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シングルイシューの強度と限界

 東京都知事選、大方の予想通り舛添要一氏が圧勝した。投票率が46%と低調に終わったが、前日の大雪の影響やそもそも争点がないということもあり仕方ないよね、という感想を抱いてしまう。選挙が大好きなParsleyでさえ、雑事や作業に追われてテレビの特別番組を一回も見ることがなかった。
 
 東京大好きとはいえ都民でない身としては、各政策よりも今後リベラル支持層の行方や理論の再構築をどのように進めるのか、といったことの方に興味が向いていて、以前にも『Yahoo!個人』の方でエントリーを書かせて頂いた(参照)。なので、今回は「シングルイシュー」ということについて適当に考えて書き散らしてみたい。

 今回、「脱原発」を掲げた細川護熙氏の応援として登場してきた小泉純一郎元首相は在任中「ワンフレーズ・ポリティクス」とその手法について揶揄や批判されることが多かった。実際、2005年の衆議院議員選挙では「郵政解散」と命名し争点を明確にして圧勝。小選挙区・比例代表ともに約67%という高い投票率を記録している。細川氏の「脱原発」に関しても、小泉氏は過去の成功手法をそのまま踏襲したようにも見える。

 とはいえ、彼の持論である「郵政民営化」は国債の増発により悪化した財政を再建させるためという確固たる理由づけがあった。実際、小泉政権では郵政だけでなく道路公団や独立法人の民営化も推し進めており、国債を30億円へと抑制している。

 となると、小泉氏の「信念」といえるのはむしろ「財政健全化」であり、「郵政」はその象徴しての存在だったといえるだろう。彼の言葉で「一点突破、全面展開」というものがあるが、郵政改革によりその他の公団や政府機関の民営化にもつながり、それが他の構造改革にもつながり、財政再建にもつながるという一本筋が通っていたことがこの発言からも垣間見ることができる。

 なので、一見ワンフレーズであっても「郵政民営化」というキーワードは綿密に練り上げられた政策に裏打ちされており、その哲学も反映されていたからこそ、強度のある政策として機能したといえるのではないだろうか。

 翻って、細川氏が唱えて小泉氏も乗った「反原発」は、2011年の東日本大震災での福島第一原発事故に基いてのものであり、言葉を飾らないならば「危ないからやめよう」というものだ。「地球環境」ということならば、火力発電を中心としているほうがやさしくないし、天然資源の確保や経済性という面だと後退しているのも明らか。ならばそれらを上回るロジックが必要になるが、少なくとも現状の「反原発」論は「核燃料処理をどうする?」といった根源的な問題にさえ答えを出せていない。

 要するに、シングルイシューとして「反原発」は哲学たり得ておらず、政策としての強度が不足しているから、100万以上の有権者を有する選挙戦では十分に支持されないのではないか。小泉氏自身、映画『100,000年後の安全』を観たのがきっかけだと公言していて付け焼き刃感が否めず、「郵政民営化」と比較すると言葉に芯がないように感じるのは私だけだろうか。

 そういえば。家入一真氏のいう「ぼくらの政策」もシングルイシューといえるかもしれない。明確な公約を掲げずネットユーザーから政策を募集するというスタイルは、オープンソース的でもあり間接民主制を漸進させるチャレンジでもあるようにも思える。

 ただ、当の家入氏自身がそういった「理論」を組み立てることに関心を持っていないようにも見える。というか、そこも「やりたいひとがやればいい」というスタンスだろうから、「伝わるひとには伝わる」というレベルに留まったのは、「ぼくら」の中身が未熟で言葉として強度不足だった、ということなのではないだろうか。

 もっとも、これは今回の都知事選に限った話で、今後サイトやソーシャルメディアを活用して意見を公募するという手法により、民主政治をハックすることが「社会をよくする」とプレゼンテーションできるまでになれば、「ぼくらの政策」というイシューが現在よりも広範な支持を得られるポテンシャルがあると思う。まぁ、必ずしもそれを家入氏だけが担い続けなければならない、というわけでもないとも思うけど。

 そんなわけで。シングルイシューを全面に掲げて選挙を勝ち抜くには、それが他の諸課題にも関連し全体を解決へと導く糸口になると理解できるくらいには強度がないと支持を得られない、ということを考えてみた。

 これは選挙を戦う候補者だけでなく、例えば投票率向上の運動にも同じことがいえる。そもそも「なぜ投票に行かなければいけないのか」といったことが、世代間格差による実現政策の偏りや有権者の意識に訴えるのには限界がある。個人的には棄権するのも政治行動だという考えだけど、今回の都知事選が「投票に行こう」といったお決まりのフレーズが見直される契機にもなればいいなぁ、と願う次第です。

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