記事

【IWJブログ】暴走する安倍政権が「国家戦略特区」で国民の「生活」を打ち砕く ~都知事選主要4候補のスタンスは

2/3

■都知事はどの程度「権限」が与えられるのか

 「区域会議」は、国家戦略特区担当大臣(現在であれば新藤義孝大臣)、特区に指定された地方公共団体の長、民間事業者の三者によって協議され、最終的に規制緩和の細部を定めた「区域計画」が作成される。

 この「区域会議」において、地方公共団体の長には、どの程度の権限・拒否権を持つことができるのか。先述の内閣官房の担当者に話を聞いた。
IWJ「区域会議において国の要請には、様々な規制緩和項目が含まれると思うが、地方の首長が反対した場合、区域計画は無効となるのでしょうか?」

担当者「基本的に『合意に基いて作成』と決まっているので、合意できるまで計画は作れないと言いますか…、『合意できるまで議論を重ねていかなければならない』ということになる。誰か一人でも反対したら、その計画はなくなるということではありません」
 政府資料である「国家戦略特別区域基本方針(案)の概要」を見ると、「区域計画」は「相互に密接な連携の下に協議した上で、三者の合意により作成」とある。諮問会議に名を連ねる竹中平蔵氏は自身のブログで、「区域会議のメンバーに対し、『連携の上協議する』という『努力義務』が課せられた点が大きい」と書いている。「連携」というのはつまり、会議に参加する首長には、官邸の規制緩和項目に「同意するよう努力せよ」ということである。

 なぜなら、この「基本方針(案)」にはさらに、「関係大臣は法令に適合する限り同意」と定められているため、もし地方の首長が「反対」しても、関係大臣は基本的に官邸の方針に背くことは許されない。加えて「区域会議は、取組を具体化する中、民間事業者から、追加の規制・制度改革について意見聴取し、これを実現」とも書かれている。つまり、区域会議に参加する「民間事業者」は、「追加の規制緩和」を要求することが大前提なのであって、ましてや規制緩和を退行させることなどあり得ないのだ。

・国家戦略特別区域基本方針(案)の概要
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai2/siryo1.pdf

■地方の長は圧倒的不利な交渉を強いられる

 区域会議のメンバー三者のうち、「大臣」と「民間事業者」のニ者が官邸の方針に賛成しており、地方の首長はそんな彼らと「連携」して「最終的に同意」しなければならない。しかも、例え「反対」しても「同意するまで議論が重ねられる」という、地方の首長にとっては圧倒的に不利な場となるのである。

 この点について、さらに詳しく担当者に話を聞いた。
IWJ「例えば都知事選で、『この分野のこの規制緩和は認められない』と掲げている人が当選したとする。その人が区域会議で、例えば『医療のこの規制緩和は認められん』となった時に、どの程度権限・拒否権が与えられるのでしょうか?」

担当者「法律としては、『合意に基いて作成』となっているのあり、『三者が一体となって進めてくもの』という看板がありますので、誰かが反対する、特に地方自治体の長が反対している状態で無理やり進めていくというのは、そもそも考えづらい。

 加えて、3月に予定されている区域指定の段階で、『地方自治体の意見を聞かねければならない』と法律に書いてある。つまりその時点で、ある程度どういう規制緩和をするのか、ということについて国と地方の間で同意がなされる。その時点で『やりたくない規制緩和』というのは、ある程度明確になって、区域を指定する時にも影響してきます」
 つまり区域会議の前、3月予定の区域指定の段階で、官邸と地方の間で折衝とすり合わせが行われるのだ。ここで大体の方向性、規制緩和の概要が決められ、区域会議はその路線に沿って進めていくことになる。もし、安倍政権の特区に異を唱える候補が都知事になった場合、この3月の区域指定の段階で、早くも官邸との闘いの矢面に立たされる。

 対する安倍政権は、「2年間で突破口を開く」と期間を絞り、「スピード感が求められる」と随所で訴えるなど、とにかく「急務」であることをアピールしている。なぜここまで焦っているのか。それは、この特区構想が本来は、違法なものであるにも関わらず、「火事場」を理由に強引に、なし崩し的に推し進めているものだからである。

