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音楽ライセンスを販売するECサイト「Marmoset」

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最近、音楽ファンの注目を集めているのは、音楽配信ストリーミングサービスを提供しているSpotifyがまもなく日本にも上陸するのではないかという話題だ。

一方、米国オレゴン州で誕生した「Marmoset」は、Spotifyほど世間一般には知られていないが、まだメジャーになっていない米国のアーティストたちから熱い視線を浴びているECサイトである。

「曲」のダウンロード販売やストリーミング配信を行っている音楽配信サイトとは異なり、Marmosetは「曲」ではなく、「曲のライセンス」を販売している。また、同サイトのターゲット顧客は広告代理店や映画制作者など、ビデオや映画を作る人たちである。

昨年の途中まで、WordPressで作成したプラットフォームで試験的に運営し、売上は月間約3万ドル(約300万円)を記録していた。その後、サイトを全面的にアップグレードして、本格的に営業を開始。今年の年間収益は200万ドル(約2億円)を超えると予測されている。

地に足の着いた、本物のアーティストたちの音楽を映像作家にお届け

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Marmosetはコマーシャル音楽の作曲家であり、バンドのメンバーとして音楽活動もしているBrian Hall(上写真左、以下ホール)氏と広告代理店に勤務経験があり、楽器演奏もするRyan Wines(写真右、以下ワインズ)氏の2人によって、2010年にオレゴン州ポートランドで創設された。

当時、ホール氏は広告音楽の作曲家として成功し、ジーンズのLevi's社など、有名企業のコマーシャルに曲を提供するまでになっていたが、その数年前までは、彼もまた、好きな音楽だけでは食べていけないミュージシャンの1人だった。

ホール氏のキャリアに転機をもたらす出来事は2006年冬に起きた。カナダのトロントを本拠地とするインディのロックバンドがコンサートツアーでオレゴン州ユージーンを訪れた際、ホール氏のバンドが前座を任されたのだ。

コンサート会場で、その日の主役だったカナダからのバンドのメンバーの1人がホール氏のオリジナル曲を耳にして気に入り、声をかけてくれた。すっかり打ち解けた2人はその晩、じっくりと語り合った。ホール氏の話が音楽で生計を立てることの難しさに及んだところ、その困難をすでに克服していたカナダ人ミュージシャンはこう教えてくれた。

「僕たちはツアーに出ていないときは、トロントにあるスタジオにこもって、広告代理店のために曲を作っているんだよ」

以前であれば、アーティストが広告のために曲を作ることは、商業主義に魂を売る行為として仲間やファンから罵倒されただろう。しかし時代は変わった。

広告市場に関心を持ったホール氏は、まもなくポートランドでコマーシャルのためのオリジナル曲を制作するビジネスを立ち上げる。

最初はなかなか軌道に乗らなかったが、広告音楽の分野で売れっ子の作曲家と知り合い、広告業界の構造や成功するために必要なスキルを教えてもらえたおかげで、徐々に仕事の依頼が入るようになった。

そしてワインズ氏と出会うと、ともにオレゴンで生まれ育ったこともあり、すぐに意気投合。それぞれが200ドル(約2万円)を共有名義の口座に入れて、広告代理店と映画スタジオのためにオリジナル曲を制作することをビジネスとして、共同で音楽エージェンシーを創設する。

創設後しばらくすると、クライアントとの折衝を担当していたワインズ氏のもとには「インディのアーティストを紹介してほしい」という要望が次々と寄せられるようになる。

「人工的な印象を与えるジングルなどの従来型の曲が飽きられ始め、限られた予算の中で、自主制作しているアーティストの曲の方に消費者がより共感することが広告業界で知られるようになったからだ」とワインズ氏はこの現象の原因を説明する。

幸い、2人には数多くのインディのアーティストと付き合いがあった。そうしたアーティストのほとんどは自分たちの曲がコマーシャルやテレビ番組などで使われるチャンスを切望していた。

そこで2人は映像作家たちと、自分たちが実力やスタイルを認めたアーティストたちとを結びつける役割も担うことに決め、Marmoset社のウェブサイトに、アーティストたちの曲を検索して、その曲の版権を購入できるマーケットプレイス機能を追加することにしたのである。

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Marmosetに登録しているアーティストの多くは、ブルーカラーの労働者や、バリスタ、バーテンダー、プログラマー、農業従事者など、他の仕事をしながら、余った時間で音楽を作り、演奏活動を続けている人たちだ。

父親や母親として子育て中の人も多く、スキャンダルでマスコミを騒がせることの多いメジャーなアーティストたちに比べると、彼らのプロフィールからは「地に足を着けて暮らしている人々」という雰囲気が漂っている。

音楽で食べていくことの苦しさを自ら体験して知っているホール氏は、「広告は自分の音楽をより多くの人に聴いてもらえるチャンスの場だ。自分の音楽が広告に使われることが耐えられないという人は別だが、そうでないならば、広告分野にも積極的に目を向けて損はない」と語っている。

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