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戦国時代突入のバイラルメディア、早くも淘汰始まり急落するサイトも

過熱してきた米国のバイラルメディア。だが早くも淘汰が始まり、トラフィックが急落するサイトも現れてきた。 

 昨年半ば以降、短期間に驚異的なトラフィックを獲得していくバイラルメディア・サイトが相次ぎ登場してきた。戦国時代突入の様相を呈してきた。その中で月間ユニーク数(ビジター数に近い)を爆発的に増やし、我々を驚したサイトがUpworthyとDistractifyであった。Upworthは月間ユニーク数を10月の4287万人から11月の8808万人と、一カ月で倍増させた。また2013年10月に誕生したばかりのDistractifyは、11月に1560万人、12月に4634万人と信じられないほどの急成長を達成した。トップクラスの伝統ニュースサイトのユニーク数を、一気に追い抜く勢いである。さらにUpworthyに続けと生まれてきた新顔のバイラルメディアの中にも、アッと言う間にユニーク数が1000万人を突破するサイトが生まれてきている。

 このように昨年末まで、バイラルメディアと称されるサイトともなると急成長が当たり前と見られていた。ところが年末から年始にかけて突然異変が起こった。先頭を走っていたUpworthyとDistractifyの2強サイトのトラフィックに急ブレーキがかかり、さらに急減したからだ。Quantcastの測定結果によると、以下のグラフで示すように、11月に8809万人に達していたUpworthyの月間ユニーク数が12月に6832万人に減り、年明けの1月には4919万人と2カ月間でほぼ半減してしまった。またDistractifyは12月に一気に4634万人に上りつめたが、1か月後の1月には3394万人に急減した。Alexaのトラフィックランキングの表も掲載したが、両サイトともランクを大きく下げている。縦軸のランクが対数表示なので落ち方が小さく見えるが、実際には暴落している。測定の正確さには疑問があるが、両サイトとも急落しているのは間違いないだろう。

*月間ユニーク数の推移(Buzzfeed、Upworthy、Distractify)
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(ソース:Quantcastのデータより:
 ユニーク数=モバイル・ウェブ・ユニーク数+オンライン・ユニーク数)

*Alexaのトラフィックランキング(UpworthyとDistractify)
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 共にフェイスブックからのトラフィックに依存しているのが特徴であるだけに、サイトの掲載記事がフェイスブックで話題になる件数を増やしていかなければならない。ところがフェイスブック上でやり取りされた総アクション総数(いいね!、コメント、シェア)でも、Upworthyは13年11月の1680万件をピークに12月の1077件、14年1月の570万件と急降下した。これはNewsWhipの測定結果であり、フェイスブック上で総アクション数の多いメディアサイトのトップ50が公表されている。新顔のDistractifyも12月に170万件で36位となりトップ50入りを果たしたが、14年1月にはランク外に落ち込んでしまった。やっぱり、総アクション数とトラフィックが連動して落ちていたのだ。

フェイスブックでの月間総アクション数の推移

(Buzzfeed、Upworthy、Distractify)

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(ソース:NewsWhipのSpike)

 そうなると、バイラルメディアのバブル崩壊かと気になる。上の2強は確かに変調をきたしたが、他の有力バイラルメディア・サイトは概ね快調に推移しているので、崩壊とは言い切れない。新興バイラルメディアの先輩格になるBuzzFeedは逆に、昨年末から今年に入って勢いづいている。冒頭のグラフで示したように、14年1月の月間ユニーク数が前月より約2000万人も増え1億5346万人に跳ね上がったのだ。

BuzzFeedは名が示す通り、ネット上でバズる(話題になり拡散する)コンテンツを発信するように最初から設計されたニュースサイトである。そのためBuzzFeedへのユーザーアクセスは、フェイスブック、ツイッター、タンブラーといったソーシャル系サイトや、検索エンジン、ブログ、ニュースアグリゲーター、Redditなどからの参照トラフィックが多い。2006年に設立と、今のようにバイラルメディアが騒がれるかなり前からスタートし、これまでバイラルメディア市場で独走していた存在だった。ところが、昨年半ばから特にフェイスブックからのトラフィック流入増に注力したバイラルメディアが、すごい勢いで急浮上してきた。その代表格のUpworthyの月間ユニーク数がBuzzFeedに迫る勢いを見せつけた。

