記事

「金融リテラシー」向上の障害となる「投資≒一発当てること」という低次元の認識

「人生の先輩として言わせてもらおう。若者なら恋愛も投資も失敗を恐れるな。そのうち一発あたるさ」(22日付日本経済新聞 「はじめてのニーサ~投信の分配金 中身確認して」)

「そのうち一発当るさ」…。このコメントに、「投資≒一発当てること」だというこの新聞の本音が表れているような気がします。「そのうち一発当たる」ことが目的であるならば、ギャンブルと大差ありませんから「金融リテラシー」や「投資リテラシー」など身に付ける必要などありません。日本を代表する経済紙がこの程度の認識でいる限り、日本で「金融リテラシー」の向上など期待するべくもありません。もちろん「投資≒一発当てること」だとしたら、「金融教育も早い段階から行う」必要など全くありませんし、そのような認識しか持っていない人達には「金融教育」を語る資格はないように思います。

投資運用の分野ほど、プロとアマの差が数字で出難い分野はないかもしれません。プロは人様の命の次に大切なお金をお預かりして、様々な制約条件のなかで運用するのに対して、アマは自分のお金を好き勝手に運用していいからです。

例えるならば、ハイヤーの運転手と、首都高環状線を一周するタイムを競うルーレット族くらいの差があるのです。首都高環状線を一周するタイムはルーレット族の方が早いはずですが、プロの自動車の運転としてどちらが優れているでしょうか。プロであるハイヤーの運転手は、自分勝手に運転を楽しむというということは自己否定に繋がる行為になるはずです。プロの仕事の中には、タイムという表面的な数字では測れない価値が秘められているのです。

若い人達の中には、「株取引が趣味です」という理由でファンドマネージャーを目指す方もいます。筆者も何回かこうした理由で運用会社に応募してきた若い人達を面接した経験がありますが、全てお断りしました。それは、人様の命の次に大切なものお預かりする「プロの業務」において、個人の「趣味」を優先されるリスクが高くなるからです。

一般的に、好きなことを仕事に出来ることは素晴らしいことですし、その方が技術的な向上も早くなるはずです。しかし、運用業務には必ずしも当てはまるとは限りません。「趣味」が株式投資ではなく、顧客のための資産運用であるならば別ですが…。株式投資や為替取引に「慣れていること」と、資産運用業務に適しているかは別問題です。

筆者はゼネコンの都市トンネル技術者から資産運用業界に転じ、「利回り」と「クーポン」の区別も付かないうちから円債のトレーダーを、「ボラティリティ」も「ガンマ」も知らないうちからオプションのトレーダーになりました。全くの素人だったわけですが、3年後には経済専門紙に「評論家」として定期的に記事を提供するようになりました。株取引が「趣味」であったり、株取引に「慣れていること」は、資産運用業務においては必ずしもアドバンテージにはなりません。

この記事で紹介されている「投資≒一発当てること」という認識が根強く残っていることが、証券業務が進化するなかでも証券営業マンに対する「株屋」という差別用語ともいえる言葉が残っている原因のような気がします。同じ紙面では「日経平均ダービー~チャンピョン戦」の結果が掲載されていますが、こうした株価予想もアマの方の楽しみとしては有意義なことかもしれませんが、プロの仕事ではありません。プロが目指す投資は、「株価予想」に頼らずに求められる成果を達成して行くことであり、「株価予想」の正確性を高めることではないからです。

「投資運用の先輩」として言わせてもらいたいことは、「投資とギャンブルは違います」「投資に必要なのは『論理的思考の積み重ね』以外にない」ということです。

あわせて読みたい

「投資」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。