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第186回国会における代表質問 石破 茂幹事長

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【日中・日韓、領域警備】
 中国や韓国は我が国にとって重要な隣国であり、経済的にも文化的にも密接な相互関係が築かれています。

残念ながら、いまだ両国との首脳会談は実現していませんが、それをもって政権が両国を重視していないとするのは浅薄な見方であります。総理は常に、対話のドアはオープンであること、課題があるからこそ対話すべきであることを発言しておられます。

我々は議員外交やトラック2外交などを可能な限り活性化させ、我が国がいかに地域の平和と安定を望み、そのために積極的に行動する用意があるかを国内外に発信していくことで、首脳会談への環境を整えていきたいと考えておりますが、中韓との関係改善についての総理のご所見をお伺いします。

一方で中国による尖閣諸島周辺領海への侵入や、国際法の概念とは大きく異なる「防空識別区」の設定など、現状変更を試みる行動を抑止するために、我が国は法整備と能力の向上を急がなくてはなりません。

 海上保安庁が有するのは海上の治安維持の権限であり、領海を悪質な態様で航行する外国船舶に対して退去通告や臨検・拿捕はできても、自衛権に基づく強制排除措置を取ることはできません。

 自衛隊に対して海上警備行動や治安出動を下令しても、その本質があくまで警察権である以上、警察比例の原則が厳格に適用され、その行動にはおのずから制約があります。防衛出動は自衛権行使の三原則が満たされない限り下令できないのみならず、「急迫不正の武力攻撃」以外の手法で領土が侵された場合には対応が困難となります。ここに「隙間」が存在することはかねてから指摘されてきています。

新たなNSCにおいて各省庁連携の下、早急に法を整備し、シミュレーションや訓練の積み重ねによる切れ目ない対応策を進めるべきと考えますが、見解をお伺いします。

5.集団的自衛権・憲法改正

【集団的自衛権】
冒頭、政策に優先順位をつけることの重要性について述べました。まず復興と経済再生に取り組み、成果を挙げることなくしては、他の重要な政策を国民の理解を得て実現させることはできません。

しかしそれは、他の重要課題を放置してよいということでは決してなく、それらの解決のために緻密で丁寧な準備を常に怠ることなく、一端俎上に上った際には万全の態勢で臨む姿勢こそが重要です。

集団的自衛権の行使を可能とすることは我が自由民主党が総選挙、参院議員選挙で公約に掲げた、重要課題の一つです。総理は施政方針演説の中で、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告を踏まえ、対応を検討すると述べられました。

集団的自衛権を議論するに当たっては、「国連憲章における位置づけ」「日本国憲法との関係」「我が国ならびに地域の平和と安全に与える影響」の三つの観点が必要であると考えます。

第二次世界大戦後、国連が創設されるにあたり、何故わざわざ憲章に集団的自衛権が明記されたのか。これは拒否権を持つ大国の横暴を危惧したラテンアメリカ諸国の提唱によるものでした。

アメリカなどの大国が参加しなかったため機能を十分に発揮できなかった国際連盟の教訓から、大国に拒否権を与えることで国際連合は発足することとなりました。しかし、武力攻撃による侵略行為が行われた際に大国が拒否権を行使すれば、安保理は「適切な措置」をとることが出来ず、侵略国の思いのままの事態になってしまう。武力攻撃を受けた国は「安全保障理事会が適切な措置をとるまでの間」に限って、個別的自衛権と共に「密接な関係を持つ国と共同して武力攻撃を排除する」集団的自衛権が認められたのです。集団的自衛権の本質が「大国と共に侵略を行う権利」ではなく「大国の横暴から自国を守る権利」であることを忘れるべきではありません。何故これを、国連中心主義を唱える我が国だけが行使できないのか。この点の徹底した議論が必要です。

