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必然的な不幸、家庭を運営できない男たち

株価が上がっても、内閣府の景気動向指数が上方修正されても、安心感や充実感は実感できず、「オレらには関係ないし」とつぶやくだけ。

もっと違う、もっと生活の充実を実感できる指標はないものかね。

という要求はかなり広範囲にあるだろうが、これはかなり難しい。

世界一幸福な国ブータンで有名な幸福度指標GNHは日本のような物質的に豊かな国には適応しにくい。

というか、ブータン自体、2005年の国勢調査で97%が幸せと答えていた国民が2010年には40.8%に激減している。(評価方法を変えた影響もある。)

幸福度の評価方法は国民性やその国独特の歴史を勘案しなければ正確に計測できないが、自殺率は幸福(不幸)の関数としてそういった特殊事情に関係なく使える。

日本の自殺率は1945年(13人/10万人)から55年(25人/10万人)までは上昇したものの、58年(25.7人/10万人)をピークに激減し、65年には15人/10万人までに改善、73年のオイルショック辺りから緩やかに上昇を始め、83年(前年の17.5人→21人)の景気後退で一気に跳ねあがった。その後、バブル景気で一時的に改善されるが、バブルが弾けてからはまた急上昇に転じている。(厚生労働省「人口動態調査特殊報告」より)

因みに、1960年代前半から日本の自殺率を上回って推移していたスウェーデンとドイツには1973年から徐々に差をつめられ、1983年前後に逆転。そのまま現在に至っている。

また、経済成長率は1956年ー73年平均が9.1%で、その後は74年ー90年平均4.2%、91年ー12年平均0.9%と明確な違いが見れる。(内閣府SNAサイトより)
雇用者所得の前年比は1957年(5.7%)から1974年(28.0%)までほぼ右肩上がりだが、以降、急激に鈍化し、1987年は2.6%となっている。

そして、この1958年から1973年という期間は戦後史で唯一、出生数が右肩上がりで伸びた時期でもある。(但し、1966年のひのえうま年を除く。)

所得が増え、家庭を持ち、子供をつくって、自殺をする人はいない。

日本の戦後史で、日本人がもっとも幸福だった時代、生活の充実を感じられた時代は1958年から1973年までと判断して差し支えないだろう。

さて、ここからこのような幸福の実感が現在において可能か、という分析に入る。

①所得が増える。

社会構造的に高度経済成長期のような大きな景気拡大局面は今後展開しそうにないので、雇用者所得が右肩上がりで増え続けることは期待できない。

②家庭を持って、子供をつくる。

生涯未婚率(50歳時の未婚率を算出した数字)は1950年には男性1.5%、女性1.4%だったのが、1990年から男女ともに急上昇し、2010年で男性16.7%、女性11.9%となっている。

特筆すべきは男女間の生涯未婚率の違いである。

1985年以前は女性の生涯未婚率の方が上回っていたが、90年頃から2005年まで男女間の差が急拡大している。

国立社会保障・人口問題研究所の調べでは、2005年の時点でも男女とも「いずれ結婚するつもり」の人の比率がかなり高い(男性87%、女性90%)ので、「結婚したくない」のではなくて「できない」、と解釈した方が妥当だろう。

同研究所では、結婚できない理由(25歳~34歳)も調べていて、男女ともに「適当な相手にめぐり合わない」がダントツでトップ(男性45%、女性49%)になっている。

この男女間のミスマッチは、女性側が男性に望むと言われる3C=Comfortable(快適)、Communicative(通じ合える)、Cooperative(協力的)と男性側が女性に望むと言われる4K=かわいい、家庭的、賢い、軽い(デブじゃない)、がまるでマッチしない点から明らかである。

バブル以前の女性側が男性に望む条件、3高(高収入、高学歴、高身長)はある意味、わかりやすく、ミスマッチは「お約束」な部分があったが、3Cはガチで来ている。

3Cをクリアするのに最も必要なのは「経験」であるが、男女とも「交際している異性はいない」人は1987年の調査から増加している。(男性87年48.6%→05年52.2%、女性87年39.5%→05年44.7%)

収入や学歴や身長は裏切られることはないが、協力的で快適な通じ合える相手は付き合っていくうちに、非協力的で不快で全然通じない相手に変わることはよくある。

お互いに「経験」がないとなお更、修復は難しい。

特に男性側の「経験」に偏りが生じているため、男女間に生涯未婚率の違いが明瞭にでているのではないか。

男性が女性に望む条件は数十年間変わっていないこと(橘木俊詔「無縁社会の正体」より)を考えれば、女性が望む条件に男性が応えることができなくなってきた(層が増えた)と言えるだろう。

女性側から見れば、専業主婦願望は減少(87年23.9%→05年11.1%)し、家庭と仕事両立願望は増加(87年15.3%→05年20.9%)しているので、3高はあきらめました、なので、せめてお互い気持ちよくやろうよ、といった具合なんでしょうが。

③自殺をしない。

高度経済成長期の自殺率の減少の原因は1958年に施行された国民健康保険法による国民皆保険制度の運用が大きいとみられる。(58年が自殺率のピークで以降激減している。)

年金制度とともに社会保障の充実は自殺率を低下させる。

2010年の警視庁「自殺統計」でも自殺原因の第一位は「健康問題」で二位の「経済問題」の倍近くになっている。

83年からの自殺率の増加は同時期から戦後初めて増え始めた離婚件数と因果関係があるかもしれない。

直近のデータでも、09年から11年にかけて健康問題と経済問題による自殺は減少傾向にあるが、家庭問題は微増している。

以上、3つの要因を分析すると、家庭円満が生活の充実度に直結すると言える。

所得の増加は期待できないにしても、男女がお互いに歩み寄り、うまく家庭をマネージしながら、子育てしていく、といったモデルは不可能ではない。(とは相手によっては言い切れないけど・・・)

なんとなく、透けて見えるのは、男性側のコミュニケーション能力が成否を分ける、といったところか。

いくら株価が上がっても、景気が良くなっても、3Cをとれない男にこのモデルの幸せはない。

では、独身を貫いたまま生活の充実、幸福の実感は可能か、という問いには、そういう人は結局、家庭をもつようになる、と答えるほかあるまい。

ただ、このモデルの他にも充実実感モデル、というか健康でいられるモデルはある。

次回以降、実例を挙げて検討してみたい。

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