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ベアが実現すれば景気好循環が起きるというのは幻想だ!

 安倍総理が言います。

 「景気回復の暖かい風を全国津々浦々まで届けたい。景気の好循環をつくらなければならない」

 「企業の収益を、雇用の拡大や所得の上昇につなげる。それが、消費の増加を通じて、更なる景気回復につながる。『経済の好循環』なくして、デフレ脱却はありません」

 「ベースアップに結びついていく事が一番よいかもしれない。収入が増えていく、働いている人々の収入が増えていく事が大切であろう」

 景気の好循環を実現したい、と。我が国の総理は、そこまで国民のことを親身に考えているのか! なんと有難いことか‥

 果たして、そこまで安倍総理を評価している人がどれほどいるのでしょうか?

 確かにネットの世界ではアベノミクスを支持する声が大きいものの、でも、その声は田母神氏を支援する声と似たようなものなのです。

 確かに今回の田母神氏の頑張りは予想以上の大健闘と言っていいでしょう。しかし、それでも彼が獲得した票は全体の十数パーセントに過ぎないのです。要するに8人に1人ほどしか田母神氏を支持するものはいない。それから類推すれば、安倍総理の景気好循環の理論を支持する人も実際にはそれほどではないと思われるのです。

 でも、いいでしょう。理屈はどうであれ、労働者が賃上げを切望しているのは事実ですから、世の中の労働者の殆どがアベノミクスに大いなる期待をしていると仮定しましょう。そして、経済界も、こうなった上は可能な限りベースアップの実現に協力すると仮定しましょう。

 果たして、それで日本の経済は本当に巧く回っていくのか?

 賃金が上がる。何と嬉しいことか! この10年、20年、賃金が下がることはあってもなかなか上がらなかった賃金が上がるなんて! やっぱり安倍さまは、只者ではない‥なんて。

 そうなれば、安倍総理が信じているように消費は活発になるでしょう。

 私もそのことは否定しません。

 そして、消費が活発になるということは、企業の売り上げが伸びるということだから、益々企業の利益が増え、そうなるとまたしても賃上げが可能になる、と。

 確かにそのように経済が巧く回転するならば、これはもう願ったり叶ったり!

 安倍総理、万歳! 万歳!

 しかし、重要なことを見落としている恐れがあるのです。

 そもそも、仮に都合よくそのように景気がよくなれば、企業は益々儲けようとして設備投資に乗り出すと、往々にして過剰在庫や過剰設備に遭遇することになり、また不景気に逆戻り。それが景気循環というものなのです。

 それ以外にも問題があります。確かに労働者の収入が増えれば、国民の消費が増えることが期待できるのですが‥その増えた収入で購入するモノやサービスを生産するのが誰かということなのです。

 国民が購入する商品が日本製のものであれば、取り敢えず経済は巧く回転することでしょう。しかし、国民が購入する商品については、既に相当多くのものが外国製になっているのです。

 ということは、国民の消費が増えたからといって、必ずしも国内企業の売り上げ増につながらない恐れもあるということなのです。

 では、何故日本人は外国製の商品を買うのか?

 それは日本人に限ったことではないのですが‥日本製に比べて海外産のものの方が安くて品質もそれほど見劣りしないから外国製を選択する訳です。それに、日本の企業自身が海外に工場を設立して製品を作ることが珍しくなくなっているので、益々外国製に対する依存度が高くなっているのです。

 では、何故日本の企業は海外に脱出するのか?

 それは海外の方が労働力が遥かに安いからです。

 いいでしょうか? 確かに今の状況では企業もある程度は賃上げに応じなければならない雰囲気が醸し出されています。だから、それなりに賃上げは実現されることでしょう。

 しかし、そうやって国内の賃上げが行われれば行われるほど、国内企業にとっては海外の労働力が益々魅力的に見えてくるのです。

 安倍総理は、片方で、戦略特区などを設けて海外の企業を誘致しようとしていますが、国のリーダーが率先して賃金を上げようとしている国に進出したいなどと考える経営者がいるでしょうか? 他の面でメリットがあればともなく、賃金水準だけで見れば、海外企業は益々日本に見向きもしなくなるのです。

 だから、仮に賃上げが実現されれば、今度は、企業の海外脱出を促進してしまうことになるでしょう。結果として、賃上げの恩恵を受けられる労働者の数は想定されたよりも少なくなってしまう可能性があるのです。

 それに、当然のことながら、賃金が上がるということは、輸出企業にとってみれば生産コストが増加することを意味するので、輸出競争力は落ちる、と。だから、賃金が上がって景気にプラスに作用する面があるとしても、輸出企業にとってはマイナスの面が大きいのです。

 それでも賃上げが行われるならば、貿易収支の赤字は益々拡大することでしょう。そして、そのように今後も貿易赤字の拡大が止まらないとしたら、2013年はなんとか黒字を維持できた経常収支も、近いうちに赤字に転落することが懸念されてしまうのです。

 それでも、「賃金アップが実現して消費が活性化するならば、景気がよくなるのだから良いことではないか」と言いたそうですね?

 しかし、仮に期待どおりに景気がよくなっても、今言ったように、貿易赤字は益々拡大し、そして経常収支も赤字に転落するのであれば、円安に歯止めがかからなくなるでしょう。

 「円安がさらに進めば、ま貿易収支が黒字になるから良いではないのか」と言いたそうですね?

 しかし、過去1年間の円安のと貿易収支の関係を見れば分かるとおりに、円安が進んだからといって貿易収支が必ずしも改善するようには、今の日本経済はなっていないのです。

 これだけの莫大な政府の借金がある上に、経常赤字に転落するようなことになれば、日本経済はどうなるのか?

 想像したくもありません。

 日本からの資本の逃避が起こり、経済は大混乱を起こすでしょう。

 そして、そのときになって初めて貯蓄の大切さが認識されるのでしょう。

 本日の話は、分かり易くするために誇張して書いた面がありますが、いずれにしても、賃上げさえすれば経済はよくなるのだというのは余りにも単純な考え方に過ぎないことを肝に命じておくべきなのです。

 早い話、日本の賃金水準が、過去現実に起きたように低下していなかったら、恐らく失業率は今よりも高い水準で推移していたことでしょうし、企業の海外脱出はもっと進んでいたものと思われるのです。

 労働者の皆さんが、苦しいながらも安い賃金に耐えたからこそ、海外のように大量の失業者を出さずに済んだのです。

 要するに、安倍総理は、物事の一面しかみていないのです。

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