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薬価算定の見直し 日本発の新薬開発促せ

患者にも製薬企業にも利点多い

世界に先駆けて日本で承認された新薬に対し、薬価を引き上げる「先駆導入加算」が4月からスタートする見通しとなった。診療報酬改定を議論している厚生労働省の中央社会保険医療協議会が了承したからだ。

先駆導入加算の薬には、算定された価格に10%が上乗せされる。対象となるには、国内外の既存薬と異なる効用があり、海外での研究開発・製品化も見込めるなどの条件を満たす必要がある。

狙いは、海外も含めた製薬企業に国内での新薬開発を促し、“日本発”の薬を増やす環境づくりだ。

利点は医療産業の活性化だけではない。現在は、多くの新薬が欧米の後追い承認になっている。日本で先行販売されるようになれば、欧米で使用が認められている薬が日本で承認・使用されない「ドラッグ・ラグ(遅れ)」を解消できる。患者にとっても朗報だ。

厚労省によれば、医薬品が開発されて承認を受けるまでの期間は、日本は米国より平均6カ月程度(2011年度)長い。新薬審査の迅速化によって、この期間は短くなっているが、海外で流通している新薬を使った治療を望む重病患者は、一層の短縮化を求めている。事実、やむを得ず、日本で未承認の薬剤を自己負担・自己責任で個人輸入する患者もいる。

ドラッグ・ラグが生まれる一因には、医薬品市場の事情が指摘されている。

製薬企業は新薬にかかった多額の開発コストを回収するために、大規模な市場である欧米で優先的に研究を進める。開発した新薬が欧米市場で承認され、高価格で流通するようになると、やがて日本で販売される傾向性が強い。その結果、国内での新薬発売が遅れがちになる。

これを改善するには、日本市場の魅力を高める必要がある。先駆導入加算の導入は、その試みの一つといえよう。

日本発の新薬を増やすには、臨床研究分野の充実も重要な課題だ。

諸外国の中には臨床研究を集中して進めるために、数千床規模の研究拠点を創設している国もあり、実用化に向けた体制が整備されている。

半面、日本は整備されていないため、日本発の研究であっても欧米で臨床研究が先行し、国内での製品化が遅れる場合もある。

医薬品の有効性や安全性の確認手続きは絶対に疎かにしてはならない。それと同時に研究開発を効率化することが必要だ。産官学を挙げた取り組みを期待する。

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