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日本に広がる「察してほしい文化」

すでに元記事は消えてしまったが、以前「察してほしい人」が増えているということに記事の中で触れた。

「察してほしい人」とは、自分が相手にやってほしいこと、言ってほしいことを直接的にではなくほのめかし、それを察した相手に実行してもらう、という人のことだ。

ぼくはこの記事に少なからず感銘を受け、そのあともいろいろ考えていたのだが、日本にはいろんなところで「察してほしい人」が散見しているとわかる。もはや、「察してほしい文化」が形成されているといっても過言ではない。

とりあえず、その一部の例を見て行こう。

残業を察してほしい労働者

昨年末に、内閣府による「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」というものの調査が発表された。

この中での残業の項目が興味深い。

就業者に対し、残業行為を上司がどのように評価している「と回答者自身が思っている」かについて尋ねた結果だが、概して「残業する人は上司から高い評価を受けている」という認識を持つ人が、残業時間が長い人ほど多い結果が出ている。

残業時間が長い人ほど「残業は上司が高評価する」と考えている - ライブドアニュース

反対に、

残業時間が少ない人ほど、残業に対して上司がマイナス評価をしていると回答者自身が思っている割合が高く、残業が多い人ほど割合は低くなる。

同上

重要なのは

残念ながら今調査(速報分)では、実際に上司がどのように考えているかに関する調査報告は無い。

同上

ということである。

あくまで「残業を評価する上司」「評価しない上司」というのは、彼らの想定の中のものである。けれど、その仮想の上司の評価を察した結果が、彼らの残業時間は反映されている、といえる。

もしくはこれは、残業が多い/少ない自分の就労スタイルを、上司が「察して」評価してほしいという希望的観測かもしれない。

新人選手に察してほしいコーチ

察してほしいのは、なにも立場が下の者ばかりではない。立場が上の者が察してほしいことだってある。

その例を、上下関係の厳しそうなスポーツ界から抽出してみよう。

 中日の新人に対してまさかの落胆の声が漏れている。ドラフト1位の鈴木翔太投手(18=聖隷クリストファー)ら8選手による3日間の新人合同自主トレが13日に打ち上げ。15日からは主力とともに全体の合同自主トレがスタートしたが、初のオフとなった14日、新人の誰一人としてナゴヤ球場や室内練習場で休日返上で練習しなかったからだ。

 チーム関係者は「休みとはいえ、たった3日間の自主トレを終えただけでしょ。寮の目の前にいつでも練習できる恵まれた施設があるのに、8人もいながら1人も姿を現さないなんてちょっと寂しいよ…。これまでの新人なら『丸一日何もしないのはちょっと』って、少なくとも2、3人は何かしら汗を流すものなのにね」とこぼす。

(後略)

中日関係者ガク然!休日返上ルーキー「ゼロ」 | 東スポWeb – 東京スポーツ新聞社

めんどくさいと思ったのはぼくだけだろうか。

たった3日練習しただけであろうと、オフと言われたのだからオフなのであって、選手がどのように過ごそうが、それは選手の勝手だろう。

自主的にやるぐらいの気概がないとプロで大成しない、というのは一理あるかもしれない。

しかし、それでトレーニングしないならそれまでであって、球団が是が非でも伸びてほしいなら、いっそ休養日なんて作らなければよかったのである。

ここには、オフにも自主的に身体を動かすよう新人選手に「察してほしい」という球団側の思いがあったのである。

この分だと、中日は今年もやばいかもしれない。

国家規模の「察してほしい」

さて、最後に、国家規模の「察してほしい」を観察しておこう。

年明けにこんなニュースがあった。

元記事が消えたので、2ちゃんからの転載でご容赦を。

運転免許証の偽造を見破れるとして、2007年から切り替えが進められている集積回路(IC)チップ付き免許証のデータ照合機能が活用されていない実態が、読売新聞の取材でわかった。

システムを開発した警察庁は、銀行口座開設や携帯電話契約時に本人確認に使われることを想定していたが、企業側に活用の要請をしていなかったためだ。IC化でこれまでに国民が負担した交付手数料の値上げ分は300億円以上で、同庁は「活用に向けた対策を検討中」としている。

(後略)

no title

ぼくもこのIC付き免許証なのだが、この記事を読んで、なるほどたしかに、免許証の更新以来あの機能をほとんど使ったことがない、と思ったのである。

300億円もかけた施策である。それの企業への働きかけを惜しむというのは、いったいどういうことなのだろう。

ここにも、「察してほしい」文化があるように思えてならない。

警察庁「免許証にICチップが付いたんだよねー(チラチラ」

という触れ込みはできるが、面と向かって

警察庁「偽造免許証を防げるから使ってよ、ねぇ!」

とは言えないのである。

なんてシャイなやつだろう。

先月、ヤマト運輸がこの機能の活用を発表したが、それまで300億円以上を棒に振っていたのであるから、すごい。

ダイナミックなシャイさである。

とまぁこんな感じに、日本の津々浦々に咲き誇る「察してほしい」を観察してみたが、ここまで「察してほしい人」が増えると、かえって「ズケズケ言える人」の方がなにかと得をする世の中になっているのじゃないかと思うのである。

なぜなら、「察してほしい人」というのは、最悪無視してもかまわないからである。相手に察する能力がないなら、その身振りは無効化される。

それに対して直接的にズケズケ言われると、断るにしろ了承するにしろ、相手はリアクションを返さなければならない。畢竟、「ズケズケ言う人」の影響力に、「察してほしい人」のそれは勝てないのである。

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