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ついに“デッドライン”を越えてしまった中国

「ああ、中国はついに“デッドライン”を越えてしまったなあ」。私は最近、そんな思いがしている。中国というより「中国共産党」と言い換えた方がいいかもしれない。「ついに中国共産党は“デッドライン”を越えてしまったなあ」と。

1月16日付のフランスの「ル・フィガロ」に駐フランス中国大使が「日本の首相の靖国参拝が中国に衝撃を与えた理由」と題し、「ヒトラーの墓に花をたむける人がいると想像してみて欲しい」と批判した。

4日後の1月20日、今度は程永華・駐日中国大使は、四谷にある上智大学の講演会で、靖国参拝について「日中関係にとって致命的な打撃だ。最後のレッドラインを踏み越えた」と言ってのけた。

そして1月29日には、国連安保理の公開討論会で中国の劉結一・国連大使が約50カ国の大使を前に「歴史を変えようとする試みは地域の平和を揺るがし、人類の平和的発展に挑戦するものだ」と日本を激しく非難した。

そして昨日(2月1日)、ドイツで開かれているミュンヘン安全保障会議で、中国全国人民代表大会の傅瑩・外事委員会主任委員が「最も重要なのは日本が第2次大戦の犯罪を否定していること。歴史教育の失敗だ」「日本が大戦で起きたことに誠実に向き合えば、周辺国と和解できる」「(尖閣の)主権は放棄しない」と熱弁を振るったのである。

つまり、中国は、世界に向かって「日本は異常な国である」という発信をしつづけている。私は、戦後一貫して平和の道を歩んできた日本を、ここまで罵る中国(中国共産党)の姿を見て、「ああ、これでもう中国共産党はデッドラインを越えてしまった」と思ったのである。

それは、日本人がもう中国(正確には、中国共産党)のご機嫌をとったり、へり下ったりする必要はなく、向こうから近づいて来ないかぎり、「相手にしなくていい」存在になったということである。

前回のブログで私は、中国に初めて行った頃の“日本人に優しい中国人”のことに触れさせてもらった。日本人に敬意を持ってくれて、優しく接してくれたあの頃の中国人が、私は懐かしい。

いちいちエピソードを挙げればきりがないが、1982(昭和57)年に初めて訪中し、1か月半も北京で暮らした私は、その後、90年代半ばまで毎年のように中国に行き、優しく好意的な中国人に数多く出会った。

いろいろ相談に乗ってもらったり、力を貸してくれた底抜けに人がよかった中国人を私は数多く知っているし、今も感謝している。しかし、これまでブログで繰り返し書いてきた通り、90年代の江沢民時代からの徹底的な「反日教育」は、今の30代半ば以下の中国人を「日本は憎悪の対象」としか見ない人間にしてしまった。

「教育の失敗」というのなら、本当に中国は“歴史的な”教育の失敗を犯してしまったと思う。鉄は国家なり、の言葉があるが、日本人は、中国の粗鋼生産など、インフラを整備させるためにとことん尽力し、そして、有償無償を合わせると総額6兆円を超える対中援助をおこなってきた。しかし、いまその私たち日本人に対して「おまえたちの役割は終わった」として、中国共産党は日本と日本人を“切り捨てた”のである。

私は、靖国参拝を「ヒトラーの墓に花を手向けることだ」と世界に向かって公言した中国共産党に対して、日本人は怒りを表現していいと思う。

靖国は、明治2年に「東京招魂社」としてスタートし、吉田松陰をはじめ、ペリー来航以来の国事殉難者およそ250万人の魂を御祭神とする。私の郷土の先輩でもある坂本龍馬も、中岡慎太郎も、武市半平太も、その中に入っている。

太平洋戦争において、子孫を残すこともできず無念の思いを呑んで死んでいった若者たちをはじめ、気の遠くなるような数の魂が祀られている神社でもある。

国の礎となって死んでいった先人たちに、後世の人間がその死を悼み、感謝の気持ちを伝え、「これから、皆さんのように無念の思いで死んでいく人が出る世の中にならないよう誓う」のは大切なことだと私は思う。先人の労苦に頭(こうべ)を垂れることは「人の道」としてあたりまえの行為だからだ。

しかし、これを「ヒトラーの墓に花をたむけること」と中国は言ってのけた。極端な言い方をすれば、「坂本龍馬をはじめとする250万人の国事殉難者」は、「ヒトラーである」と、中国に言われたのである。

