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新年会に見る今年の日本経済

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●以前より格差が小さい回復局面

 実際のところ、バブル崩壊後の日本経済においては、景気回復はほとんどが輸出为導型であった。最初に輸出が増え、それから製造業を中心に企業業績が改善し、それが周囲にも波及して、尐しずつ家計にも明るさが増す、というパターンであった。

 しかるに今世紀に入ったあたりから、景気の波が伝わりにくくなった。すなわち、大企業が良くなっても中小企業は良くならず、製造業が良くなっても非製造業にはなかなか波及しない。また、首都圏が良くなっても地方経済は冷え込んだままであり、企業部門が潤っても家計部門には行きわたらない。

 小泉政権時代の2002年から2007年にかけては、「いざなぎ景気」を超える史上最長の好況時代があったことになっている。このときが典型的で、回復を実感できた人は必ずしも多くはなかった。エコノミストとしては、「景気が良い」と口にすること自体が憚られた時代であった。

 ところが今回の景気回復局面は違っている。アベノミクスが発端なので、「円安・株高→資産効果→個人消費増」と、「公共投資(復興需要)→地方経済改善」という2つの筋道で景気が動いている。むしろ企業の設備投資動向が遅れている感が否めない。

 端的に言えば、「第2の矢」たる財政政策により久々に公共事業を増やしているから、復興需要も含めて地方経済にやや明るさが見えている。

 例えば有効求人倍率は、昨年11月時点でちょうど1.0に到達したけれども、これを都道府県別でみた場合、以下のようになる。

Top 3 ①東京1.46、②愛知1.44、③岡山1.36
Worst 3 ①沖縄0.58、②埼玉0.65、③鹿児島0.69


 都道府県別の有効求人倍率は、普通はもっと大きな差があるものであって、今回は比較的狭いレンジに収まっているといえる。これを小泉時代の景気回復局面で、同じく有効求人倍率が1.0に達した2005年12月のデータと比較してみよう。

Top 3 ①愛知1.61、②群馬1.59、③東京1.54
Worst 3 ①沖縄0.41、②青森0.44、③高知0.48


 自動車産業のある県が上位に来るが、生産拠点が少ない県では0.5以下になる、というのがこの当時のパターンである。つまり、それだけ地域格差が大きかったのである。

 昨年12月の日銀短観を見ても、「格差縮小」を確認することができる。

 小泉時代には、一度もプラスになったことがない「非製造業・中小企業」の業況判断が+4になっており、これは1992年以来のことである。かくして現在は、「製造業・非製造業」×「大企業・中堅企業・中小企業」という都合6つのセクター全てがプラスになっている。バブル崩壊後初の快挙である。

 今まで、日が当たりにくかった部分に明るさが増しているのは、アベノミクスの思わぬ効用と言えるかもしれない。

●「モノづくり」から「感動を売る仕事」へ

 ところで現下の非製造業が健闘していることは、下記の2つのグラフを重ね合わせることでも確認することができる。

 すなわち今の日本経済は、実質GDPではリーマン前の水準にほぼ等しくなっているものの、製造業の指標である鉱工業生産や稼働率では、まだ3/11後の水準にも達していないのだ。この分は、非製造業が穴埋めをしているとしか考えようがない。

 普通であれば、ここは四番打者(製造業)の復活を考えるところであろう。が、ここは逆転の発想で、とことん非製造業の時代を考えてみるのも面白いかもしれない。その分かりやすい例がツーリズム(観光業)である。

 現に昨年の訪日外国人数は、前年の835万人から大きく伸びて1000万人を突破した。安倍内閣の成長戦略では、東京五輪開催の2020年にはこの数字を2000万人にするという目標を掲げている。そのためには毎年10%の成長を続ける必要があるが、これはけっして不可能な目標ではあるまい。

 昔から「モノづくり」に専念してきたわが国においては、ツーリズムはいわば「使っていない筋肉」のようなもの。特に旅館業などの多くは、現代的なマーケティングとは無縁のKDD経営(勘と度胸のどんぶり勘定)にとどまっていると伝え聞く。今日的な経営手法を導入していけば、かなりの「伸び代」があることは想像に難くない。

需要面でも、時代はツーリズムに追い風が吹いている。なにしろ家の中がモノであふれてしまい、今さら欲しいものなど見当たらないご時勢だ。特に高齢者にとっては、今さら高機能の電機製品などありがたくもない。ところが「時間持ち」の立場からすれば、旅の記憶だけは無制限に増やしていける。そろそろ産業界の側としても、「モノづくりから感動づくりへ」と意識を転換した方が良いかもしれない。

最近伸び盛りの企業には、ゲーム産業やSNSなどの関連が目立つ。つまり「遊び」をテーマとする産業が伸びている。思えば高齢化社会とは、「ホモ・ルーデンス」(遊ぶ人)の時代なのかもしれない。

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