記事
- 2014年02月03日 01:42
課題の多い策源地攻撃_新防衛計画大綱等 その5
2/2
また、これは、少し穿ちすぎな見方かもしれませんが、最近の空自の改編は、空自内にも特殊部隊を編成しようとの思惑がある可能性が見て取れます。
空軍の特殊部隊にはこのコンバット・コントローラーの他に、主に戦闘捜索救難(CSAR:Combat Search and Rescue)を行うパラレスキュージャンパーなどがあります。
空軍の特殊部隊については次のサイト参照
http://www.f5.dion.ne.jp/~mirage/hypams00/af_stu.html
このパラレスキュージャンパーは、現在航空救難を行っているメディックと呼ばれる救難員に戦闘能力を付与したものですが、空自の救難部隊は、昨年3月に航空支援集団から、航空戦術教導団を隷下に収めることになる航空総隊に編成替えされています。
航空戦術教導団の研究に、メディックを関わらせる必要があれば、航空総隊として簡単に処置ができるようになっています。
空自が実際に特殊部隊を編成することになれば、恐らく航空支援隊と航空救難団のメディックを合流させる形で編成して行くことになるでしょう。
航空支援隊母体の空自特殊部隊にせよ、特殊作戦群などの陸自部隊にせよ、あるいは米軍のように、陸や海兵の特殊部隊に少数のコンバット・コントローラーを派遣する運用にせよ、北朝鮮や中国潜入してこれらの作戦を実際に行いうるのかという点について、ネット界隈では自衛隊特殊部隊の能力に否定的な見方をする方もいます。
防衛省・自衛隊では、これから検討される事項ですが、誘導に徹して積極的に戦闘を行わない運用であれば、有意な数のTELを破壊することに繋がり、イージス等による弾道ミサイル防衛と併せ、私は、十分に実効性のある作戦を展開することは可能だろうと思います。
湾岸戦争では、コンバット・コントローラーではない特殊部隊は、TELを直接攻撃するため、敵に接近せざるを得なくなった上、攻撃により存在を暴露してしまうため反撃も受けましたが、コンバット・コントローラーとして誘導に徹するなら、長期の潜伏も可能でしょう。
忍耐力という点では、日本人の方が欧米人よりも優れているように思えますし、対抗訓練等で見せる陸自の忍耐力に裏打ちされた潜伏能力は、異常な程です。
彼等の潜入手段については、完全な秘匿を図るため、潜水艦が主用される可能性が高いと思いますが、海自、陸自の間で、現在どの程度検討、訓練されているのかは、情報がありません。
緊急に潜入する場合は空路になりますが、アメリカの特殊作戦機MC-130に相当する機体は陸海空自衛隊ともに保有していませんし、今後の整備についても不明です。
ですが、MC-130のように、フレア等の自衛装備はないものの、赤外線暗視装置や高度な航法装置を備え、海上や山岳の谷間を飛ぶ訓練にも長けた救難部隊のU-125Aが多数あります。航続距離も、北朝鮮への潜入ならば十分過ぎるほどです。
このU-125Aについても、前述のように航空救難団が航空総隊隷下に編制換えされているため、潜入手段の検討に使用される可能性は十分にあるでしょう。
また、航続距離については問題がありますが、同様に救難部隊のヘリUH-60Jも特殊部隊の潜入には適切な装備を有しています。
次に、仮に、ターゲティングができたとしても、それなら策源地攻撃か可能かというと、そんな簡単にはいきません。
空自機は、CAS(近接航空支援)を実施するため、F-2部隊を中心に、対地攻撃のための装備を持ち、訓練も実施しています。
ですが、CASは、基本的に、日本国内に侵入してきた敵を叩くことを想定しており、敵が厳重に構成した防空網を突破して攻撃することは、また別物です。
CASとは異なり、敵防空網を破壊することは、SEAD(Suppression of Enemy Air Defense:敵防空網制圧)あるいはDEAD(Destruction of Enemy Air Defence:敵防空網破壊)と呼ばれる作戦ですし、目標本体を攻撃する作戦は、AI(Air Interdiction:航空阻止)あるいは、OCA(Offensive Counterair:攻勢対航空(飛行場等を攻撃する場合))と呼ばれる作戦になります。
航空自衛隊の場合、SEADに不可欠なARM(対レーダーミサイル)は保有していませんし、搭載可能な航空機もありません。
ステルス機であるF-35が運用できるようになれば、必ずしもSEADを行わずに、本来の攻撃目標を攻撃することも可能ではありますが、ステルスが万能とは言えないことは、F-117がコソボ空爆においてSA-3によって撃墜された事例でも証明されています。
