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- 2014年02月13日 01:04
期待ほど「ハト派」発言をしなかったイエレン議長~「バーナンキ路線踏襲」に安心感を見せた米国と、下値警戒感を緩めた日本
期待したほどはハト派的な発言は出なかった。
日本時間12日未明に行われた米国下院金融委員会でのイエレン新FRB議長の議会証言に対する印象を一言で表すと、こんな感じでしょうか。
「4時間以上という異例の長丁場となった質疑応答」(ロイター)だった割には、その内容がさほど詳細に報道されていないのは、イエレンFRB議長が「一部の共和党議員から厳しい質問を浴びつつ、バーナンキ前議長のとった政策アプローチを踏襲していくと強調」(ロイター)し、先月全会一致だったFOMCの決定から逸脱しないように気を使った発言に終始したからだったと思われます。
先週末に発表された米国1月の雇用統計が、市場の予想を大きく下回ったにもかかわらず、市場は好感した格好になりました。その一つの鍵は、中身はともかく、失業率が6.6%まで低下し、「失業率が少なくとも6.5%に低下するまで、事実上のゼロ金利政策を維持する」と、FRBがフォワードガイダンスで示していた水準に接近して来たことです。
次回の、そしてイエレン議長になって最初のFOMCは3月18~19日に開催される予定ですから、2月の雇用統計はFOMCが開催される前に発表されます。金融市場が予想外に低調だった雇用統計をポジティブに受け取ったのは、2月の雇用統計で失業率が、FRBが示して来た6.5%を下回って来た場合に金融市場で高まる可能性がある政策金利引き上げ懸念に備えて、イエレン新議長が6.5%という従来のフォワードガイダンスの引下げの可能性に言及するとか、もっと強いトーンで失業率が6.5%を下回ったとしても金利の引上げは先になると議会証言で発言する可能性に期待したからだったのではないかと思います。
イエレン議長は、この2ヶ月雇用者増が市場予想を大幅に下回ったことに対して「I was surprised.」と発言し、ハト派としての一面をのぞかせましたが、それ以上踏み込んだ発言はしなかったようです。
もう一つ注目されたのは、先月のFOMC声明文で一言も触れられなかった新興国発の市場の混乱に関して、イエレン議長がどのような発言をするかということでした。この問題に関してイエレン議長は、ほとんど「米経済見通しに著しいリスクを及ぼしていない」という一言に全てを集約したようです。
この発言は、米国の金融システムや、米国の個人消費に影響するほどの大幅な株価下落などが起きない限り、FRBの金融政策は影響を受けないという「ブレない姿勢」を鮮明にし、一部にあった新興国に配慮してテーパリングのペースを緩めるという期待を完全に打ち消すものでした。
こうした発言は、金融市場の片隅にある「FRBは世界の金融市場の番人である」という期待を否定し、「FRBは米国の中央銀行である」という当たり前のことを再認識させたものでもあります。
今回のイエレンFRB議長の議会証言は、全体としては金融市場が過度に期待した「新議長はハト派」という思い込みを裏切ったものであったと思います。
NY株式市場は、「バーナンキ路線を踏襲する」という「政策の継続性」に敬意を表して、200ドル近い大幅上昇となりました。
イエレン議長は、「バーナンキ路線を踏襲する」という安心感を市場に与えることには成功しましたが、次回のFOMC前に発表される2月の雇用統計で失業率が6.5%以下に低下した場合に生じる可能性のある金融市場の混乱に対して、全く布石を打たなかったという点では、将来的な不安を残す内容であったと言えそうです。「バーナンキ路線を踏襲する」という安心感だけで、次回FOMCまでの1か月間、金融市場を安定させ続けられるかについては若干の不安を感じずにはいられません。
イエレンFRB議長が無難に議会証言を乗り切り、NY株式市場が大幅上昇したことで、日経平均株価は2014年に入って初めての3日連騰となり14,800円台を回復しました。これによって、日経平均株価の21営業日ベースのヒストリカル・ボラティリティーは29.8%と、ほぼ自律反発が期待される目途である30%に達しました(TOPIXは30.3%と日経平均を上回って来た)。
一方、日経平均オプション価格から算出される日経平均ボラティリティー・インデックスは、4日の33.21をピークに12日には26.94まで低下して来ました。過去3年間の平均をとると、日経平均ボラティリティー・インデックスはヒストリカル・ボラティリティーを4%ほど高い水準で推移して来ています。しかし、3日連騰によって、日経平均ボラティリティー・インデックスはヒストリカル・ボラティリティーを2.88下回り、▲1σ水準である▲2.19も下回って来ました。
これは、リスクに備えて買い進められて来たオプションが処分されたことを物語る現象だということが出来ます。確かのことは、今年に入り初めての3連騰によって、株式市場では下値に対する警戒感を緩めて来たということです。これは、株式市場の抵抗力が低下して来たことでもあります。
