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検察審査会が鳩山首相ら「不起訴相当」議決と異例の付記

(1)鳩山首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」の偽装献金事件で、東京第4検察審査会は、首相らの「不起訴」を「相当」と議決した。

この「不起訴相当」議決は、当然予想される議決内容であった。
証拠がない限り鳩山首相らの刑事責任が問えないのは憲法・刑事法上当然のことである。
読売新聞(2010年4月27日00時08分 )
首相「不起訴相当」…検察審査会議決の要旨

 鳩山首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」の偽装献金事件で、首相の不起訴を「相当」とした東京第4検察審査会の議決(26日公表)の要旨は次の通り。

 【勝場啓二元公設第1秘書の供述調書】
 鳩山(首相)は、事務所の経理にはほとんど興味はなく、自分からも鳩山に政治資金収支報告書を見せたことはない。ごくまれに政治資金に関する不祥事が報道された際などに、「うちは大丈夫か」と聞かれ、「ご安心下さい」などと答えていた。
 虚偽の収支報告書を作成したのは2000年からで、政治資金規正法が改正され、同年1月から会社、労働組合からの寄付が禁止され、収入が減って資金繰りが苦しくなり、鳩山個人からの資金の持ち出しが多くなった。鳩山からは、いつも自分を頼るんじゃなくて、ちゃんと資金を集めてもらいたい旨の苦言を言われていたことから、これ以上鳩山に頼みにくくなり、個人献金やパーティー収入の水増しなどの虚偽の記入を始めるに至った。

 【虚偽記入の容疑】
 関係者の供述は、収支報告書の虚偽記入は元公設第1秘書以外の者は知らず、鳩山首相は一切関与していないということで一致している。首相自身が虚偽の記入に積極的に加担しなければならない動機も見いだしがたく、他の証拠を検討してもこれを否定あるいは覆すに足りる証拠はない。
 なお、虚偽記入には直接関係しないが、一連の証拠によれば、2002年頃から09年5月まで、首相の政治団体には、首相の母から毎月1500万円、1年間で1億8000万円が拠出されており、母からの資金が入金されるようになってから、首相個人が政治団体に拠出する資金が極端に減少し、さらに年々減少してきている事実が認められる。それにもかかわらず、首相は、虚偽記載の事実を知らなかっただけでなく、母からの莫大(ばくだい)な資金が使われていることも全く知らなかったという。しかし、当審査会としては、素朴な国民感情として、このようなことは考えがたいとし、首相自身に対して検察官の取り調べがなされなかったことも相まって、首相の一方的な言い分にすぎない上申書の内容そのものに疑問を投げかける声が少なからずあったことを付言する。
 【会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠った容疑】
 会計責任者だった元政策秘書は首相の側近として長年にわたって重要なポストについており、首相からの信頼が相当厚いことが推測される。人柄、能力といった面において問題がある人物だとは考えられず、首相が元政策秘書を会計責任者として選任したことについて相当の注意義務を怠ったということはできない。
 政治団体の代表者が政治資金規正法25条2項の適用を受けるのは、代表者が会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠ったときである。「選任及び監督」の「及び」とは、選任と監督のどちらか一方の要件を充足すればよいということではなく、両方を充足しない限り責任を問うことはできない。選任において問題がないとの結論に至った以上、監督面について検討するまでもなく、刑事責任を問うことはできない。
 なお、当検察審査会の審査においては、「この要件は、政治家に都合のよい規定になっている。選任さえ問題がなければ監督が不十分でも刑事責任に問われないというのは、監督責任だけで会社の上司等が責任を取らされている世間一般の常識に合致していないので、本条項は改正されるべきである」との意見が強く主張されたので付言する。

なお、検察審査会に申立てをしていたのは、市民団体と報じられてきたが、そうなのだろうか?
審査申立人は3つのグループに分けられるようだ。

一つは政治団体のメンバーらしきグループ、2つ目は匿名のグループ、最後は一人だけ。

(2)私が注目したのは、「不起訴相当」議決の結論ではなく、その中で意見が付記されていたことである。

その一つは、「当審査会としては、素朴な国民感情として、このようなことは考えがたいとし、首相自身に対して検察官の取り調べがなされなかったことも相まって、首相の一方的な言い分にすぎない上申書の内容そのものに疑問を投げかける声が少なからずあったことを付言する。」というものである。
検察が鳩山首相本人につき直接事情聴取するのではなく、上申書で済まされたことに対しては、「素朴な国民感情」として納得できないだろう。
これについては、すでに指摘しておいた

(3)二つ目は、政治団体の代表者が政治資金規正法25条2項の適用を受けるのは、代表者が会計責任者の「選任及び監督」について相当の注意を怠ったときであるという規定につき、「当検察審査会の審査においては、「この要件は、政治家に都合のよい規定になっている。選任さえ問題がなければ監督が不十分でも刑事責任に問われないというのは、監督責任だけで会社の上司等が責任を取らされている世間一般の常識に合致していないので、本条項は改正されるべきである」との意見が強く主張されたので付言する。」というものである。


私が最も注目したのは、この付記だ。

企業における責任論と刑事における責任論とを一緒にしている点については、正直言って疑問であるが、結論として、政治団体である代表者の監督責任が現行法では問えないので、選任責任と監督責任を分離する法律改正を主張しているのは、当然の意見だろう。
現行法は、「選任」と「監督」の両者につき「相当の注意を怠ったとき」と定めているので、監督責任だけでは刑事責任が問えない。
それゆえ、当該規定は死文化している。
この点は、政治資金オンブズマンも政治資金規正法改正として提言していることである。

(4)検察審査会が法律改正の意見を付記したのを、私は聞いたことがない。
異例ではなかろうか!?