後世の日本人が、国のために死んでいった先人を悼む行為を「なぜ、ここまで悪しざまに言われなければならないのか」と思うのは自然の感情だろう。

私は、多くの日本人と同じく、ここまで内政干渉、すなわち日本人の精神文化にまで干渉されることに「ノー」と言いたい。しかし、別に、彼(か)の国と同じレベルに立って、「ことを荒立てる必要はない」と思う。

ただ、これまでも繰り返し主張してきたように、中国とは「距離を置く」ことを考えて欲しい。つまり、経済的な関わりをできるだけ少なくしていって、日本人は、“脱中国”の姿勢とスピードを顕著にすべきだと思う。

あの巨大な中国市場をあきらめることは、たしかに日本の企業にとって、これほど苦しいことはないだろう。しかし、是非、そうして欲しいと思う。多くの国事殉難者をヒトラーと称して非難する国に、少なくとも膝を屈してまで商売することはやめて欲しい。

その意味で、日本経済は「臥薪嘗胆」の時代が来たと思う。要するに、“我慢比べの時代”が来たということだ。しかし、これは永遠につづくわけではない。中国共産党が、「そこまで日本は怒っているのか」と思うまで、臥薪嘗胆をつづけようということである。

中国は、よく「面子(メンツ)の国」と言われる、しかし、それより明確なのは「功利の国」だということである。自分たちが損をすることがわかっていて、それでも面子を押し通す国柄ではない。そのあたりは、“武士は食わねど高楊枝”という日本人とは根本的に異なるのである。

中国の人権活動家、胡佳(こか)氏が、つい1月26日、北京市公安当局に一時、身柄拘束された。胡氏は拘束前、別の人権活動家への有罪判決やウイグル族学者の連行をネットで取り上げたことにより、「身柄拘束された」と見られている。

昨年7月に身柄拘束されて以来、半年間も“思想改造”を受けたとされる朱建栄・東洋学園大学教授は、この1月17日になって、やっと解放された。中国の思想弾圧と人権抑圧は、国際人権救済機構「アムネスティ(Amnesty International)」の大きな懸念であり、課題になっている。

その国が、日本に対して、ここまで苛烈な内政干渉を強めている。日本は、経済で自らの“怒り”を表わせばいいだろうと思う。いや、それしか方法はないのではないだろうか。戦後一貫して「自由」と「民主主義」を追及してきた日本が、中国にここまで言われる情けなさと愚かさを日本人は噛みしめるべきだろう。

私は、日本を非難している「中国」とは、「中国共産党独裁政権」であり、反日教育を受け続けた30代半ばより若い世代が中心であることを忘れてはいけないと思っている。

もし、日本人が怒りを向けるなら、それは中国人に対してではなく、「中国共産党独裁政権に対して」であることを忘れてはならないという意味である。なぜなら、胡佳氏をはじめ、多くの中国人が今も独裁政権下で弾圧を受けつづけている。自由に物も言えない社会で彼らは暮らしているのである。

あの独裁政権が、中国人民に対して向けている高圧的で自由圧殺の姿勢を、「中国人民」だけでなく、「日本」に対しても向けてきたのだ。私は、彼ら中国人民も同じように中国共産党の迫害を受けている人たちであることを覚えていて欲しいと思う。

最近、私は講演をする度に、「門田さんは、中国への厳しい指摘が多いですね」と声をかけられることが多い。そういう時、私は、「はい。私は本当の意味の“親中派”ですから」と答えている。

日本の「親中メディア」は、中国共産党独裁政権にひれ伏しているのであって、それが「親中だ」と完全に勘違いしている。私は自分が若い頃、いろいろ助けてもらった中国人のことを今も時々、思い浮かべる。

文化大革命の地獄の十年を耐え抜き、日本人にも敬意と尊重の気持ちを忘れず、底抜けに人がよかったあの頃の中国人に、なんとか幸せでいて欲しいと思う。彼らのことを心底案じている点で、私は本当の意味での“親中派”だと思っている。

すなわち臥薪嘗胆をつづけたあとの日本人は、共産党独裁政権下で苦労し、迫害を受けている中国人たちになんとか手を差し伸べて、いつかは真の意味の「日中友好」を成し遂げて欲しいと思うのである。

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