そのため、航空戦術教導団での研究でも、SEADを如何にして行うかは検討されるでしょう。
ARMによる攻撃は、三沢のワイルド・ウィーゼルと呼ばれるSEAD専門部隊に依頼するか、自衛隊でも能力を獲得することになると思われます。
また、ARMの他に、SEADの主要手段になるのが、ECM(電子妨害)による電子戦です。航空戦術教導団に、電子戦を行う電子戦支援隊が組み込まれているのも、このためです。
ですが、報道でも指摘されている通り、自衛隊ではスタンドオフジャミングの可能な電子戦機は、電子戦訓練機として配備されているEC-1のみで、しかも1機しか保有していません。(YS-11EAも、電子戦訓練機ですが、こちらはレーダー妨害はできない)
おまけに、能力も十分とはお世辞にも言いがたく、実戦投入は難しいことから電子戦”訓練機”とされている実情があります。
F-4は、AN/ALQ-131というECMポッドが使用できますが、F-4自体がF-35に更新されてゆく予定で、その代わりになる予定のF-15の電子戦機転用は、まだ具体化が見えてきていません。おまけにこれらはエスコートジャマーであり、スタンドオフジャマーではありません。
SEADやECMに頼らず、F-35のステルス頼みで策源地攻撃を行うことに関しては、前述のようにF-117の撃墜事例があるため、危険です。
この事例では、SA-3という旧式ミサイルが使用されたと見られていますが、実は、波長の長い電波を使用する旧式レーダーの方が、共振と呼ばれる現象が発生し、ステルスの発見には有効なのです。
ちなみに、この共振を利用した対ステルスレーダーは、今年度(25年度)から防衛省でも研究が行われています。
ちょっと脱線しましたが、北朝鮮の警戒管制及び地対空ミサイル用レーダーは旧式が多く、波長が長いレーダーが多いため、対ステルスレーダーには改造しやすいのです。
ただし、その反面、旧式で長波長のレーダーはECMには弱いため、ECMは有効に作用するでしょう。
ですので、策源地攻撃におけるECMについては、十分研究を行い、防衛力整備を行う必要があります。
この他にも問題なのは、以外に思うかもしれませんが、空自では敵の防空火網を突破するための空中機動など、基本的なノウハウが乏しい事です。
航空戦術教導団には、飛行教導隊と高射教導隊が組み入れられる予定です。共に、戦闘機部隊と高射部隊のエリート部隊であり、高い能力を持っていますが、実はどちらも敵の防空火網突破のためのノウハウは持っていません。
飛行教導隊は、アグレッサーと呼ばれ、仮想敵飛行部隊の戦術を研究し、彼等の戦技を真似ることで、各地の飛行隊が対抗訓練を行う際の適役を務めます。当然、ノウハウを持っているのは、航空機対航空機のもので、航空機対防空火網戦力(地対空ミサイル・対空機関砲)のものではないのです。
一方、高射教導隊は、アグレッサーではありません。各地の高射部隊等と同じ立場に立ち、パトリオット及び基地防空火器での戦技を研究・指導しています。知見として、空自が装備するパトリオット等による防空火網の構成とその弱点は熟知していますが、SA-3等、北朝鮮が保有する防空火器での防空火網については、十分なノウハウの積み上げがありません。
しかし、そう言ったノウハウが皆無な訳ではありません。F-2装備部隊は、FSだったF-1の時代から、対艦・対地攻撃を主任務にしており、SAM回避機動など、防空火網を突破するためのノウハウを持ってはいます。ですが、飽くまで実働部隊であり、十分な研究とそれを積み上げる余力がないのが実情です。
そのため、航空戦術教導団では、100人と報じられている団司令部の要員の中に、数多くのF-2パイロットが入るのではないかと思われます。
なお、トマホークで攻撃できると考えている方が多くいると思いますが、事前に目標位置が分かる固定目標であれば、トマホークは有用ですが、TELのように移動する目標をトマホークで攻撃しても効果は疑わしいです。
以上のように、策源地攻撃には、課題が山積みです。
ここで述べた他にも、海自艦との協同など、検討すべき課題が多数あり、策源地攻撃を実行するまでには、航空戦術教導団での研究が欠かせません。
しかし、攻撃は最大の防御と言われるように、弾道ミサイル防衛のみでは、敵の行動に制約を与えることができないため、政治的には別問題として、軍事的に策源地攻撃の能力を持つことは極めて重要です。
早期に研究を推進し、必要な能力を獲得する防衛力整備を進めて欲しいと思います。 【関連記事】
・初めてまともに規定された戦略とドクトリン_新防衛計画大綱等 その1
・画期的な戦車削減_新防衛計画大綱等 その2
