿易収支赤字縮小効果」が幻であることが露呈してしまえば、日銀による追加緩和実施に対する期待も、実施された場合の効果に対する期待も膨らむことはないと考えておいた方が賢明かもしれません。
安倍総理が、PDCAサイクルに従ってアベノミクスをマネジメントすることを怠り、経済状況の変化に目を向けずに盲目的に同じ政策を推し進め「Buy My Abenomics!」と叫び続けるとしたら、「Bye-Bye Abenomics」となるまで、それほど時間が掛からないかもしれません。
NISAがスタートし、「投資魅力の高い400銘柄で構成する」(日本経済新聞)新たな株価指数「JPX日経インデックス400」に連動する投資信託が設定されたことなどで株式投信の資金流出入額が1兆3063億円の流入超と、2013年5月以来8カ月ぶりに1兆円を超えるなか、日経平均株価は民主党野田政権以来の6週連続の下落を記録、Abenomics の神通力が失われた格好となりました。
日経平均株価が6週連続下落を記録するのを尻目に、14日の欧米の株式市場は堅調に推移し、米国S&P 500は前日比0.5%上昇、「週間では2.3%高と今年に入って最大の上げ」(Bloomberg)を記録、欧州株式相場も「指標のストックス欧州600指数は週間ベースで年初来最大の上げ」(Bloomberg)となりました。2013年に50%超の上昇を示し、先進国の株式市場を牽引してきた日本株は、2014年に入り失速、蚊帳の外に置かれ始めています。
14日時点での2013年末比での世界主要市場の騰落率をみると、日経平均株価は▲12.2%と、NYダウの▲2.1%、英FT100の▲1.0%、独DAX △1.2%はもとより、上海 △0.9%、インド▲3.7%、ブラジル▲6.4%、ロシア▲6.9%といった、BRICs各国にも、さらには「フラジャイル5」と呼ばれる「脆弱な新興国」にも大きく後れをとっています。
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2013年、外国人投資家は日本株を15兆1196億円買い越しました。その外国人投資家は、まるで、日本でNISAや「JPX日経インデックス400」が登場するのを待っていたかのように、安倍総理が大納会で「来年も日本株は買いです!」と高らかに宣言したのを境に、1兆1696億円の売り越しに転じて来ました。奇しくも、2014年1月の外国人投資家の月間売り越し額は、株式投信への資金流出入学がほぼ一致しています。
「米国の金融緩和縮小や中国の景気減速懸念に伴い一時高まった新興国不安はひとまず後退している」(14日付日本経済新聞 「拭えぬ新興国不安」)
アルゼンチン発の新興国不安が一旦おさまりを見せ、イエレン新FRB議長が「バーナンキ路線を踏襲する」ことを強調して議会証言を無難に乗り切り、世界の金融市場が落ち着きを見せる中、日本の株式市場は明らかに変調を来しています。
「経常赤字国は国内物価が国際商品市況の動向に左右されやすく、通貨安が進めば輸入物価の上昇でインフレ圧力が強まる。輸出産業が少なく、通貨安の恩恵も受け難い」(14日付日本経済新聞 「拭えぬ新興国不安」)
日本経済新聞は、記事の中でこのような解説を加えています。日本の2013年の経常収支は、統計が比較できる1985年以降では最少を記録したものの、3兆3061億の黒字でした。しかし、年間では「経常黒字国」の地位を保ったものの、月間ベースでみると、昨年12月まで3カ月連続で、「経常赤字国」に転落して来ており、この点においては「フラジャイル5」各国と同類項になりつつあります。
「インフレの兆候が顕著だ。通貨安で輸入物価が上がれば、物価上昇圧力が強まる」(14日付日本経済新聞「時事解説 揺れる新興国経済」)
14日付の日本経済新聞は「財政・金融政策にジレンマ」と題して、新興国経済が抱える課題について、「通貨安に伴う物価上昇」を挙げています。インフレ克服が必要な多くの新興国と、デフ脱却を目指す日本を同一に論じることは出来ませんが、「通貨安に伴う物価上昇」という状況が日本にも当てはまることは事実です。
「問われるのは新興国の財政・金融政策の質だ。最近もアルゼンチンはマネタリーベース(資金供給量)の急膨張、トルコはインフレ目標の甘い設定など、政策の拙さが危機を深めた面がある」(同)
マネタリーベースの急膨張によって通貨切り下げを余儀なくされたアルゼンチンに対して、「インフレ目標の甘い設定」に基づいて政策的にマネタリーベースを急膨張させることで通貨安を演出して来た日本。経済状況は異なるものの、国名を伏せてこの記事を読むと、日本についての論評だと思ってしまいかねないほど、日本は新興国との共通点は増えて来ています。
極めつけは「輸出産業が少なく、通貨安の恩恵も受け難い」(14日付日本経済新聞 「拭えぬ新興国不安」)という部分です。
先月下旬のアルゼンチン通貨危機に端を発した新興国発の金融市場の混乱が、予想以上に早く落ち着きを見せ始めたのは、多くの新興国が変動相場制に移行しており、「自国通貨下落による輸出増加とそれに伴う貿易収支赤字の縮小効果が見込まれる」という見方が強かったことも要因です。
「2013年の経常黒字が3年連続で縮小し、過去最少となった背景には、日本の産業構造が変化し、円安でも貿易赤字に歯止めがかからなくなってきたことがある。・・・(中略)… 一方、日本企業の現地生産が進んだことや、中国など新興国の製品との競争が激しくなり、輸出数量は伸び悩んだ」(10日付日経電子版「円安でも輸出低迷の誤算、『空洞化』鮮明」)
「自国通貨下落による輸出増加とそれに伴う貿易収支赤字の縮小効果が見込まれる」という見方がある中で、2013年に20%以上円安が進んだにも関らず「輸出数量」が伸び悩み、「経常赤字国」陥落の危機に直面し始めた日本。「現地生産拡大」という「産業構造の変化」が進んだことで、日本が「輸出産業が少なく、通貨安の恩恵も受け難い国」になって来ていることが露呈して来ています。
「通貨安」「輸入物価上昇」という、「フラジャイル5」と同じ経済状況のなかで、「輸出産業が少なく、通貨安の恩恵も受け難い国」であることを露呈し始めた日本。国内には、「日銀の追加緩和」に対する期待が根強く残っていますが、「通貨下落による輸出増加とそれに伴う貿易収支赤字縮小効果」があることを早急に示せなければ、日本が世界の投資家の目に「フラジャイル・ジャパン」と映っても仕方がありません。
「大胆な金融緩和」によって「円安・株高」を演出し、世界の注目を浴びたアベノミクス。その前提にあった「通貨下落による輸出増加とそれに伴う貿易収支赤字縮小効果」が幻であることが露呈してしまえば、日銀による追加緩和実施に対する期待も、実施された場合の効果に対する期待も膨らむことはないと考えておいた方が賢明かもしれません。
安倍総理が、PDCAサイクルに従ってアベノミクスをマネジメントすることを怠り、経済状況の変化に目を向けずに盲目的に同じ政策を推し進め「Buy My Abenomics!」と叫び続けるとしたら、「Bye-Bye Abenomics」となるまで、それほど時間が掛からないかもしれません。



