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- 2014年02月08日 01:06
【IWJブログ】暴走する安倍政権が「国家戦略特区」で国民の「生活」を打ち砕く ~都知事選主要4候補のスタンスは
3/3■東京都の「やりたい規制緩和」 都知事は孤立無援に!?
この提案書やアクションプログラムには、一見すると、国家戦略特区で懸念されている「解雇特区」や「混合診療解禁」「学校民営化」などは書かれていない。これらに書かれていない規制緩和を、もし国家戦略特区で政府が要求してきたら、東京都はどう対応するのか。またこれら「医療」や「雇用」などの分野での規制緩和について、都はどう考えているのか。
IWJは直接東京都に問い合わせたが、担当者は「まだ東京が決まるかどうかも分からない。政府がどのような規制緩和要求をしてくるかも分からない。東京都が指定され、具体的な規制緩和項目が明らかになってから検討する」という回答だった。
ただ、アジアヘッドクォーター特区からの流れを見る限り、東京都は規制緩和について国と歩調を合わせている。もし政府が「医療」や「雇用」分野でも規制緩和を提示してきた場合、この「アジアヘッドクォーター特区」にそぐわない限り、「外国企業の誘致のため」「経済活性化のため」として、政府案に「同意」する懸念はある。
つまり、東京都が一定の規制緩和をすでに進めており、それ以外の「医療」や「雇用」分野の規制緩和について見解を明らかにしていない以上、現段階では、特区反対の都知事ではなく政府側に同調する可能性が高い。その場合、都知事は都庁で孤立無援となってしまう。
■「安倍特区」に異を唱える宇都宮氏・細川氏と、同調する舛添氏・田母神氏
こうした状況をふまえて、各候補の国家戦略特区へのスタンスを分析すると、今後東京都でどのような規制緩和が、どの程度行われていくがが見えてくる。いわゆる主要4候補では、これまでの政策・発言などをふまえると、宇都宮氏と細川氏が「安倍特区」に異を唱え、舛添氏と田母神氏が同調している。
■「国家戦略特区」が「雇用対策」!? 舛添氏の政策
舛添氏の政策を見ると、「特区の活用による外国人スタッフの受け入れ」、「世界一のビジネスインフラに向けた国際戦略特区の設置(妥協の無い規制緩和と人材の呼び込み)」、「特区を活用した先進的な政治・行政の実施」など、「特区」という言葉が4回も出てくる。2月1日に行われた主要4候補によるネット討論会でも、アベノミクスを賞賛したうえで、「東京を国家戦略特区に指定して、国と協力しながら、東京で大胆な実験をやりたい。様々な規制に対して、チャレンジして緩和していっていい。若い方にはどんどん会社を作ってもらう。で、儲かってもらう。そうすれば雇用が生まれてくる。そして、色んな先端技術がどんどん進んできます」と語り、国家戦略特区こそが雇用対策であるかのように、強調している。
【ネット討論会動画】
・2014/02/01 【東京都知事選】主要4候補がネット生討論会 ~「東京五輪」「原発」「社会保障」「防災」など6テーマで 徹底議論
(※討論の全文文字起こしはこちら)
また舛添氏は、街頭演説や討論会の場で事あるごとに、自身の厚労大臣時代に官僚の抵抗と闘ったことを強調し、都知事になったら「徹底的に官僚と闘う」と述べている。国家戦略特区で主に抵抗を見せているのは、「雇用」や「医療」にダイレクトに係る厚労省である。現在も水面下では、官邸と厚労省の折衝が続けられており、安倍総理は諮問会議のメンバーから意図的に厚労大臣を外しているほどだ。
舛添氏が都知事になった場合、安倍総理にとって、共に厚労省と闘う急先鋒としてこれほど最適な人物はいないのではないだろうか。
【舛添要一HP 政策】
http://www.masuzoe.gr.jp/policy-2
■「どんどんやったらいい」手放しで賛成する田母神氏
田母神氏の場合は、政策には「特区」の文字は一回も登場しない。しかし、2月2日にフジテレビ「報道2001」の公開討論に出演した際に、「特区については、これはそういうことをやったらうまくいくかどうかという実験ですから、政府がその実験をやってうまくいけばやる。うまくいかなければやらないということですから、これは政府の計画でどんどんやったらいいと思います」と、安倍政権の特区構想を手放しで「是」としている。【田母神俊雄HP 政策】