・宇宙空間における対応_新防衛計画大綱等 その3
・水陸両用戦機能の先祖返り_新防衛計画大綱等 その4
空軍の特殊部隊にはこのコンバット・コントローラーの他に、主に戦闘捜索救難(CSAR:Combat Search and Rescue)を行うパラレスキュージャンパーなどがあります。
空軍の特殊部隊については次のサイト参照
http://www.f5.dion.ne.jp/~mirage/hypams00/af_stu.html
このパラレスキュージャンパーは、現在航空救難を行っているメディックと呼ばれる救難員に戦闘能力を付与したものですが、空自の救難部隊は、昨年3月に航空支援集団から、航空戦術教導団を隷下に収めることになる航空総隊に編成替えされています。
航空戦術教導団の研究に、メディックを関わらせる必要があれば、航空総隊として簡単に処置ができるようになっています。
空自が実際に特殊部隊を編成することになれば、恐らく航空支援隊と航空救難団のメディックを合流させる形で編成して行くことになるでしょう。
航空支援隊母体の空自特殊部隊にせよ、特殊作戦群などの陸自部隊にせよ、あるいは米軍のように、陸や海兵の特殊部隊に少数のコンバット・コントローラーを派遣する運用にせよ、北朝鮮や中国潜入してこれらの作戦を実際に行いうるのかという点について、ネット界隈では自衛隊特殊部隊の能力に否定的な見方をする方もいます。
防衛省・自衛隊では、これから検討される事項ですが、誘導に徹して積極的に戦闘を行わない運用であれば、有意な数のTELを破壊することに繋がり、イージス等による弾道ミサイル防衛と併せ、私は、十分に実効性のある作戦を展開することは可能だろうと思います。
湾岸戦争では、コンバット・コントローラーではない特殊部隊は、TELを直接攻撃するため、敵に接近せざるを得なくなった上、攻撃により存在を暴露してしまうため反撃も受けましたが、コンバット・コントローラーとして誘導に徹するなら、長期の潜伏も可能でしょう。
忍耐力という点では、日本人の方が欧米人よりも優れているように思えますし、対抗訓練等で見せる陸自の忍耐力に裏打ちされた潜伏能力は、異常な程です。
彼等の潜入手段については、完全な秘匿を図るため、潜水艦が主用される可能性が高いと思いますが、海自、陸自の間で、現在どの程度検討、訓練されているのかは、情報がありません。
緊急に潜入する場合は空路になりますが、アメリカの特殊作戦機MC-130に相当する機体は陸海空自衛隊ともに保有していませんし、今後の整備についても不明です。
ですが、MC-130のように、フレア等の自衛装備はないものの、赤外線暗視装置や高度な航法装置を備え、海上や山岳の谷間を飛ぶ訓練にも長けた救難部隊のU-125Aが多数あります。航続距離も、北朝鮮への潜入ならば十分過ぎるほどです。
このU-125Aについても、前述のように航空救難団が航空総隊隷下に編制換えされているため、潜入手段の検討に使用される可能性は十分にあるでしょう。
また、航続距離については問題がありますが、同様に救難部隊のヘリUH-60Jも特殊部隊の潜入には適切な装備を有しています。
次に、仮に、ターゲティングができたとしても、それなら策源地攻撃か可能かというと、そんな簡単にはいきません。
空自機は、CAS(近接航空支援)を実施するため、F-2部隊を中心に、対地攻撃のための装備を持ち、訓練も実施しています。
ですが、CASは、基本的に、日本国内に侵入してきた敵を叩くことを想定しており、敵が厳重に構成した防空網を突破して攻撃することは、また別物です。
CASとは異なり、敵防空網を破壊することは、SEAD(Suppression of Enemy Air Defense:敵防空網制圧)あるいはDEAD(Destruction of Enemy Air Defence:敵防空網破壊)と呼ばれる作戦ですし、目標本体を攻撃する作戦は、AI(Air Interdiction:航空阻止)あるいは、OCA(Offensive Counterair:攻勢対航空(飛行場等を攻撃する場合))と呼ばれる作戦になります。
航空自衛隊の場合、SEADに不可欠なARM(対レーダーミサイル)は保有していませんし、搭載可能な航空機もありません。
ステルス機であるF-35が運用できるようになれば、必ずしもSEADを行わずに、本来の攻撃目標を攻撃することも可能ではありますが、ステルスが万能とは言えないことは、F-117がコソボ空爆においてSA-3によって撃墜された事例でも証明されています。
そのため、航空戦術教導団での研究でも、SEADを如何にして行うかは検討されるでしょう。
