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政治家としての原点

 私が政治家を志した一つの原点は、認知症になった母の介護です。私の専門は、欧州の比較政治や安全保障分野でした。しかし、家族の介護の現場に立ったとたん、風景が一変したのです。認知症を患い、不自由な身体の母の介護。しかしこれも、若いとき何もしてあげられなかった母へのせめてもの償いに過ぎません。東京から九州に、週末ごとに通う遠距離の介護が7年間続きました。介護経験を通じ、私は硬直化した日本の福祉政策の問題点を痛感しました。

 日本の社会保障制度を整えたい。この志から、平成11年に東京都知事選に立候補しましたが、落選。しかし、平成13年に参議院議員選挙に立候補し、今度は多くの皆様のご支持をいただき当選しました。平成19年、安倍晋三総理から「厚生労働の仕事はあなたが一番やってきていることだから、大臣を引き受けてもらえないか」とのお声をいただきました。これも母の導き、天命なのだと意を決し、安倍、福田、麻生、三代の内閣に厚生労働大臣としてお仕え致しました。

 大臣在職752日の間、私は厚生労働省5万4000人の職員を率いて、医療崩壊、年金記録問題、薬害C型肝炎訴訟、雇用問題、原爆症認定訴訟、新型インフルエンザ、後期高齢者医療制度など、次々と来襲する難問と格闘することになりました。この間の出来事は『厚生労働省戦記:日本政治改革原論』(中央公論新社、2010年)にまとめています。
 
 官僚を敵に仕立て上げてバッシングし、マスコミの歓心を買うのは悪しきポピュリズムです。しかし政治家たるもの、大臣のリーダシップに反旗を翻す役人には、断固として対処しなければなりません。「脱官僚」、そのスローガンを唱えるだけなら簡単です。しかし、実際にそれを実行するのは、並々ならぬ努力を要するのです。最初から私ができていたとは思いません。しかし試行錯誤を繰り返しながら、その手法を少しずつ身につけました。大臣は、大きな方向付けさえすればよく、指示さえ的確であれば、あとは優秀な官僚が政策を実行するのです。官僚の能力を最大限に引き出すにはどうすればよいか。私の答えは、一人一人を正当に処遇することだと思います。

 平成21年夏の総選挙、自民党は歴史的な敗北を喫し、民主党の鳩山政権が成立しました。私は自民党の改革を提唱しましたが、大勢の受け入れるところとはなりませんでした。

 平成22年に政治改革を訴え、自ら実践するために新党改革を結成。しかし、私の力量不足で党勢を伸ばすことができませんでした。責任をとって私は政党の代表を辞職し、参議院選挙の出馬を断念致しました。もう一度、政治を外から見てみたい。在野の一研究者として、日本の政治について学ぶ日々を過ごしていました。

 この度、「都知事選に出馬しないか」とお声をいただいたのは本当にありがたいことです。日本の国民のみなさまのために、全力で良い仕事をしたい。社会保障は結局地域の問題へと収斂すると、実際の厚労行政に関わって知りました。もともと、母の介護から志した政治家としての道です。都民の皆さまのために仕事をしたい。その思いは平成11年の最初の都知事選挙から変わりません。

連載第3回:舛添要一が語る「東京を世界一の都市に」に続く
連載第1回:舛添要一が語る「舛添要一とはどんな人物か?」はこちらです

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