そこで、コンテンツをバイラルにするために専門のデータサイエンティストを抱えているBuzzFeedは、フェイスブック対策に重点をシフトさせたようだ。その効果として、BuzzFeedのフェイスブックにおける月間総アクション数が、13年11月の2179万件から12月に2553万件、14年1月に4024万件と、BuzzFeedの記事がフェイスブック上でますますバズるようになった。その結果、以下のグラフのように、フェイスブックからのトラフィックが急増し、グーグル検索からのトラフィックを大幅に凌ぐまでになった。コンテンツが画像などのビジュアル中心になってきたのも、検索からソーシャル系へのシフトを加速化させたのだろう。そして、冒頭のグラフのように、今年1月の月間ユニーク数急増に至ったのだ。


*Buzzfeedにおけるフェイスブック参照トラフィックとグーグル検索トラフィックの推移
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参考までに、フェイスブックにおける月間総アクション数の多いメディアサイトのランキング表を、掲げておく。2014年1月のランキングである。急に変調をきたしたUpworthyは12月の3位から14位に落下し、Distractifyは36位からトップ50圏内から消え去った。


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ソース:NewsWhipのSpike


  一方でバブル崩壊の懸念を吹っ飛ばすように、先に説明したようにトップのBuzzFeedは上昇気流に乗り2位との差を広げ、ViralNovaは6位から3位に上昇した。また新星のIjreviewは42位から一気に9位に躍り出て、それに合わせて月間ユニーク数も以下のグラフのようにうなぎ上りに増え続けている。

*月間ユニーク数の推移(Ijreview)
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(ソース:Quantcastのデータより:
 ユニーク数=モバイル・ウェブ・ユニーク数+オンライン・ユニーク数)

フェイスブックでの月間総アクション数の推移
(Ijreview)

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(ソース:NewsWhipのSpike)

今回の2強サイトの大異変は、バイラルメディア・サイトの不安定さを露呈したともいえる。ユニーク数が1000万人を突破したサイトでも、1か月間くらいの短期間で、ユニーク数が倍増したり、半減したりする。これまでのWebサイトの常識からは想定もできないほど、アップダウンが激しすぎる。水物っぽいサービスの危険性をはらんでいる。

バイラルメディアの参入障壁が低いこともあって、国内でも見られるように、すでに乱立気味である。例えば、バイラルビデオをまとめたようなサイトだと、すぐにでも立ち上げることができそう。海外を中心にYouTubeなどのバイラルビデオが溢れている定番サイトやランキングサイトは以前から存在し、張り付けるだけで利用できる素材はいくらでもある。土地勘のある目利きがキューレートし、ユーザーを引きつけるストーリーを語り、ユーザーが飛びつきたくなるような見出しをつけていけば、バイラルメディアとして成り立つ。米国のバイラルメディアでも記事本数が月間200~300本程度でユニーク数が1000万人を超えているサイトがある。毎日10本程度発信するサイトなら数人足らずで短期間に立ち上げても不思議ではない。

バイラルメディア・サイトをいくつか覗いてみた。確かに面白そうなコンテンツが満載していて楽しめる。暇つぶしや息抜きの時に閲覧するエンターテイメントサイトの類かな。仕事や学業にダイレクトに役立つ情報はあまりなさそうだが、雑談話のネタにはなりそう。ただ、乱立しているバイラルメディアに、ユーザーが付き合える時間にも限度がある。また、似たり寄ったりのサイトが多く、何度も閲覧していくと飽きてもくる。当然、これから淘汰は避けられない。

水物ではなくて持続性のあるサイトであるためには、単なるまとめサイトだけでは難しそう。独自の切口やオリジナルコンテンツなどで差異化を図る必要がある。Ijreviewが快調に飛び出ることができたのも、政治という特定分野に絞って、乱立している他サイトとの差異化を図れたからであろう。実績のあるBuzzFeedは、マスメディアで活躍してきた編集者を多く抱え、いろんなコーナーを新設したりして、記事の量、質とも他サイトをリードしている。最近では調査報道などのオリジナル記事を増やしていこうとしている。UpworthyとDistractifyも、2月以降、どのような手で巻き返しを図るかを注目していきたい。

◇参考
The Biggest Facebook Publishers of January 2014(NewsWhip Blog)
The Year Facebook Blew Past Google(re/code)

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