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【IWJブログ】暴走する安倍政権が「国家戦略特区」で国民の「生活」を打ち砕く ~都知事選主要4候補のスタンスは

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 「春先には国家戦略特区が動き出す。そこでは、いかなる既得権益といえども、私の『ドリル』から無傷でいられない」―。

 東京都知事選の告示日前日(1月22日)、安倍総理はスイスで開かれた「ダボス会議」で演説し、「岩盤規制」を打ち破ると世界に向けて宣言した。1月30日に官邸で行われた「国家戦略特区 諮問会議」でも、安倍総理は「国家戦略特区は、安倍政権の成長戦略の要となる規制改革の突破口」と語り、「向こう2年間、国家戦略特区では、岩盤規制といえども、私の『ドリル』から無傷ではいられません」と繰り返し強調した。

 安倍政権が何としてでも推進しようとしているこの「国家戦略特区」は、2月9日に投開票日が迫った都知事選の最重要テーマの一つである。政府は3月に特区の具体的地域を決定することを目指しており、既に国から「ヘッドクォーター特区」の指定を受けて規制緩和を進めている東京都が、最有力候補だからだ。

 「国家戦略特区」は安倍総理を議長とし、小泉構造改革で弱者切り捨ての規制緩和を推し進めた竹中平蔵氏などがメンバーに名を連ねる「諮問会議」で基本方針案が策定される。方針案は2月中にも閣議決定され、その後、特区に指定された地方の長、特区担当大臣、民間業者の三者が参加する「区域会議」が地方ごとに設置され、そこで具体的な規制緩和の内容が定められる。

 この区域会議は「三者全員の合意」を原則としているため、地方の長には「拒否権」が与えられる。しかし反対したからといって、その計画がご破算になることはなく、「全員が合意するまで議論が続けられる」というものだ。つまり、地方の長には「政府の決定した基本方針」に「合意」するか「反対」するかしかできない。

 ネット上では、「国家戦略特区を活用し、東京独自の、例えば『電力自由化特区』を都知事の権限で作ればいい」という意見もあがっているが、実際は、政府が定めた内容の範囲外で新たに独自の「特区」を作る権限は、都知事にはない。

 つまり、都知事は国家戦略特区に対して「是」とするか、「非」とするかのほぼ二者択一の選択を迫られる。そして都知事のこの選択によって、東京都でどのような規制緩和が行われるかが、ほぼ決定付けられる。
【記事もくじ】
・「国家戦略特区」のドリルで打ち砕かれるのは国民の「富」と「生活」
・「混合診療解禁」と「学校民営化」はすでに決定事項!?
・都知事はどの程度「権限」が与えられるのか
・地方の長は圧倒的不利な交渉を強いられる
・「火事場」を利用したショック・ドクトリン
・東京ではすでに「国家戦略特区」の地ならしが進行中
・東京都の「やりたい規制緩和」 都知事は孤立無援に!?
・「安倍特区」に異を唱える宇都宮氏・細川氏と、同調する舛添氏・田母神氏
・「国家戦略特区」が「雇用対策」!? 舛添氏の政策
・「どんどんやったらいい」手放しで賛成する田母神氏
・宇都宮氏は強硬に反対 「まさに地獄の国づくり」
・政策に「特区の活用」を掲げた細川氏の真意とは
・「解雇特区は慎重に検討」 安倍特区に反対姿勢の細川氏
・特区の本質は「竹中構造改革のスタート」であり「TPPの内国化」

■「国家戦略特区」のドリルで打ち砕かれるのは国民の「富」と「生活」

 そもそも国家戦略特区とは、「世界で一番ビジネスのしやすい環境を創出する」という名の下に、大企業、主に米国を中心とした多国籍企業にとって利潤追求の妨げとなる「邪魔な規制」を取り払うものだ。この「邪魔な規制」とは、労働者の権利を守るための雇用ルールや、国民の命や健康を守るための様々な規制が含まれる。安倍総理が言うところの「岩盤規制」である。

 「多国籍企業優先の規制緩和」は、現在交渉が難航しているTPPの理念そのものだ。TPPのモデルケースと言われる米韓FTAで韓国でも、先に特区が作られ、様々な企業優先の規制緩和が行われ、やがて特区に合わせるように60以上の国内法を変えさせられた。つまり特区とは、TPP上陸のための地ならしであり、自らTPPを先取りして内国化してしまうものなのである。

 「国家戦略特区法案」は昨年末の12月7日未明、秘密保護法反対が叫ばれていた、その裏側で、ひっそりと成立した。その具体的な中身を見ると、医療、労働、教育、農業など様々な分野で、徹底的な規制緩和が盛り込まれている。

 解雇も残業代なしの長時間労働もしやすくする、いわゆる「首切り特区」「解雇特区」は昨年の臨時国会で、強い批判を受けて見送られた。しかし法案には、昨年4月1日に改正されたばかりの、労働契約法の「5年以上の有期雇用契約をしたら、期間の定めのない無期雇用契約、正規雇用に転換できる」という内容の、「見直し」が盛り込まれている。

【厚労省HP 労働契約法の改正について】
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/

 1月30日に行われた「諮問会議」では、竹中平蔵氏ら有識者議員から「岩盤規制について」という資料が提出された。そこには今後「直ちに対象とすべき改革事項」として、「混合診療の解禁」「有期雇用規制の見直し
」「労働時間規制の見直し
」「外国人の活用」「公立学校の民営化(株式会社の学校経営への参入)」など様々な分野での規制緩和が提案されている。教育や医療制度のような、本来利益を追求してはならない公共政策の分野に、「利潤追求最優先」の企業が大挙して参入してくのだ。

【資料URL】
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai2/siryo4.pdf

■「混合診療解禁」と「学校民営化」はすでに決定事項!?

 この特区構想の基本方針には、「2015 年度末までの『2年間』を集中取組期間として、『岩盤規制』全般について速やかに具体的な検討を行い、突破口を開く」とある。2年間という拙速なスケジュールではあるが、「まだ2年あるのだから、内容を無効化したり覆すことは可能ではないか」という意見があるかもしれない。しかし、事はそう悠長に構えてもいられない。

 実は、諮問会議で竹中氏が提案した様々な規制緩和の一部は、もう既に「国家戦略特区」に規定事項として組み込まれているのだ。

 これについて、IWJは特区の担当である内閣官房の「地域活性化統合事務局」に直接取材を行った。
IWJ「安倍総理が2年以内に突破するとしている『岩盤規制』のなかで、もう既に決まっているのは何があるのでしょうか?」

担当者「諮問会議の有識者議員からの提案の中で、『公立学校の民営化』と『混合診療の解禁』はもうほとんど決まっています。学校の民営化については、法律の『附則』で、『検討して施行の1年以内に必要な措置を講ずる』と書かれています。

 また、『混合診療の解禁』についても、『保険外併用療養の拡充』という名目で、特区としてやる、と去年の10月に決定しております。これは法改正を必要とする事項ではないということですので、特区『法』には盛り込まれておりません」
 「保険外併用療養の拡充」とは、国内では承認されていない、海外の高価な医薬品について、保険外併用を検討するというものだ。内閣官房の担当者が言ったように、これを「名目」として、「混合診療の解禁」へと規制緩和を拡げていこうというのである。

 国民的議論が全く行われず、国民の意向を全く無視して、官邸主導で具体的な内容までどんどん進められている国家戦略特区において、限られた「民意を示す場」が、冒頭に紹介した「区域会議」である。我々国民は、この区域会議に参加する「自治体の長」を通して、その「是非」を突きつけることになる。

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