「バーナンキ路線を踏襲する」というイエレンFRB議長の姿勢に安心感を見せた米国市場と、2014年に入って初めての3連騰によって下値に対する警戒感を急速に緩めた日本の株式市場。雇用統計とイエレン新議長の議会証言という注目イベントは無事に乗り越えましたが、まだ一波乱あるかもしれません。
日本時間12日未明に行われた米国下院金融委員会でのイエレン新FRB議長の議会証言に対する印象を一言で表すと、こんな感じでしょうか。
「4時間以上という異例の長丁場となった質疑応答」(ロイター)だった割には、その内容がさほど詳細に報道されていないのは、イエレンFRB議長が「一部の共和党議員から厳しい質問を浴びつつ、バーナンキ前議長のとった政策アプローチを踏襲していくと強調」(ロイター)し、先月全会一致だったFOMCの決定から逸脱しないように気を使った発言に終始したからだったと思われます。
先週末に発表された米国1月の雇用統計が、市場の予想を大きく下回ったにもかかわらず、市場は好感した格好になりました。その一つの鍵は、中身はともかく、失業率が6.6%まで低下し、「失業率が少なくとも6.5%に低下するまで、事実上のゼロ金利政策を維持する」と、FRBがフォワードガイダンスで示していた水準に接近して来たことです。
次回の、そしてイエレン議長になって最初のFOMCは3月18~19日に開催される予定ですから、2月の雇用統計はFOMCが開催される前に発表されます。金融市場が予想外に低調だった雇用統計をポジティブに受け取ったのは、2月の雇用統計で失業率が、FRBが示して来た6.5%を下回って来た場合に金融市場で高まる可能性がある政策金利引き上げ懸念に備えて、イエレン新議長が6.5%という従来のフォワードガイダンスの引下げの可能性に言及するとか、もっと強いトーンで失業率が6.5%を下回ったとしても金利の引上げは先になると議会証言で発言する可能性に期待したからだったのではないかと思います。
イエレン議長は、この2ヶ月雇用者増が市場予想を大幅に下回ったことに対して「I was surprised.」と発言し、ハト派としての一面をのぞかせましたが、それ以上踏み込んだ発言はしなかったようです。
もう一つ注目されたのは、先月のFOMC声明文で一言も触れられなかった新興国発の市場の混乱に関して、イエレン議長がどのような発言をするかということでした。この問題に関してイエレン議長は、ほとんど「米経済見通しに著しいリスクを及ぼしていない」という一言に全てを集約したようです。
この発言は、米国の金融システムや、米国の個人消費に影響するほどの大幅な株価下落などが起きない限り、FRBの金融政策は影響を受けないという「ブレない姿勢」を鮮明にし、一部にあった新興国に配慮してテーパリングのペースを緩めるという期待を完全に打ち消すものでした。
こうした発言は、金融市場の片隅にある「FRBは世界の金融市場の番人である」という期待を否定し、「FRBは米国の中央銀行である」という当たり前のことを再認識させたものでもあります。
今回のイエレンFRB議長の議会証言は、全体としては金融市場が過度に期待した「新議長はハト派」という思い込みを裏切ったものであったと思います。
NY株式市場は、「バーナンキ路線を踏襲する」という「政策の継続性」に敬意を表して、200ドル近い大幅上昇となりました。
イエレン議長は、「バーナンキ路線を踏襲する」という安心感を市場に与えることには成功しましたが、次回のFOMC前に発表される2月の雇用統計で失業率が6.5%以下に低下した場合に生じる可能性のある金融市場の混乱に対して、全く布石を打たなかったという点では、将来的な不安を残す内容であったと言えそうです。「バーナンキ路線を踏襲する」という安心感だけで、次回FOMCまでの1か月間、金融市場を安定させ続けられるかについては若干の不安を感じずにはいられません。
イエレンFRB議長が無難に議会証言を乗り切り、NY株式市場が大幅上昇したことで、日経平均株価は2014年に入って初めての3日連騰となり14,800円台を回復しました。これによって、日経平均株価の21営業日ベースのヒストリカル・ボラティリティーは29.8%と、ほぼ自律反発が期待される目途である30%に達しました(TOPIXは30.3%と日経平均を上回って来た)。
一方、日経平均オプション価格から算出される日経平均ボラティリティー・インデックスは、4日の33.21をピークに12日には26.94まで低下して来ました。過去3年間の平均をとると、日経平均ボラティリティー・インデックスはヒストリカル・ボラティリティーを4%ほど高い水準で推移して来ています。しかし、3日連騰によって、日経平均ボラティリティー・インデックスはヒストリカル・ボラティリティーを2.88下回り、▲1σ水準である▲2.19も下回って来ました。
これは、リスクに備えて買い進められて来たオプションが処分されたことを物語る現象だということが出来ます。確かのことは、今年に入り初めての3連騰によって、株式市場では下値に対する警戒感を緩めて来たということです。これは、株式市場の抵抗力が低下して来たことでもあります。
「バーナンキ路線を踏襲する」というイエレンFRB議長の姿勢に安心感を見せた米国市場と、2014年に入って初めての3連騰によって下値に対する警戒感を急速に緩めた日本の株式市場。雇用統計とイエレン新議長の議会証言という注目イベントは無事に乗り越えましたが、まだ一波乱あるかもしれません。