この忙しい時に極めて興味深い見出しが踊っていて、しかしちゃんと考える時間はないのでメモ。
nikkei:サムスン・アップルの特許権訴訟 知財高裁、初の意見募集
スマートフォンなどに関する特許を巡り、米アップル日本法人と韓国サムスン電子が争っている訴訟の控訴審で、知的財産高裁は23日、他社に特許を使わせる際の条件など訴訟の争点について、一般から意見を募ることを決めた。日本の裁判所が係争中の民事訴訟の審理で、一般の意見を募集するのは初めて。専門的で過去に判例のない争点について、専門家や実務に詳しい業界関係者から広く意見を聞く必要があると判断。司法判断にあたってビジネスの現場の声を生かそうとする今回の試みは、知的財産に関わる人々の幅広い関心を集めそうだ。
これだけ見ると、事実上のアミカス・キュリエ(法廷の友)を裁判長の訴訟指揮権に基づいて実施する日のようだが、上記のリードに続けて、以下のようにも書かれている。
知財高裁は同宣言に関する過去の判例がない上、特許を巡る専門的な争点であり、専門家らの意見を参考にする必要があると判断。民事訴訟法には一般から意見を募る手続きを定めた規定はないが、アップルとサムスン双方に意見募集を促し、当事者間で合意してもらう形で実施することにした。アップル側代理人の伊藤見富法律事務所(東京・千代田)と、サムスン側の大野総合法律事務所(同)が3月24日まで、国内外の専門家などから意見を募り、自らの主張立証の材料として知財高裁に書面で提出。法曹関係者によると、こうした手続きは米国などには法規定があるという。
この部分から想像されるのは、当事者それぞれが専門家の意見を取りまとめて書面として提出するというわけであるから、従来からある単なる私鑑定のように見える。
私鑑定とは、私的鑑定ともいうが、当事者が専門家の意見を書面で求め、意見書ないし鑑定書の名義で、文書証拠(いわゆる書証)として提出するものである。はっきりいって、ありふれた話だ。そしてこのケースでもそうだと思うが、当事者は自己の立場を補強するために、この種の証拠を収集することに強いインセンティブを持つのであるから、裁判所が意見書提出を指示することは普通ない。何を出したらよいかわからない本人訴訟やそれに近い代理人の場合や、裁判所の法解釈ないし事実認定と異なる前提に立つ当事者に注意をうながすことはあるが、本件ではそういう場合ではなかろう。
従来のやり方に対してユニークかと思うのは、「一般から意見を募る」という部分と、「当事者間で合意してもらう形で実施」という部分だが、「一般から」というのが「国内外の専門家などから」ということであれば、全くの公募というわけでもなさそうである。もちろん一般から募集しても事実上専門家からしか出てこないという見込みかも知れないが。
それよりも、当事者が自らの主張立証に沿うものをセレクトして提出するのであれば、従来の私鑑定を幅広く募るのとなんらかわりはない。
ということで、注目に値する方法だとすれば、パブリックコメントのように一般に意見公募をし、その意見は当事者が整理したとしても有利不利にかかわらず裁判所に提出するというやり方をする場合であろう。
本当にそうなのか?