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【読書感想】知って感じるフィギュアスケート観戦術

誰も語らなかった 知って感じるフィギュアスケート観戦術 (朝日新書)

内容紹介

フィギュアスケート観戦、ソチ・オリンピックが100倍楽しく観戦できる新書が誕生しました!

試合やアイスショーをもっと面白く観戦するために知っておきたいあれこれを、フィギュアスケートで日本人唯一の五輪金メダリストにして、解説者の荒川静香が、わかりやすく解説。

ソチ・オリンピックで、浅田真央は金メダルをとれるのか?

宿敵キム・ヨナは?

日本のエース・高橋大輔は有終の美を飾れるのか?

新星・羽生結弦は何色のメダルをとるのか?

わかりづらいと評判の採点方式から選手の最新情報、コーチ、振付家の実力まで、今さら聞けないフィギュアスケートの疑問が、これを読めばすべて解決します。

まもなく開会式が行われるソチ・オリンピック。

そのなかでも、フィギュアスケートは、日本人選手の活躍が期待され、最も注目が集まる競技のひとつです。

この新書では、トリノオリンピックの女子フィギュアスケートの金メダリスト、荒川静香さんが、「スケートの観かた」を、選手たちのトレーニングや控え室などでの表情など「実際にその場にいた人間でなければ、わからないこと」をまじえて書いておられます。


僕はフィギュアスケートをけっこう長年観ているのですが、積極的に勉強したこともなく、カーリングみたいに毎回試合前に「ルール説明」を入れてくれるわけでもないので、「採点基準」って、どうなっているのか、よくわからなかったんですよね、率直なところ。

難しそうなジャンプがきまったから、高得点、失敗すれば低得点。動きにキレがあって綺麗だから、高得点……ってことだよね?というくらいのもので。

この新書のなかで、荒川さんは、比較的詳しく、過去と現在の「採点基準」について解説してくれています。

 ジャッジの採点は公平なのかという質問を、よく受けます。

 もちろん人によって意見は様々ですが、ほとんどの場合、納得できるものだと私は思っています。

(中略)

 現在の採点方式では、採点項目を細かく公示して、得点を明確に導き出しているという印象を与える一方で、演技構成点においては、やはりこうした個々のジャッジの好みが強く反映されているのではないかと思います。

 この芸術性の採点基準に関しては、以前の6点満点が10点満点に変わっただけ、という気もするのです(笑)。

 採点項目が5つに示されているものの、実際のその採点の基準はジャッジの「主観」の平均値と、あとは選手個人が積み重ねてきたスケートの評価も反映されています。

「芸術の評価」に関しては、見る人、ジャッジの主観が入るからこそ、数字では表せない感動が生まれるわけです。

 ここを「明確な採点基準」として求めるかどうかは、フィギュアスケート採点における永遠のテーマかもしれません。

荒川さんがこう仰るくらいですから、そんなに不公平なものではない、ということなのでしょうね。

(金メダリストが「ジャッジがおかしい!」なんて言うわけないですけど)


ただ、僕は観戦していて、「ノーミスでキレのある演技をしていた若手よりも、何ヵ所か失敗している名のあるベテランのほうが高得点」ということがあるのが、なんだか納得できないことがあるんですよね。

その点についても、荒川さんは説明しています。

 また採点において、ジャッジに与える印象というものはとても大切です。

 例えばずっと下の順位にいた選手が、ある日突然に素晴らしい演技をしたとしても、そのとき1回だけでは、サプライズの結果は出ないのが普通です。

 その選手にはできる能力があるということを、ある程度、普段からジャッジに知っておいてもらう必要があるのです。半信半疑のものに対して、ジャッジは決して高い演技構成点を与えてはくれません。

 フィギュアスケートというのは、それぞれの選手が積み重ねた実績による「基準点」みたいなものがあって、そこからその大会での演技のデキによって、プラスになったりマイナスになったりするのですね。いつもたいしたことがない選手が「まぐれの完璧な演技」で、勝つことは難しいのです。

 荒川さんによると、ジュニアから上がってきたばかりでシニア緒戦の選手などは、ジャッジにとっては新鮮にみえ、高得点が出ることもあるそうです。


 パトリック・チャン選手に高い得点が出る理由について。

 彼はジャッジ受けする丁寧なスケートをするのですが、それがもっとも顕著に表れているのが、体重の乗っていないほうの足、いわゆるフリーレッグの足さばきでしょう。氷についていないほうの足にも神経が行き届いているのです。膝も伸びて、足がきれいに長く見えます。そして氷に足を置くときも、滑らかで丁寧さを感じるというのが利点です。

 こういうのが「玄人の観かた」なのか……

 ジャッジは、氷についていないほうの足まで、ちゃんと評価しているんですね。

 難しいジャンプに成功した、失敗したというようなわかりやすい要素とは違う、「滑ることそのもの」を、けっこうジャッジは評価しているのです。

 もちろん、オリンピックや世界選手権レベルでは、そこで差をつけるのは難しいのかもしれませんが。


 あと、これを読んでいてあらためて思ったのですが、荒川さんは「勝負師」だったんだなあ、ということでした。

 4回出場した世界選手権は22位、8位、1位、そしてトリノ五輪前年は9位でした。そして2度のオリンピックでは13位と1位。

 一度でも3位などに入賞していたら、優勝を狙う気持ちになっていたかもしれませんが、4位や5位など、あと一歩でメダルに届く、という経験を私は踏んでいないので、頂点に行くまで、一段一段順位を上げていく、といった途中経過がありませんでした。「もう少しでしたね。あと一息だったのに惜しかったね」という結果にはなぜかご縁がなくて、出したくても出すことができなかったのです。

 イリーナ・スルツカヤ選手や(ミシェル・)クワンなど、当時のトップ選手たちは私にとって違う世界の人たちでした。

オリンピックの金メダリストとしては、かなり波のある成績ですよね。

優勝した2つの大会以外は、表彰台すらないのです。


荒川さんは、トリノオリンピックの年、ずっとオリンピックに向けての調整をしていたそうです。

オリンピックでコンディションをピークにもっていくために、シーズンの前半は無理に仕上げず、3位ギリギリくらいで代表に選ばれればいい、と考えていたのだとか。

最終的に荒川選手は全日本選手権で3位に入り、3人目のトリノオリンピック日本代表に選ばれたのですが、いくらギリギリくらいで通過する作戦とはいえ、代表漏れしてしまえばどうしようもない。

トリノでは年齢制限で出場できなかった浅田真央選手がもし出られていたら、荒川さんは出場できなかったかもしれないのです。

4年に一度のオリンピックだからこそ、そこにピークをもっていきたいのはみんな同じでしょう。

でも、手抜きをしたり、ピーク前の状態で代表選考に臨むのは、すごく勇気がいるはず。

選考会の順位だけで選べれば良いのだけれど、そこがピークの選手と、あくまでオリンピックが目標で通過点と考えている選手を比較しなければならないのだから、選ぶ側もけっこう大変でしょうね。


荒川さんは、オリンピックなどの競技スケートからの引退後、プロスケーターとして活躍されているので、「スケート界の過激な暴露話」みたいなものは、残念ながら(?)ありませんが、荒川さんのファン、あるいはオリンピック前に、ちょっと気分を盛り上げておきたい、というフィギュアスケートファン(マニアには物足りないかも)は、手にとってみてはいかがでしょうか。

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