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日弁連会長選、史上最低投票率の現実

 2月7日に行われた日弁連会長選挙で、次期日弁連会長に第一東京弁護士会所属の村越進氏が決定しました。日弁連の仮集計によれば、得票数は村越氏が1万1672票、次点の東京弁護士会所属、武内更一氏が4169票。千葉県弁護士会を除く51会で村越氏が最多票を獲得しており、当落だけをみれば、同氏の圧勝ということになります。

 ただ、既に日刊紙の報道でご存知な方も多いと思いますが、関係者に衝撃を与えたのは、46.64%という投票率の低さです。この数値は、1981年の谷川八郎会長辞任に伴う補欠選挙37.6%を除けば、通常の会長選挙では、1975年の直接選挙制採用以降最低の数値です。単独の獲得票が1万票を越したのは、今回が初めてですが、母数となる選挙人数が増員政策で年間約1600人ずつ増加しているうえに、再投票・再選挙にもつれ込んだ前回2012年の1回目の選挙で割れた、いわゆる「改革」路線派票の合計は1万票を越していることからも、注目すべきなのはやはりこちらではなく、投票率の方です。

 村越氏の得票数は、全選挙人数の33.6%。およそ全会員の3分の1しか信任を得ていない会長の誕生ということになります。もっとも、そもそも日弁連会長選にしても、会務運営にしても、こうした計算を前提にしてしまうと、これまでだって、全会員の総意とか、大多数の支持とはいえない現実はありました。ただ、現在の日弁連会長選挙は、ある意味、別の事情を加味してみる必要があるように思えます。つまり、「改革」の経済的な影響が、これまでの会務無関心層を含めて、いわば全会員レベル、弁護士全体のもはや死活問題になりつつあるからです。増員政策を含む「改革」路線に対するスタンス、会費など会員の負担をどこまで軽減するのか、会務縮小の英断は出来るのか、強制加入そのものの是非まで含めて、本来、こうしたテーマが、会員にとって、無関心ではいられない、切実なテーマであるならば、今回のような結果は生まれないようにもとれます。

 では、なぜなのか。会内から聞こえてくる声から推察すれば、それは端的に二つ。日弁連に対する失望と、「改革」に対する失望です。今、弁護士の経済的な異変をもたらしている「改革」路線は、今後もそう簡単には変わらない、という諦め。そして、日弁連ももはやどうすることもできない。誰が日弁連になろうとも、この状況は当分固定化するのではないか。さらには、こうした会員の苦境を十分に分かっていながら、「改革」路線を引っ張る日弁連執行部が、もはや大きく舵を切る期待もしにくい(「日弁連会長選『熱』の行方」)。

  「改革」が現実的にテーマとして争われてきた、1998年以来の日弁連会長選挙は、前回の第1回選挙まで、すべて投票率60%以上。反「改革」派として高山俊吉弁護士が5回にわたり出馬した2000年-2008年の選挙では、軒並み7割近い会員が投票行動に及んでいました。高山氏が出馬できなかった前々回2010年選挙で再投票の結果、宇都宮健児氏がついに「改革」路線の執行部派候補を破り、2年間のかじ取りをしたものの、「改革」路線を大きく転換することはできず、続く宇都宮氏の続投をかけた前回2012年選挙が、前記したように再び再投票、初の再選挙にもつれこんだものの、執行部派の勝利で政権奪還します。反執行部派政権2年と、その後の会長選挙のゴタゴタは、会員の無力感と「嫌気」につながったとみることもできます。

 そして、今回の選挙。「改革」全面反対派の流れでみると、実は武内氏は前回の同派候補の票を倍増させていますが、全体でみるとこれまで反執行部派候補に流れていた票がすっぽりと抜け落ちている観があります。日弁連と、「改革」への失望の煽りを受けたようにも、あるいは次の手に期待を持てない会員の率直な反応の表れのようにもとれます。

 会員が抱える現実の深刻さと裏腹の無力感、無気力感が広がった今回の選挙こそ、強制加入団体として、末期的ともいえる日弁連の現実であることを、勝利した執行部派側が直視しなければならないはずです。

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