ARMによる攻撃は、三沢のワイルド・ウィーゼルと呼ばれるSEAD専門部隊に依頼するか、自衛隊でも能力を獲得することになると思われます。
また、ARMの他に、SEADの主要手段になるのが、ECM(電子妨害)による電子戦です。航空戦術教導団に、電子戦を行う電子戦支援隊が組み込まれているのも、このためです。
ですが、報道でも指摘されている通り、自衛隊ではスタンドオフジャミングの可能な電子戦機は、電子戦訓練機として配備されているEC-1のみで、しかも1機しか保有していません。(YS-11EAも、電子戦訓練機ですが、こちらはレーダー妨害はできない)
おまけに、能力も十分とはお世辞にも言いがたく、実戦投入は難しいことから電子戦”訓練機”とされている実情があります。
F-4は、AN/ALQ-131というECMポッドが使用できますが、F-4自体がF-35に更新されてゆく予定で、その代わりになる予定のF-15の電子戦機転用は、まだ具体化が見えてきていません。おまけにこれらはエスコートジャマーであり、スタンドオフジャマーではありません。
SEADやECMに頼らず、F-35のステルス頼みで策源地攻撃を行うことに関しては、前述のようにF-117の撃墜事例があるため、危険です。
この事例では、SA-3という旧式ミサイルが使用されたと見られていますが、実は、波長の長い電波を使用する旧式レーダーの方が、共振と呼ばれる現象が発生し、ステルスの発見には有効なのです。
ちなみに、この共振を利用した対ステルスレーダーは、今年度(25年度)から防衛省でも研究が行われています。
ちょっと脱線しましたが、北朝鮮の警戒管制及び地対空ミサイル用レーダーは旧式が多く、波長が長いレーダーが多いため、対ステルスレーダーには改造しやすいのです。
ただし、その反面、旧式で長波長のレーダーはECMには弱いため、ECMは有効に作用するでしょう。
ですので、策源地攻撃におけるECMについては、十分研究を行い、防衛力整備を行う必要があります。
この他にも問題なのは、以外に思うかもしれませんが、空自では敵の防空火網を突破するための空中機動など、基本的なノウハウが乏しい事です。
航空戦術教導団には、飛行教導隊と高射教導隊が組み入れられる予定です。共に、戦闘機部隊と高射部隊のエリート部隊であり、高い能力を持っていますが、実はどちらも敵の防空火網突破のためのノウハウは持っていません。
飛行教導隊は、アグレッサーと呼ばれ、仮想敵飛行部隊の戦術を研究し、彼等の戦技を真似ることで、各地の飛行隊が対抗訓練を行う際の適役を務めます。当然、ノウハウを持っているのは、航空機対航空機のもので、航空機対防空火網戦力(地対空ミサイル・対空機関砲)のものではないのです。
一方、高射教導隊は、アグレッサーではありません。各地の高射部隊等と同じ立場に立ち、パトリオット及び基地防空火器での戦技を研究・指導しています。知見として、空自が装備するパトリオット等による防空火網の構成とその弱点は熟知していますが、SA-3等、北朝鮮が保有する防空火器での防空火網については、十分なノウハウの積み上げがありません。
しかし、そう言ったノウハウが皆無な訳ではありません。F-2装備部隊は、FSだったF-1の時代から、対艦・対地攻撃を主任務にしており、SAM回避機動など、防空火網を突破するためのノウハウを持ってはいます。ですが、飽くまで実働部隊であり、十分な研究とそれを積み上げる余力がないのが実情です。
そのため、航空戦術教導団では、100人と報じられている団司令部の要員の中に、数多くのF-2パイロットが入るのではないかと思われます。
なお、トマホークで攻撃できると考えている方が多くいると思いますが、事前に目標位置が分かる固定目標であれば、トマホークは有用ですが、TELのように移動する目標をトマホークで攻撃しても効果は疑わしいです。
以上のように、策源地攻撃には、課題が山積みです。
ここで述べた他にも、海自艦との協同など、検討すべき課題が多数あり、策源地攻撃を実行するまでには、航空戦術教導団での研究が欠かせません。
しかし、攻撃は最大の防御と言われるように、弾道ミサイル防衛のみでは、敵の行動に制約を与えることができないため、政治的には別問題として、軍事的に策源地攻撃の能力を持つことは極めて重要です。
早期に研究を推進し、必要な能力を獲得する防衛力整備を進めて欲しいと思います。 【関連記事】
・初めてまともに規定された戦略とドクトリン_新防衛計画大綱等 その1
・画期的な戦車削減_新防衛計画大綱等 その2
・宇宙空間における対応_新防衛計画大綱等 その3
・水陸両用戦機能の先祖返り_新防衛計画大綱等 その4



