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減収減益のDeNA、決算資料からは見えない「buy」の理由

2013年2月5日、DeNAの2013年度第三四半期の決算発表が出た。本誌でDeNAの決算について触れるのは初めてだ。決算を軽くサマリーしつつ、決算資料にはない話を今回はお届けしたい。

減収減益のDeNA、中長期的な復活の鍵はマンガボックス

売上、営業利益共に「順当に」減益だ。ここにサプライズはないだろう。

リンク先を見るソーシャルゲームとEC事業となっているセグメント別の紹介は省くが、売上の9割近くソーシャルゲームだ。アナリスト的な観点としては、mobageの下げ止まりがどこなのか、焦点はそこ一本に見える。そして、売上営業利益の下げ止まりは、何らかのヒット作でカバーする構造であるため、この点だけ見て投資判断するのは投機的といえよう。

GREEと比較して面白いと思うのが新規事業だ。短期的にはヒット作が出なければ、DeNAの減収減益トレンドは続くだろうが、新規事業による「仕組み創出」が復活の鍵を握っているといえる。決算資料の新規事業スライドを一部抜粋しておく。

リンク先を見るshowroomという動画関連サービスやアプリゼミというEdTech分野のサービスなど、スタートアップ領域でも注目されている分野への進出を始めている。最近ではチラシルというむしろクックパッドがやった方がいいんじゃないかという、いつどこの店で買うのかが一番お得かわかるサービスも始めた。これはO2Oといえる。

昨年のメッセージングのcommの急拡大から一転しての縮小や、Spotify上陸が囁かれる中での音楽ストリーミングのGroovyなど、ヒットしたとは言い難い新規事業が多々あった中で、DeNA復活の真打ちとなる新規事業はやはり「マンガボックス」ではないかと思われる。

筆者はThe Startupではない別の取材にて、マンガボックスとDeNA子会社で小説やマンガのCGMを運営するエブリスタに取材する機会を得た。マンガボックスやエブリスタをDeNAが手掛ける理由を紐解くと、そこにDeNA復活の鍵が見えてくる。

ヒットIPを生み出す措置のエブリスタとマンガボックス

マンガボックス事業統括の川崎氏によると、「ゲーム」と「マンガ」を「IPビジネス(知的財産ビジネス)」という共通点で括り、ゲームのプラットフォームにmobageがなったように、マンガボックスはマンガのプラットフォームを目指すという。下記の図を参照。

リンク先を見るリンク先を見る

IPビジネスの考え方として、先行しているゲーム分野では各SAPによる「IP獲得競争」が激化している。家庭用ゲーム機のソフトであった「ドラクエ」などの人気タイトルをソーシャルゲーム化して、その知名度に紐づくファンを獲得して売上を上げようとするトレンドが加速している。勿論、ゲームの質が伴わなければヒットしないが、人気IPの獲得によってヒットとなる確率を高められるという考え方は否定できないであろう。

IPはゲームではスクエニやコナミのような家庭用ゲーム機ソフトを作ってきたメーカーに所有権があり、マンガでは出版社にある。ビジネスを展開する上で、IPというコアコンピタンスを他社に依存し続けるのは危険であると考え、DeNAでは自社で所有権を持てるIPを量産する措置を作る必要性を感じた。

その一つがエブリスタだ。エブリスタは小説やマンガをCGMでユーザーから募り、人気作品は単行本化する。人気作家をインキュベーションするような仕組みと化している。エブリスタはドコモとの合弁会社で、DeNAの保有比率は70%となっている。(注:比率に誤りがあったため、2月6日に訂正)

マンガボックスはエブリスタの人気作品をより広く拡散していく措置であるともいえる。既存IP作品とも組み合わせつつ、エブリスタの作品も散りばめる。その中から、大きなヒット作品が出れば、Kindleなどの他のオンラインチャネルや紙で単行本化し、そこで収益化を図る。マンガ起点の人気ゲームもあることから、エブリスタ経由で生まれた超人気作品で単行本がバカ売れしたものをさらにゲーム化してアップセルを狙う。

筆者がこの仕組みを秀逸だと思ったのは二点。

①:外部に依存していたIPの内製化
②:ゲームと比べてマンガや小説の制作コストはずっと低い

1つの大ヒットが他の赤字をほぼ全て回収するという構造であるという点で、ゲーム事業とマンガ事業はベンチャーキャピタル事業と似ている。利益を出すために必要なことは「いかに多くの作品を安く仕込んで」「ヒットを出す確率を上げるか」ということ。ゲームを単発で作り続けるよりは、ヒットIPとなり得るようなマンガを自社で仕込んで、ヒットしたものをゲーム展開してアップサイドを取る。その方がポートフォリオとしてヒット率上げられるのではないか。

本誌の読者向けにスタートアップファイナンスに喩えると、現状のゲーム制作は確度の低いシリーズB投資のようなものだ。制作費は高騰する一方で、必ずしもヒットする保証はない。一方のマンガは漫画家と編集者が1人ずつ付けばいいくらいで、エンジェル投資のようなものだ。数百万あれば一つの作品を継続して続けることが出来る。

下手するとゲーム1作とマンガ1作では100倍の制作費の差となる。マンガはすぐに単行本化して収益を得られるわけではないが、ゲーム1本作る予算でマンガ100作作った方が、メガヒットが出る確率が上がるかもしれない。そういう考え方だ。

エブリスタで作品を集め、マンガボックスで拡散し、人気となったIPをゲーム化してmobageで展開するというのが、勝利の方程式だ。

中長期的にDeNAは大ヒット自社IPが生まれる確率が高い

IPを他社に依存し続ける構造から、時間はかかっても自社で生み出す措置を作ることに舵を切ったDeNA。何が当たるかわからないボラティリティの高い時代において、ヒットを生み出す措置を作ることは重要で、それが成功しているのがコロプラではないだろうか。

減収減益で株価の低迷が続くだろうが、このDeNAの戦略の鋭さと知的EXILE的(体育会で男子校的という比喩)な社風から、必ずやヒット作を生み出し、巻き返してくるであろう確信が持てた。社内では懸垂マシーンを使って懸垂しながらミーティングすることもあるという。なんというEXILE臭だ。株価が下がり続けるであろう今だからこそ、本質的に競争力のあるDeNAは中長期的には「buy」ということができると筆者は感じた。

ゲーム関連銘柄はヒット作に左右されることがほとんどであり、投機的な状況といえるため本誌ではほとんど追ってこなかった。コロプラやDeNAのようにヒットする「仕組み」を作れる企業に中長期的な競争優位性を感じる。

参考:DeNAのマンガボックスのグロースハックが巧みな件

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