http://www.tamogami-toshio.jp/#policynavi
■宇都宮氏は強硬に反対 「まさに地獄の国づくり」
一方主要4候補のなかで、最も強硬に反対しているのが宇都宮氏だ。政策では、「国家戦略特区は、多国籍企業への便宜をはかるために、政府主導で都市計画をいっそう緩和して都心で高層のマンション・オフィスビルの建設をさらに促進したり、国内では承認されていない高価な医薬品などを保険外併用したり、有期雇用労働者に無期雇用への転換権を認めず首切りをしやすくしたり(いわゆる『解雇特区』制度)、公立学校を民間委託するといった、国民生活にかかわる重要なルールをゆがめる制度です。またこの『特区』が突破口となって、将来に日本全国で生活を守るルールがゆがめられ、多国籍企業ばかりが優遇されるおそれがあります」と、詳細にその危険性を指摘し、東京都が進める「「アジアヘッドクウォーター特区」についても、「推進しません」と宣言している。
【宇都宮健児HP 政策】
http://utsunomiyakenji.com/pdf/20140207policy_ver2.pdf
また、フジテレビ「報道2001」の公開討論では、「規制緩和を進めた結果、非正規労働者が増えて、年収200万未満の労働者が1000万人を超える状態が6年連続で続いた。つまり、貧困と格差が広がった」と、小泉構造改革から続く規制緩和自体にも疑問を投げかけたうえで、「企業が一番活動しやすいっていうのは、企業にとっては天国かもしれないけど、働いてる人にとっては地獄の国づくりじゃないか」と強烈に批判している。
「国家戦略特区」自体を「いらない」と切り捨てる宇都宮氏が都知事になった場合、官邸からの圧力は想像に難くない。さらに「アジアヘッドクォーター特区」を推進する東京都や、自民・公明党が過半数を占める都議会でのサポタージュも予想され、かなり苦しい闘いに突き進んでいくことになる。
■政策に「特区の活用」を掲げた細川氏の真意とは
「安倍特区」には異を唱えつつも、やや具体的な姿勢が見えづらいのが細川氏だ。細川氏の政策を見ると、意外にも「脱原発」と同じくらいの文量を使って「特区の活用」に言及している。以下に該当部分を抜き出した。
「東京の発展を支える産業基盤の育成をはかるため、『国家戦略特区』も活用し、魅力的なビジネス拠点の形成に努めることで、グローバルな都市間競争に勝ち抜けるようにしていきます」
「民間活力を生かした都市インフラ整備を推進します。『国家戦略特区』を活用し、羽田空港の国際化、都心拠点の拡充、先端的な医療環境や教育環境の整備に努め、住みやすさとビジネス機能性を両立させた都市作りを進めます」
「国家戦略特区を活用し、同一労働同一賃金の実現を目指すとともに、ハローワークは、国から都へ移管し、民間の職業紹介とも合わせてきめ細かな就業支援を実現します。また医療、介護、保育、教育などの都民生活に密接に関係する既得権のしがらみを断ち、国ができなかった思い切った改革を進めます。それぞれの分野で、新しいサービスの創出と産業としての発展につなげます」
【細川護熙HP 政策】
http://tokyo-tonosama.com/
さらに1月22日に行われた出馬会見では、「『岩盤規制』と言われる各種の既得権によって阻まれてきた医療、介護、子育て、教育などの分野での規制改革を、強力に推し進めていきたいと思います」と、安倍総理が同日ダボス会議で使用した「岩盤規制」という言葉を使って、規制緩和を掲げている。
会見で私に「舛添さんや安倍さんの新自由主義的な経済政策に同意しますか」と聞かれた細川氏は、「戦略特区については、誰の言っていることであろうと、いいことはいい、悪いことは悪い、というだけの話です。いいところは大いに取り入れてやっていきたい」と答えるのみで、国家戦略特区に対する自身の見解を具体的には示さなかった。
こうした言動から、ネットを中心に「細川氏は国家戦略特区を推進するのか」という疑念の声がわき上がった。
IWJも何度となく、細川氏の真意について選対事務所に取材を行った。政策担当の中島政希氏や宮下氏は、「細川の特区は、安倍さんの特区のようにはならない。あくまで政官業の癒着構造の打破。雇用のための特区だ」と強調。選対の中核を担っていた木内孝胤・前衆議院議員も、自身のツイートで3回にわたって、安倍特区と細川氏の特区の違いを連投ツイートした。
