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直接民主制と間接民主制

大阪市長の、辞任再出馬を見ていると、「フランスのシャルル・ド・ゴール元大統領と似ているな。」と思います。いつも、縁遠いフランスのネタから導き出すアプローチは申し訳ないと思いますが、私はそこしか知らない人間でしてご容赦ください。

 フランスは第4共和政時代(1946-1958年)、とても不安定でした。議会構成が細分化してしまい、頻繁に連立の組み替えと首相の交代が起こりました。それが政治危機を招き、いつも政権が不安定でした。第4共和政時代には、卓越した、そして国民的人気もあったピエール・マンデス・フランス首相みたいな政治家もいたのですが、マンデス・フランスであっても議会の足場が安定せず、インドシナ紛争にケリを付けた後、半年強で辞任させられています。

 最終的に、アルジェリア危機に対応出来ず、第4共和制は1958年に崩壊します。ド・ゴールは、こういう経験から間接代表制に信頼を置かず、直接に国民に訴えるスタイルを好みました。1962年、憲法改正を通常の改正手続きに依らず、国民投票のみで行ったことがありました。しかも、その内容は大統領を直接公選制にするというもの。徹底的に議会民主政治によるによる間接代表制を嫌っていました。 第5共和制当初は、新憲法で行政に非常に大きな権限が与えられており、法律でない行政命令でバンバン物事を決めて行くことが出来るようになっていました(その後、徐々に法律事項の範囲が拡大してきていますが。)。

 ド・ゴールと大阪市長は似ていますね。議会がうるさいから、それを飛ばすためのツールとしての「国民の声」という理屈は強力なツールです。私は現職時代、憲法審査会で「国民投票はカリスマ指導者のツール。その対象を広げすぎてはいけない。」と話しました。日本の国民投票法は、議会による発議で条件が厳しいので、そうそう為政者が濫用できるわけではありませんが、本質的には国民投票というのは議会を飛ばすツールなのです。

(ちょっと話がずれますけど、一般的国民投票制度を本当に設けたいのであれば、発議要件は憲法改正と比較して少し下げない限り、多分実現しないと思います。国民投票を発議するためには、今の条件ではその時々の与党が合意しなくてはならないですけども、与党がそうそう総選挙に類似した効果を持つ国民投票を発議するかというと、あまりないと思います。国民投票は、否決されれば恐らく内閣総辞職くらいのパワーがあります。そんなものをやるかというと、あまりやりたがらないでしょう。であれば、一般的国民投票制度を設け、それが機能するためには両院の2/3なんていう要件を設けるのはハードルが高すぎます。まあ、そういう議論にはならないでしょうが。)

 しかし、ド・ゴールは1969年、自身の不人気と政権の行き詰まりを打開しようと、地方改革及び上院改革を国民投票に掛けます。しかし、そこで否決され、辞任せざるを得なくなります。この時の改革は、本当に国民投票に掛ける必要があったのかどうか不明でして、どちらかと言えば「タガを締め直す」という意味合いが強かったと思います。正に政権信任のツールとして、国民投票を使ったという例だと思います。そして、失敗しました。

 大阪市長はド・ゴールの歩んだ道を学んでみると良いと思います。「直接に国民に訴えるスタイルは上手く回っている時は良いが、上手く回らなくなるとすぐに退出を求められる。」のです。そこには、もはや議会、間接代表制という緩衝材は存在しません。国民と繋がっていることで正統性を維持するスタイルは、その足場において潜在的に不安定な要素を孕むということなんだろうと思います。

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