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盛上りに欠けた都知事選が見せつけた「現実」と、垣間見えた「可能性」と「不安」

今一つ盛り上がりに欠けた東京都知事選は、投票率が過去3番目に低い46.1%となるなかで、舛添要一氏が「脱原発」を掲げる宇都宮健司氏と細川護熙氏にダブルスコア以上の大差をつけ圧勝に終わりました。

マスコミの中には「小泉劇場不発」といったような、「劇場型選挙」が通用しなくなったと報じるところも少なくないようです。確かに、「劇場型選挙」が得意な小泉元総理が支持した細川元総理が、同じく「脱原発」を掲げた宇都宮氏の後塵を拝し、3位に甘んじた現実を見ると、「劇場型選挙」の副作用も経験した有権者に「劇場型選挙」は通用しなくなって来ていると言えるかもしれません。

一方、「劇場型選挙」が通用しなかったということは、換言すれば「組織選挙」が強まったということでもあります。天候要因などで投票率が下がった影響もあり、無党派層を対象とした「劇場型選挙」は不発でしたが、同じ「脱原発」を掲げ、共産党、社民党の支援を受けた宇都宮氏の獲得票が、無所属にこだわって「劇場型選挙」を起こそうとした細川氏を上回ったのは、「組織選挙」の強さを感じさせるものでもありました。

今回の都知事選挙は、結果だけを見ると従来型の「組織選挙の強さ」が際立つものでしたが、一部に無党派層を中心に「ネット選挙の広がり」も感じさせるものでもありました。

個人的には公示日直前になって立候補を表明した家入氏がどの位の票を獲得するのかに関心を持っていました。結果は88,936票と、61万票強を獲得した第4位の田母神氏に大きく水を開けられての第5位でした。しかし、失礼ながら政策と言えるようなものがほとんどない中で、連日マスコミに取り上げられた4強候補に次ぐ得票だったことは、「ネット選挙の可能性」を感じさせるものとして軽視できないような気がします。

「ネット選挙の影響」は、61万票強を獲得した田母神氏からも感じられます。田母神氏はネットでの支持率は極めて高かったことで知られています。マスコミで解説されている通り、「ネトウ」(ネット右翼)と称される層が想像以上に厚いということを表したものかもしれませんが、30万票程度と思われていた得票数が、61万票強にまで達したことは、ネット社会に存在する有権者達が実際に行動を起こす可能性があることを示したという点で興味深いものであったと思います。

田母神氏に関して興味深いのは、若者から高い支持を受けていたことです。朝日新聞社が都内180投票所で実施した出口調査(有効回答7,466)によると、田母神氏への支持は20代では24%と、升添氏の36%に次ぐ支持を集め、30代17%、40代14%、50代11%、60代7%、70歳以上6%と、年齢層が上がるに連れて低下しています。この点が、年齢層が上がるにつれて支持が上昇(30代38%、40代40%、50代44%、60代47%、70歳以上55%)した舛添氏との大きな差、150万票の差に繋がりました。

注目しているのは、田母神氏に対する支持が若者層で強く、年配層で極めて少ないということです。これは「戦争」に対する意識の強さの違いかもしれません。実際に戦争体験のある方や、親から戦争経験を聞いて育った筆者の世代にとって、「戦争」は現実的に起こりうる身近なリスクであるのに対して、筆者の子どもの世代である20代の若者にとって、「戦争」は非現実的な出来事、あるいはゲーム上のものに感じられているのかもしれません。

もし、田母神氏に対する投票結果が年代別の「戦争認識」を表しているとしたら、実際に「戦争」が起きた際に戦地に駆り出される可能性が高い若者が「戦争」に対する危機感が薄く、戦争を体験、あるいは戦争体験を聞かされて育ち、息子達を「戦争」に駆り出されるかもしれない親の世代は「戦争」に対して恐怖感を抱いているという構図になります。靖国参拝や集団的自衛権を主張する田母神氏を、「戦争」をより身近に感じている世代が敬遠し、若い世代が受け入れているという構図は、何とも不思議でもあり、一抹の危うさを感じさせるものでもあります。

20代での支持率を見ると、田母神氏が24%であったのに対して、宇都宮氏は19%、細川氏に至っては11%と、大きな差が付きました。これは細川氏が若者にとって「過去の人」であることも大きな原因だったのかもしれません。同時に、20代の若者から高い支持を得たのが舛添氏38%、田母神氏24%と、宇都宮氏、細川氏を大きく上回ったという結果を見ると、「草食系」と称され、おとなしいという印象のある若者は、リーダーに対して「良い人(そうに見える人)」よりも「強烈な個性」「主張の強い人」を求めているのかもしれません。

舛添氏圧勝という、事前予想通りに終わった盛り上がりに欠けた都知事選挙でしたが、「組織選挙の強さ」という「現実」と、「ネット選挙の広がり」という「可能性」と、若い世代を中心に戦争が身近な危機ではなくなっているという「不安」と、様々なことを考えさせられる選挙でもありました。

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