■「火事場」を利用したショック・ドクトリン

 日本の法律は基本的に、国内において等しく適用されるが、「指定された地域だけは例外的に法律を守らなくてもいい」というのが特区構想である。ここに法律論上の矛盾がある。国家戦略特区のワーキンググループで行われた有識者ヒアリングの議事録を見ると、「平時であれば、絶対に法制審をスキップすることはできない。なぜできたかといえば火事場だったからである。つまり、今も火事場だという認識を作る必要がある。だから、平常のルーチンはスキップさせてもらいますと、これはとても重要だと思う」という発言が残されている。

国家戦略特区ワーキンググループ有識者等からの「集中ヒアリング」 (議事概要) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_y/annen_gaiyou.pdf

 法制審とは法務省の「法制審議会」であり、法務の調査審議を行う機関である。法的にそもそも矛盾があるこの特区構想が法制審にかけられた場合どうなるか。前述の有識者ヒアリングでは「法制審に言ったら絶対に潰れる」と委員の一人が発言している。

 つまり、無理のある法律である「国家戦略特区」を推し進めるためには、法制審すらスキップしなければならないほどの「急務」「火事場」である、という理屈(※)が必要になるのだ。

【関連記事】
【岩上安身のツイ録】「ショック・ドクトリン」としての国家戦略特区〜作り出される「火事場」
(※)「火事場」に乗じて規制改革を推し進めるという手法を、現代社会において政府は頻繁に用いる。こうした大惨事につけこんで実施される過激な市場原理主義改革は「ショック。ドクトリン」と呼ばれる。2011年3月13日、東日本大震災直後に読売新聞は「負担の先送りや業界のエゴを優先しているようでは、未曾有の国難は克服できない。国民全員が厳しい現実を直視し負担を分かち合う覚悟が必要だ」書き、「復興にはTPPを」という論説を展開した。
 安倍政権にとって、この国家戦略特区を実現させるためには、いかなるスピードダウンも許されない。就任したての都知事が対峙するのは、こういう切羽詰まった本気の相手なのだ。

 そうなると、都知事は国民の後押しと、東京都と共に孤軍奮闘の闘いを強いられることになる。しかし、共にスクラムを組む東京都の特区に対する姿勢はどうか。東京都のこれまでの動きを見ていくと、特区に異を唱える都知事に全面的に協力するかどうか、疑問符が付く。

■東京ではすでに「国家戦略特区」の地ならしが進行中

 2011年6月、当時の菅政権は、地域を限定して規制緩和を行う「総合特区」制度を創設した。その一地域として同年12月に東京都が「アジアヘッドクォーター特区」の指定を受けた。東京都心・臨海地域や、品川駅・渋谷駅周辺などで、「外国企業を5年間で500社以上を誘致」を目標に、「地方税(法人事業税等)の全額免除」などが進められた。しかし現在様々な制度が障害となり、規制緩和は思うように進んでいない。

・「アジアヘッドクォーター特区」について
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2011/12/DATA/20lcq400.pdf

 東京都は昨年2月、「『2020年の東京』へのアクションプログラム2013」と題した年次計画を発表し、その中で「アジアヘッドクォーター特区の推進」も掲げられている。
 
・「2020年の東京」へのアクションプログラム2013の概要
http://www.chijihon.metro.tokyo.jp/tokyo_of_2020/action_program/booklet_of_ap2013/

 さらに昨年、政府が地方自治体や民間企業などに「国家戦略特区」の規制緩和提案を募り、同年9月、東京都は奇しくも安倍総理の言葉と同じ「世界で一番ビジネスのしやすい国際都市づくり特区」と題する資料を提出し、プレゼンしている。

 この提案こそが、東京都の「やりたい規制緩和」であり、3月の区域指定時の国との交渉の前提となるものである。この資料には、国家戦略特区でアジアヘッドクォーター特区を「バージョンアップ」し、「特区内に新規に設置する多国籍企業の法人税の軽減」「外国企業の日本法人設立の際の英語申請受付」「知的財産を活用して得た所得に対する法人税の軽減」などが掲げられている。

・世界で一番ビジネスのしやすい国際都市づくり特区【国家戦略特区提案書】東京都
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/pdf/39-tokyo.pdf

あわせて読みたい

「都知事選2014」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。