「私の理解では、細川の言う特区は政官業の癒着構造を打破して、原発ゼロを実現するための電力改革を実現するためであり、生活者や暮らしを重視した特区という意味です。首を切りやすくとかあり得ないです。」
「日本は元来弱い人を取りこぼすことがない相互扶助的な社会。現在はそうした古き良き伝統が薄れる一方で、健全で公正な競争もなく、既得権益者だけを利する不公正な社会となっているために活力がなくなっている」
「既得権益は様々な分野にはびこっている。特区でなくても既得権益を打破することはできる。しかしながら二人の総理はその岩盤がどれだけ厚いか理解しており、電力改革を打破の針の一穴としたいのではないか。」
冒頭でも述べたが、「国家戦略特区」において都知事に与えられる権限は、「同意」か「反対」のみである。ましてや、特区法に明記されていない「電力自由化」を新たに都知事の権限で創設することなど、不可能に近い。この木内氏のツイートをもって、細川氏の姿勢を明確にするのは難しい。
ただ、細川氏は朝日新聞のアンケートに対し、「TPPにはどちらかといえば反対。交渉の具体的な内容が開示されず、国民にメリット、デメリットが示されていない。このため農業、医療など国民生活に密着した多くの重要産業への影響が明らかになっていない」と答え、「医療」や「農業」を「国民生活に密着」と言及していることから、細川氏の考え方は、国家戦略特区の理念とはそぐわない部分もあると推測できる。
■「解雇特区は慎重に検討」 安倍特区に異を唱えた細川氏
細川氏自身が特区について1月22日時点の姿勢とは違う慎重姿勢を示したのは、2月2日のフジテレビ「報道2001」の公開討論である。特区について問われた細川氏は「特区の中身について、時間的な制約というものも今お話があったように、あるんでしょうけれども、しかし、もう少し、中身を詰めて考えたほうがいいんじゃないかなと。という感じがしています」と語っている。まだ、ぼんやりとした回答だが、岩盤規制に穴を開けるという積極性は影をひそめている。特区の危険性の認識が有権者の間に広まるにつれて、当初の姿勢を「修正」してゆく必要性を、細川陣営も感じ取ったのだろうか。「修正」はさらに進む。
4日後の2月6日、投票日の3日前に細川氏の政策に以下が追記された。
「国家戦略特区については、雇用を守る方向での活用を考えています。昨年成立した、解雇規制の緩和、いわゆる『解雇特区』については、慎重に検討するべきです。(2/6追記)」
国家戦略特区についての懸念で大多数を占める「解雇特区」について、明確に異を唱えたのだ。
「慎重に検討」という表現が曖昧である、という不安の声、「医療」や「教育」分野の規制改革に対する姿勢がいまだ明確ではない、などの指摘もあるが、細川氏からさらなる情報が発信されていない以上、現状では否定的な判断を下すことはできない。ただ重要なのは、「慎重に判断」や「中身を詰めて考えたほうがいいのは」という発言である。
先に述べたように、国家戦略特区を推進する側は、「スピード感」が命である。拙速かつ強引に押し込もうとしているなかで、「時間をかけて中身を詰める」というのは、官邸にとっては命取りとなりかねない。「慎重に判断」を掲げる以上は、都知事になった場合、官邸との闘いは避けられない。宇都宮氏と同様、またそれ以上に「組織に属さない」「しがらみのない」を掲げている以上、都庁内で孤立する懸念はある。
■特区の本質は「竹中構造改革のスタート」であり「TPPの内国化」
いずれにせよ、国家戦略特区は都知事選だけの争点ではなく、また、東京だけに振りかかる問題ではない。現在東京以外にも特区候補は、大阪。名古屋など都市圏が含まれており、政府は2月中にも全国で3~5カ所を選定するとしている。竹中平蔵氏は自身のブログで、「全国一律に規制改革するには時間がかかるから、まず特区でこれを行うという主旨を忘れてはならない」と語っている。国家戦略特区はTPPの内国化のスタートに過ぎず、これを認めてしまうと、そこを蟻の一穴にして国全体の法改正や規制緩和が雪崩をうって行われる危険性があるのだ。今回の都知事選で誰が当選しようと、国民はこの特区の問題を継続的に注視していかなければならない。(取材・文:佐々木隼也 / 文責:岩上安身)
・竹中平蔵のポリシー・スクール
http://www.jcer.or.jp/column/takenaka/