日本国憲法第9条は、

「日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」

「この目的を達するため、陸・海・空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権はこれを認めない」

と定めます。

集団的自衛権を行使不可能とする論拠として「国際紛争を解決する手段」である、とするのは国連憲章の否定にもつながりますし、「交戦権の行使である」とするのは個別的自衛権行使との整合性がとれません。憲法との関係を論理的につき詰めて議論しなくてはなりません。

尖閣の現状や、中国の「防空識別区」の設定、北朝鮮情勢の変化などを考えた時、我が国を含むアジア太平洋地域において、先にも述べたとおり、バランス・オブ・パワー、力の均衡を維持することは絶対に必要です。

アメリカの同盟の形が従来の「ハブ・アンド・スポーク型」から「ネットワーク型」に変化を遂げようとするとき、「集団的自衛権行使不可」を前提とした、アメリカだけを唯一の同盟国とする非対称的双務関係から、「集団的自衛権行使可能」を前提とし、多くの国と新たな関係を構築することは、この地域に確固たる力の均衡を確立し、平和の維持と紛争の回避に大きな役割を果たすことになるものと考えます。

集団的自衛権行使を可能とすることが、我が国ならびに地域の平和と安全にどのように寄与するのか、という議論も徹底して行われなくてはなりません。

自民党は長年にわたり真摯な議論を積み重ね、一昨年末に集団的自衛権の行使を可能とすることなどを内容とする「国家安全保障基本法」を取りまとめて総選挙、参院選挙に臨みました。集団的自衛権の行使にあたっては国会の事前承認を必要とし、濫用防止の規定を設け、国連憲章との整合性を図るなど、これは多くの懸念に応えうるものと自負いたしております。

広範かつ真摯な議論を積み重ね、多くの国民の理解と支持を得る努力を積み重ねることによってのみ、集団的自衛権を行使可能とする法整備は大きな前進をみるものと私は考えるものであり、我が党としても最大限の努力を致して参ります。安保法制懇談会の報告の時期も様々に取り沙汰されておりますが、スケジュール感も含めて、総理の見解をお述べ下さい。

【憲法改正】
自由民主党は結党以来、自主憲法の制定を党是とし、野党時代には、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という基本原理を継承しつつ、時代に即した憲法改正草案を策定いたしました。

本年は、より理解を深めていただき、国民主権の我が国において、国民の手による憲法を制定する機運を高めていくため丁寧な説明をしていきます。総理は施政方針演説において、「憲法改正も必ずや前に進んでいくことができると信じています」と述べられました。憲法改正に向けた総理の所見を承ります。

6.おわりに

以上、いくつかの観点から総理のお考えを質して参りました。

経済、財政、安全保障、エネルギー、医療、福祉、第一次産業。我が国は、多くの喫緊の課題に直面しております。本来それらは、我が党がかつて政権にあった時代に方向性を見出し、その解を国民に向けて示すべきものであったにもかかわらず、それを先送りしてきた面があったのではないかとの反省を、長く政治に携わってきた者の一人として私は強く持っております。

政治不信が叫ばれて久しく、国政選挙における投票率は低下し続けています。今は内閣支持率も、与党に対する支持率も高水準に推移しておりますが、これは、未だ期待を本質とする相対的なものなのかも知れません。政権の支持率と個々の政策の支持率には相当の乖離があることも事実です。

「政治を、政権を信頼したい」との思いは多くの国民が持っているはずです。我々はその思いに応えなくてはなりません。

 これを言えば嫌われる、票が減る、人気が落ちる、そのような理由で主権者たる国民に対して「真実を語る勇気」を持たないのは政治の自己保身であり、国民を信じて真実を語らない政治が、国民から信じて貰えるはずはありません。

 日本に残された時間は実に短く、政策の選択肢の幅は極めて狭いのです。総理が常々口にされる「この道しかない」との思いのもと、自民党として、国家国民に対し、今日を築いてくださった古(いにしえ)の方々に対し、さらにはまだ見ぬ次の世代に対して、最大の責任感と緊張感と使命感を持って、全身全霊をもって国政に臨むことを申し述べ、私の質問を終わります。

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