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弁護士会費「減額」というテーマ

 弁護士の中で不満が高まっている、高い弁護士会費(「弁護士会『会費』の無理」 「『会費』イメージを超越した弁護士会費」)。ただ、弁護士会の中で、ずっと聞かれてきたのは、「日弁連を主導する方々は、会員のために本格的に会費を減額するつもりはない」といった諦めの声です。

 弁護士会の会費が、一般的な団体会費のイメージから懸け離れて高い理由として、弁護士自治があり、自前での登録・懲戒業務に加えて、人権擁護を含めた公的な活動を背負っているということが挙げられてきました。それだけに、これを減額化する、そのために活動も縮小化するという方向を、いわば弁護士自治「自滅」への方向のようにとらえる見方もありましたし、会務に熱心な一般会員のなかにも、会員負担の苦しさは分かっても、会費徴収は重要との意見がありました。一般的にみれば、それらが若手対策に限らない、本格的な会費減額化というテーマを抑えこんできた観はあります。

 また、適切な議論を経ているという意見も出されます。会費増額は総会に諮られている、会員はそこで反対することができたわけだし、会費の額は会員多数の承認を得ているというものです。ただ、多くの会員に、会費が切実なテーマとして扱われずに済んできたのは、取りも直さず、それなりの経済的なゆとりがあったから、という見方もできます。つまり、前記したような会費の趣旨が掲げられ、それを熱心に支持する会員がいるなかで、強制加入団体の会員が負うべき義務として、自らを納得させて異を唱えてこなかった会員が少なからずいた、ということです。

 日弁連の2012年の収支でみると、全収入53億1052万円のうち、会費収入は49億1524万円、登録料収入が1億1371万円で、実に全体の95%を占めています。弁護士増員で会費収入は増え、日弁連は組織として潤っているはずなのに、なぜ、個々の会員の負担は減らないのか、会員に還元されないのか、といった声を聞きます。

 2002年からの10年間で、日弁連の会員数は約1万3000人増加。この間、年間の会費収入は約18億5000万円、登録料収入は約7000万円増えました。一方、支出では、2012年の46億8456万円のうち、事務費が21億586万円と全体の半分近い額を占め、10年間で約7億円増えました。ただ、見逃せないのは、それとともに、委員会費も10年間で約5億円、事業費も約2億2000万円増加していることです。会員増で事務費が増えただけでなく、弁護士会の活動費は増額している。増えたら増えただけ、活動も広げるということが、宿命づけられているような弁護士会の姿が見えます。

 ただ、問題はその内容に対する会員のコンセンサスです。委員会はもっとリストラできないのか、7億円を越す事業費に含まれるイベント代、機関紙「自由と正義」など2億円を越す会員広報費は見直せないのか、という声が聞かれます(「弁護士会とやりあう」)。そもそも、弁護士自治の旗を守り、身銭をきって、文字通り持ち出しで公的な活動を行うという弁護士会スタイルの無理をいう見方も、会内に広がってきています。

 会員の会費と会活動に対する目線が、かつてと大きく違い、厳しいものになっているのは、いうまでもなく、その日弁連・弁護士会が旗を振ってきた「改革」路線が、一方で弁護士に民間サービス業者としての自覚と競争を求めているからです。また、弁護士個人の負担は、以前も書いたように日弁連会費にとどまらず、所属弁護士会費を含めて重層的なものです。会館建設といった各弁護士会が抱える事情のなかにも、会員の不満のタネがあります(「福岡の家電弁護士のブログ」)。さらには、弁護士の公的な役割の自覚(あるいはカセ)につながる「給費制」も奪われるといった状況もあります。「改革」の要請、社会の要請に板ばさみになりながら、生き残りを図るところに追い込まれている会員弁護士に対する、日弁連・弁護士会のスタンスが、これまで以上に問われる状況にあるというべきです。

  「一度、手を挙げたらば、降ろさないのが日弁連・弁護士会スタイル」。半ば皮肉を込めて、こう語る弁護士がかつていました。「やれる」という姿勢をみせるから、弁護士に対するハードルは上がり、あとに引けなくなるという人もいす。弁護士自治を守ることにつながるはずの「攻め」の姿勢によって、会員の不満が高まり、自治へのコンセンサスを失いつつあるのが、今の弁護士会の姿であるようにも見えます(「黒猫のつぶやき」)。

 次年度の日弁連会長選挙は終わりましたが、もし、会務の本格的なリストラ・縮小と、会費の大幅軽減を含む会員負担の解消を公約の柱に掲げる候補者が出たとしたならば、投票行動に及ばなかった半数の人間を含めて、多くの日弁連会員の少なくとも本音としては、どうとらえたのでしょうか。また、いつの日かそういう候補者が出馬し、勝利するという未来は、訪れないのでしょうか。

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