政治家・政党は、この意見を真摯に受け止め、企業・団体献金全面禁止を中心として、政治資金規正法の抜本改正を速やかに行うべきである。

(5)民主党の小沢一郎幹事長についても検察審査会への申立てがなされており、検察審査会の議決が出るようなので、以上の続きは、その議決の報道を受けてから、述べることにする。

(6)以下は、私のコメントが紹介された新聞報道である。
毎日新聞 2010年4月27日 東京朝刊
鳩山首相団体偽装献金:首相「不起訴相当」 議員ら、参院選へ影響注視

 ◇民主「不幸中の幸い」 自民「権力への迎合」
 「ほっとした」「残念だ」−−。鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」を巡る政治資金規正法違反事件で、東京第4検察審査会が26日、鳩山首相について「不起訴相当」とする議決を公表したことを、今夏参院選の候補者たちはさまざまに受け止めた。審査会は一方で、規正法を「世間一般の常識に合致していない」と強く批判。近く別の審査会による小沢一郎民主党幹事長に対しての議決も予想され、その結果が注目される。

 裁判官や検事などの経験がある民主党の小川敏夫参院議員(62)は「ほっとした」。7月と見込まれる参院選で改選を迎えるが、22日には鳩山首相の元公設第1秘書に有罪判決が言い渡されたことから「(議決は)不幸中の幸い」と話した。
 同じく民主公認で改選の加藤敏幸参院議員(61)は「あまり意識はしていなかった」。選挙への影響についても「報道などは政治とカネや普天間に焦点を絞っているが、現政権はさまざまな政治課題に愚直に取り組んでいる。夏までにプラスの要素はもっと起こり得る」と期待する。
 一方、民主から参院選に立候補予定のジャーナリスト、有田芳生氏(58)は「小沢さんの件がどうなるか。そこまで見ないと、(選挙への影響は)分からない」と懸念する。
 自民党公認で参院選に臨む予定の松浪健四郎前衆院議員(63)は「権力に迎合するような結果になったことを残念に思う」。一方で選挙については「今のままなら鳩山首相が残ってくれた方がやりやすい」と話した。
 同じく自民公認で出馬予定の猪口邦子元少子化担当相(57)は「街角で有権者と話すと首相の金銭感覚が一般市民とかけ離れていると実感できる。資金の使い道などに不透明さが残ることを国民は分かっている」と指摘。
 みんなの党幹事長の江田憲司衆院議員(53)は「巨額の資金が何に使われたのかは不明なままだ。司法の場で一区切りついたのだから、鳩山首相は国会で説明責任を果たすべきだ」と主張した。【曽田拓、前谷宏】

 ◇問題幕引き「お墨付き」を懸念
 審査会は、00年に企業・団体献金が制限され個人的な持ち出しが多くなった鳩山氏から「いつも自分を頼るんじゃなくて、ちゃんと資金を集めてもらいたい」と苦言を呈された元公設第1秘書の勝場啓二被告(59)が虚偽記載を始めたと指摘。「関係者の供述は鳩山氏は一切関与していないということで一致し、鳩山氏自身が加担しなければならない動機も見いだしがたい」などとして、鳩山氏の不起訴を相当と結論付けた。

 議決書は21日の議決後に文案が検討され、審査員が26日に署名し公表された。審査員は5回以上議論し、証拠に基づき冷静に結論を導き出したとされる。これで首相が今回の事件で起訴される可能性は事実上なくなった。だが、審査員たちは不起訴相当の結論が「政治とカネ」の問題の幕引きに「お墨付き」を与えることを懸念し、母からの資金提供などを知らなかったとする首相の説明に対し「素朴な国民感情として考えがたい」と異例の付言をしたとみられる。
 付言を見ると、関与を否定した首相の説明とともに、事情聴取を行い真相を解明しようとしなかった東京地検特捜部の捜査に批判が出たことは確実だ。付言で政治資金規正法の改正にあえて言及したのも、大半の審査員の意見の反映だろう。
 上脇博之・神戸学院大大学院教授は「付言は、一般市民の素朴な意見として理解できる。政治資金規正法を抜本改正する責任を政治に課した点は画期的で意義深い」と話した。【三木幸治、鈴木一生、山本将克】
==============
 ■鳩山首相と偽装献金事件の経緯
2009年
 6月16日 友愛政経懇話会の収支報告書で、故人から献金を受けたとする記載が発覚
   30日 鳩山民主党代表側が計2178万円の虚偽記載があったとする調査結果を公表
 7月 3日 市民団体が政治資金規正法違反容疑で鳩山代表らの告発状を提出
 9月16日 鳩山内閣発足
   下旬 東京地検特捜部が捜査を開始
12月24日 特捜部が勝場啓二・元公設第1秘書を政治資金規正法違反で在宅起訴、会計責任者だった元政策秘書を略式起訴。鳩山首相は容疑不十分で不起訴処分に

2010年
 1月28日 市民団体が首相の不起訴を不当として検察審査会に審査申し立て
 3月29日 勝場被告の初公判、即日結審
 4月22日 東京地裁が勝場被告に禁固2年、執行猶予3年の有罪判決
   26日 東京第4検察審査会が「不起訴相当」とする議決を公表(議決は21日付)


なお、読売新聞でもコメントした。
少なくとも無料のインターネット版では公表されていないようだ。
共同通信でもコメントした。配信記事を使用した新聞社の紙面には私のコメントが掲載されている可能性がある(例えば神戸新聞と南日本新聞では掲載)。

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